[2003_04_05_01]地質帯の名前を覚えましょう(イヤだろうけど)_地震と活断層(3):沈み込みサイエンス(坂口有人氏2003年4月5日)
 
参照元
地質帯の名前を覚えましょう(イヤだろうけど)_地震と活断層(3):沈み込みサイエンス

(前略)
 さて、そんな話がどーして「地震と活断層」に関係するかというとさっき話した、破壊に重要な要素の全てに深く関与するからです。つまり、材料の構造(地質構造)、歪ませる外力(海洋プレートからの応力)、破壊機構(、これらのいずれにも決定的に関与します。

 では、まずこの四国の地質構造から見てみましょう。これが地質図です。色とりどりに塗られてますね。これはそれぞれそこに分布する岩石の種類を表しています。別に紫で塗られているからと言って紫の石があるわけではありません。こうして眺めてみると、四国の地質図は縞模様になってますね。このヨコシマは、四国が生まれる前から、ずううっっっとプレートが沈み込み続けていて、そんで海洋プレートの上に溜まった堆積物が大陸側にどんどん押しつけられ続けて、どんどん付加してできたんですね。少しずつ堆積物が岩となって陸地が増えてきたからシマシマなんですね。まさに年輪です。ですからこの辺には2億年前の沈み込み帯の様子が、この辺には1億3000万年前の様子が、この辺には6500万年前の様子が。そして南海トラフでは今現在フィリピン海プレートが沈み込んでいます。こうしてどんどん押しつけられてできた地質体を付加体と呼びます。

 次に四国の地帯構造区分を覚えましょう。四国は大きく分けて4つの地帯からなります。北から領家帯、三波川帯、秩父帯、四万十帯です。あ、そんなローカルな地名は覚えたくないって顔してるな。地質ではこういった地名やら岩石名が頻繁に出てくるけど、基本的な奴は暗記しなきゃだめです。それは植物の研究をするのに花A,B,Cですみますか? 化学実験するのに薬品A,B,C。もしくはタンパク質イ、ロ、ハでは? そうはいかないでしょ。 同じです。しかも地名はイメージが結びつくので結構簡単です。例えばこの四万十帯は、うちの県の四万十川から取られた名前です。ここに典型的に分布する付加体です。これは四国のみならず沖縄から関東まで1000km以上も細長く続く、日本の重要な地質帯の一つです。そして沖縄だろうが、九州だろうが和歌山だろうが南アルプスだろうが、どこまでも四万十帯なのです。他の地名になったりしません。同様にこの秩父帯は関東の秩父山地を模式地とします。これも四国でも沖縄でも秩父帯です。ちなみにこの秩父帯と四万十帯の境界である仏像構造線の仏像というのも変な名前ですが、地名です。ここから1時間くらいの須崎市の山の中に仏像という集落があります。私も行ったことはありませんが、、、 
 で、この四万十帯と秩父帯。何が違うかというと、どっちも付加体なんですね。ただし付加した年代が、秩父帯がジュラ紀で、四万十帯が白亜紀から第三紀にかけての時代という年代の違いしかありません。つまりこの辺が2億年前で、高知大があるあたりからババタコ、そして荒倉トンネルまでが1億3000年万年前くらいです。トンネルを抜けると白亜紀に付加した四万十帯になって、そのまま国道を走って中村市まで行って四万十川を渡るちょっと前あたりからは第三紀に付加した地質帯です。もう恐竜も絶滅しました。そんで足摺岬までいくと2000万年前くらいになって、そこからはるか沖を眺めると、南海トラフでは現在の付加体ができているってわけです。
 では、秩父帯に戻って、その北の三波川帯と領家帯は何が違うのかというと、この2つは変成帯です。変成岩からできています。ちょっと話は脱線しますが、岩石の種類を話します。岩石というのは大きく分けて3種類あります。火成岩と堆積岩と変成岩です。火成岩はマグマが冷え固まった岩石です。堆積岩というのは砂や泥や生物の死骸が海や湖や陸上にたまって、粒子がくっついて岩石となったものです。そして変成岩は堆積岩や火成岩が高い温度や圧力によって化学反応して新しい変成鉱物ができることで変成岩となるのです。例えばこの三波川帯は比較的低温で高い圧力を受けてできたものですし、それに対して領家帯は比較的低圧で高い温度を受けてできた物です。これで一応登場人物が全員登場したわけですが、この三波川帯と領家帯の境界にある中央構造線は、世界でも第1級の大断層です。ぜひ覚えておきましょう。
(後略)


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