【記事77110】火山前線(「大噴火が少なすぎる近年の日本」講演資料#07)(島村英紀2018年11月24日)
 
【島村】日本列島の真下で、火山帯を作ります。火山前線の東側では温度が低いのでマグマは生まれません。マグマが生まれるところが火山となります。火山分布の東側の端がわりとはっきりしているので、火山フロントあるいは火山前線といいます。マグマというのは、大変な温度で、液体として存在する。マグマがどうしてできるかというと、浅いと温度が足りない、もっと深いとどうなるか、実は海溝から海の水をもちこみます。そのことによって岩が非常に溶けやすくなる。これは実験室でやってみればわかることです。水といっても、火山フロントの下あたりの深さになると、温度は1000℃、圧力は数百気圧あるいはもうちょっと高い気圧になります。実験室で、この条件により、岩が溶けることが確かめられています。日本列島の真下で、深さ100km前後のところで岩が溶けて、そこでマグマが生まれます。
 日本列島のちょうど真下の所からマグマが生まれるので、そういった意味では日本列島をちょうど串刺しにするように、火山帯というのがあるということになります。そこで具体的には、東日本火山帯があって、北海道の南側から東北地方を縦断して、ここに富士山があって、八丈島、大島がここにある。よって、東日本火山帯は日本列島に太平洋プレートがもぐりこむことによって、太平洋プレートの下90〜130キロの深さでマグマが生まれて、最終的に上がってところが火山となる。一方、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込み、こんどは九州を縦断する形で、西日本火山帯があります。点線のところは、昔は活発だったが、今はやや落ち着いている。
【補足】
・当講演レジュメの相当ヶ所を以下に抜粋する。
「海洋プレートが日本列島の地下に潜っていったときに、上の図のように、深さ90〜130kmのところでプレートの上面が溶けてマグマが生まれる。
 生まれたマグマはまわりの岩よりも軽いから、上に上がってくる。途中にいくつかの「マグマ溜まり」を作り、最終的に火山の噴火を起こす。
 第一回の講演のときにお話ししたように、日本には4つのプレートがある。これらのプレートはおたがいに衝突している。太平洋プレートが北米プレートやフィリピン海プレートと衝突してそれらの下に潜り込む事件は千島列島から東日本、そして西之島新島の先まで続いている。
 それゆえマグマが作られている場所は帯状になり、海溝に並行になる。その結果、火山は日本列島を串刺しにした線上に並ぶ。東日本火山帯である(右の図)。海溝からは西に離れているが、これは衝突した海洋プレートが斜めに潜り込んでいるからである。
 同じように西日本ではフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込むことによって西日本火山帯が作られている。日本にある活火山はすべてこの二つの火山帯のどちらかにある。
 日本には活火山と認定されている活火山だけでも110もある。
 活火山とは過去1万年以内に噴火したことが分かっている火山で、研究が進むにつれて増えてきている。
 なお、昔、学校でも教えていた「活火山・休火山・死火山」という分類は、とても分かりやすい分類だったが、いまはない。それは、死火山だと考えられていた御嶽山が1979年にいきなり噴火して以来、分類そのものがなくなったからだ。学問的には「死火山」が今後噴火しないかどうか、分からなくなってしまったのである。」
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