[2008_04_01_01]活断層、原発は安全? 「追認」に転換 耐震性評価 過去に不備認めず 評価の継続が必要(朝日新聞2008年4月1日)
 
 原発の直下や間近を活断層が通っている実態が31日、事業者による耐震再評価で明らかになった。いずれも従来、研究者らから指摘されながら否定してきた活断層を追認したものだ。「安全上の問題はない」というが、再評価をどう見ればいいのだろうか。(佐々木英輔、坪谷英紀)

 原発や高速増殖原型炉「もんじゅ」が集中する福井県では、事業者が従来否定してきた活断層を大幅に認めた。その結果、関西電力美浜原発やもんじゅの直下、日本原子力発電敦賀原発の原子炉からわずか200メートルを活断層が通っているなど、従来より厳しい前提で耐震性が評価された。
 いずれも、これまで活断層ではないかと指摘されていた断層だ。しかも、旧指針でも対象になる5万年前以降の活動が確認され、事業者の従来の想定が甘かったことが裏付けられた。
 専門家はかねて事業者の評価は不合理と指摘していた。2月の原子力安全委員会の検討委員会では、敦賀原発横の断層の評価について「地質学の基本をねじ曲げた解釈」(中田高・広島工大教授)、「専門家がやったとすれば犯罪」(杉山雄一・産業技術総合研究所活断層研究センター長)と厳しい言葉が飛んだ。
 これに対し31日、経済産業省で記者会見した電力会社の担当者は「当時の知見では分からなかった」「新たに調査した結果」と口をそろえた。

 過去の不備 認めず

 活断層の長さは地震の規模と直結する。活断層の認定をめぐっては、たびたび過小評価が問題になってきた。国の地震調査委員会との手法の違いも批判されてきた。
 原子力安全委員会の鈴木篤之委員長は「今から考えると多様な専門家の意見を聞く配慮に欠けていた。進歩に追いつかず、時代遅れになっていた面もあった」という。
 新指針では扱う活断層の活動時期を拡大。谷の屈曲や地表の傾きなどから断層を推定する調査を明記し、不確かさも考慮するよう求めた。
 再評価の作業を進めているさなかに、新潟県中越沖地震(マグニチュード(M)6・8)が起きた。想定を大幅に超える揺れで旧指針の信頼性は損なわれ、断層の見落としが論議になった。地震後、従来調査で十分としていた一部の電力会社も断層の追加調査を決定。原子力安全・保安院は、短い活断層しか見えなくてもM6・8以上を想定して再評価するよう求めた。
 今回の再評価で各事業者は過去の調査の不備を認めてはいない。保安院の森山善範原子力発電安全審査課長も「現時点からみると十分でないかも知れないが、その時々の知見に基づき審査してきた」と説明する。「最新の知見」をいかに迅速に反映させるかが問われている。

 評価の継続が必要

 今回、想定の揺れは最大で1・6倍になった。だが、原子炉など重要機器の補強を迫られた原発はなかった。各事業者とも「元々余裕をみて設計しているので、耐震性は確保されている」と説明する。
 原発を構成する機器の強さは地震に加え、温度や圧力などほかの要素の影響も含めて決められている。中越沖地震では柏崎刈羽原発の重要機器に目立った損傷は見つかっておらず、これも設計の余裕の結果と言われている。
 ただ中越沖地震の影響の詳細は調査中で、反映はこれからだ。再評価が妥当かの判断は今後保安院と原子力安全委員会がダブルチェックする。保安院は自らの活断層調査や計算結果もふまえた検証作業を同時並行で進め、半年をめどに判断をまとめる方針だ。
 指針改定に携わった大竹政和・東北大名誉教授(地震学)は「今後、報告された中身をきちんと検討する必要がある。再評価しておしまいではなく、必要に応じて補修したり、新知見を反映させたりするなどの対応が必要だ」と指摘する。

 新耐震指針に基づく再評価

 06年の指針改定を受け、国が既存原発の安全催確認を求め、事業者が進めている。昨年、新潟県中越沖地震が東京電力柏崎刈羽原発を直撃したため、地震の想定や各原発1基ずつで重要機器への影響を調べた結果を今年3月までに中間報告することになった。中部電力浜岡原発(3、4号機)、日本原燃再処理工場は昨年に最終報告を提出済み。
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