[2008_07_24_06]「岩手・宮城」関連せず 正断層型 プレート内部で発生 7〜8秒に3回連続 専門家分析 破壊の発生状況(毎日新聞2008年7月24日)
 
 マグニチュード(M)6.8を記録した岩手北部地震は、陸側のプレート(岩板)の下に沈み込む太平洋プレートの内部で発生したとみられる。海野徳仁・東北大地震・噴火予知研究観測センター長は「太平洋プレート内の深いところで起きる典型的な地震」と語る。先月起きた岩手・宮城内陸地震(M7.2)は、深さ8キロと震源が浅い内陸型地震で、専門家は「場所は近いが、地震の仕組みが異なるため両者に関係はない」とみる。
 気象庁の分析によると、今回の地震は、地震を起こした断層面が東西から引っ張られてずれた「正断層型」だ。海野センター長によると、太平洋プレートの上部と下部では、起きる地震の仕組みが異なる二重構造で、正断層型は下部でよく見られる地震の特徴だ。
 年間約10センチの割合で沈み込む太平洋プレートは、軟弱な構造のマントルにぶつかる。その際、プレートの上部は元に戻ろうと押し戻され、押し合う力によって起きる逆断層型地震を起こす。しかし、下部はそのまま沈み続ける方向に引っ張られ、正断層型の地震になるという。
 沈み込む太平洋プレート内の地震には、死者約3000人を出した1933年の三陸沖地震(M8.1)や93年の釧路沖地震(M7.5)などがある。 また、最近は東日本で、岩手・宮城内陸地震以外にも、04年10月の新潟県中越地震(M6.8)や昨年7月の新潟県中越沖地震(M6.8)など大きな地震が相次いでいる。
 大竹政和・地震予知連絡会長は「78年の宮城県沖地震の半年前、太平洋プレート内部で規模の大きな地震が発生した。現在、東北地方では地震が活発化しており、今後の地震の推移を注視する必要がある」と話す。
   【永山悦子】

 7〜8秒に3回連続 専門家分析 破壊の発生状況

 岩手北部地震を起こした破壊が、わずか7〜8秒に3回連続で発生していた可能性のあることが24日、東京大総合防災情報研究センターの古村孝志教授(地震学)の分析で分かった。同様の現象は、昨年7月に起きた新潟県中越沖地震などでも観測されている。しかし、単発の地震が多いと考えられていた地下の深いプレート(岩板)内部で起きた地震では珍しい。
 複数の破壊が、短時間で発生する現象は「マルチプルショックと呼ばれる。
 地震波には、最初に到達するP波と大きな揺れのS波がある。
 古村教授は防災科学技術研究所(茨城県つくば市)のデータを解析した。その結果、最初に小さなP波が観測され、この約5秒後に最初のP波の6〜7倍の大きさのP波、さらにその2秒後に同程度のP波が観測されていたことが分かった。
 また、S波もP波に対応する形で7〜8秒間に3回発生した。この結果から、プレート内部で破壊が3回続けて起きたことが判明した。古村教授は「プレート内部での地震発生メカニズムの解明に役立つのではないか」と話す。
  .【斎藤広子】
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