[2006_07_25_01]500人超犠牲のジャワ島沖地震 高さ予測難しい津波地震? 揺れに比べ大きな津波(朝日新聞2006年7月25日)
 500人を超す犠牲者を出した5日のインドネシア・ジャワ島沖の地震ば、地下の破壊がゆっくり進み、地震規模の割に大きな津波を起こす「津波地震」だったという見方が広がってきた。津波地震は、通常の地震を前提とする津波警報システムでは津波の高さを予測できない特殊な地震で、日本も過去に襲われている。        (瀬川茂子)
 典型的な津波地震は、1896年の明治三陸地震だ。震度3程度だったが、30分後に大津波が襲い2万人以上が犠牲になった。金森博雄・米カリフォルニア工科大学名誉教授はこの地震を解析、長い周期の地震波工ネルギーがたくさん放出された特殊な地震であることを見つけ、72年に「津波地震」と名付けた。
 「今回のジャワ島沖地震は規模のわりに破壊の継続時問が長く、典型的とはいえないが、津波地震といえそうだ」と金森さん。産業技術総合研究所括断層研究センターの佐竹健治副センター長も同じ見方をしている。
 普通の地震は、地下の破壊が毎秒3キロ程度と速く進み、人が揺れとして感じやすい短い周期の地震波エネルギーをたくさん出す。地下の破壊がゆっくり進むと、主に長周期の地震波エネルギーを出し、小刻みな括れは感じにくくなる。だが、ゆっくりでも、海底の地殻変動が大きければ、海水がもちあげられて、大きな津波が起こる。これが津波地震だ。
 津波地震の特徴が地震計ではっきりとらえられたのは、1992年のニカラグア地震。普通の半分以下の速度で、なめらかに滑るように破壊が進んだことがわかった。
 今回の地震は、米地質調査所(USGS)の解析では、マグニチュード(M)7.7。正確な津波の高さは不明だが、3メートルという報告があった。同じ規模の94年の三陸沖地震では、津波の高さは50センチだった。
 筑波大の八木勇治助教授の解析によると、地下の破壊は145秒続き、破壊速度は毎秒1.5キロとゆっくりだった。
 だが、山中佳子・東京大学地震研究所助手の現段階の解析では、津波地震の特徴は見られないとしており、議論は決着していない。
 津波地震は、プレート境界に軟らかい堆積物がのっている場所で起こるという見方があるが、まだよくわかっていない。普通の地震が頻発する場所で起きたものでも、慶長東海・東南海地震は、揺れの被害が少なく津波被害が目立ったことから、津波地震だった可能性が指摘されている。
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