[2004_12_28_01]震源域 日本の太平洋側なら 津波到達 10分以内 迅速な避難態勢 課題(朝日新聞2004年12月28日)
 今回の地震は、日本の東海沖から四国沖にかけての太平洋側で近い将来起きるとされる東海、東南海、南海地震と同じプレート境界型の地震だ。日本の場合は震源域がより陸に近く、早いところでは地震から10分以内に津波が押し寄せると想定されている。警報システムはあるものの、避難態勢には課題が残る。

 インドネシアも日本も、列島が乗る陸のプレート(岩板)に海のプレートが沈み込む場所に位置する。沈み込みで蓄積されたエネルギーが解放されることで、巨大地震が繰り返されてきた。
 今回の地震はマグニチュード(M)9・0。一方、中央防災会議の被害想定では、いつ起きても不思議でないとされる東海地震はM8・0、今世紀前半にも発生の恐れがある東南海、南海が同時に起きるとM8・6。三つ同時なら、震源域は東西約500キロ、地震規模はM8・7になる。
 高知県土佐清水市や安芸市には最大で高さ10メートルもの津波が押し寄せる。紀伊半島南岸や室戸岬周辺は、高さ1メートルの津波が来るまで10分もかからない。三つの地震が同時発生すると犠牲者は最悪で新約2万8千人、うち約1万2700人は津波によるとの予想だ。
 名古屋大地震火山・防災研究センターの安藤雅孝教授は「海水浴シーズンだったり、複雑な海岸地形で津波が増幅されたりすると、被害はさらに大きくなりうる。インドやスリランカの津波は地震から約2時間後。到達時間がもっと短い日本では、警報システムが一層重要だ」と指摘する。
 24時間態勢で地質を監視する気象庁は、津波の恐れがあると、地震発生から約3分を目標に警報や注意報を出す。
 ただ、津波の到達が早すぎて警報が出てからでは避難が間に合わない事態や、近くに高台がない場合もある。地震で水門が壊れ、津波を防けない恐れもある。これまでの地震で、自治体の避難勧告が遅れた例や、警報が出ても住民が避難しない例もあった。
 国や自治体は、避難勧告を出す基準作りや、津波に耐える避難ビルなどの整備を進めている。首藤伸夫・岩手県立大教授(津波工学)は「気象庁の警報が届かなくても、地震の揺れは『自然の津波警報』。津波が予想される低地では、万が一の際にどう行動すべきか、知識と心構えを持つ必要がある」と訴える。
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