[2009_03_18_02]志賀原発訴訟 住民側逆転敗訴 高裁金沢支部 1審の差し止め破棄(毎日新聞2009年3月18日)
 
 石川県志賀町の住民ら128人が北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めを求めた訴訟の控訴審判決が10日、名古屋高裁金沢支部であった。渡辺修明裁判長は「(国が1審判決後に作った)新しい原発耐震設計審査指針に基づき、地震への安全性は確保されている」として、商業原発で唯一差し止めを命じた金沢地裁判決(06年3月)を取り消し、住民側の迎転敗訴となった。住民側は上告する方針。

 判決は、未知の断層が原発直下で起こす恐れのある地震の規模について、新指針に基づき北陸電が最大でマグ・ニチュード(M)6・8と見積もったことを妥当と評価した。更に既知の断層が起こす揺れの強さを算出した方法やその評価にも最新の知見が反映されて過小評価にはならないとし、指針の信頼性を認めた。
 原発周辺を走る「邑知潟断層帯」については、34キロと10キロの二つの断層に分かれるとする北陸電側の主張を認め、全44キロが同時に動いて地震を起こす可能性があるという住民側主張は退けた。
 1審判決は当時の耐震指針(旧指針)の信頼性を否定し▽原発直下地震の想定規模(M6・5)が小さい▽邑知潟断層帯による地震を考えていない▽揺れの強さの算出法に妥当性がないーと指摘し運転差し止めを命じた。
 国は06年9月に新指針を策定。直下地震の想定規模をM6・8程度に引き上げた。北陸電も新指針に基づいて耐震評価をやり直し、揺れの強さ(加速度)の想定を以前の最大490ガルから600ガルに修正した。
 控訴審では、新指針と、やり直した耐震評価の妥当性が争点となった。北陸電は「最新の知見を反映した」と主張。住民側は「新指針も旧指針も基本構造は同じ。信頼に値しない」と主張し、直下地震の想定規模は鳥取県西部地震(00年10月)などで観測されたM7.3にすべきだなどと批判していた。
【野上哲、澤本麻里子】

 原発耐震指針

 国が安全審査で原発の耐震性を判断する際の指針。原子力安全委員会が作成し、正式名称は「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」。原発が見舞われ得る最大の地震を断層調査などから想定し、それでも放射能漏れ事故が起きない設計を求める。旧指針は78年にできたが、阪神大震災(95年)や鳥取県西部地震(00年)など想定を超える地震が続き、06年9月に改定された。新指針は想定する原発直下(震源を特定しない)地震の規模を、従来のマグニチュード(M)6.5から6.8程度に引き上げた。
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