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揺れる司法判断「何を信じれば」 住民驚き落胆、高浜運転差し止め

 「司法判断に翻弄(ほんろう)されている」「一体何を信じればいいのか」―。関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働差し止め仮処分を取り消した昨年12月の福井地裁判断からわずか2カ月。大津地裁は9日、再び運転差し止めを命じる仮処分の決定を出した。揺れ続ける司法の判断に、福井県民や立地首長から不信の声が噴出した。

 「えっ、ほんまですか」「残念だ」―。大津地裁の仮処分決定を受け、地元高浜町民からは驚きと落胆の声が上がった。長期間、停止していた原発は、ようやく再稼働までこぎ着けられたところ。経済活性化に期待が高まっていた矢先の決定に、地元は大きなショックに包まれた

 高浜町商工会の田中康隆会長(59)は「大津地裁は以前、仮処分の申し立てを却下していた。(新規制基準の審査に合格し)安全対策が取られた上での再稼働だったはず。やっと経済的に先が見通せると胸をなで下ろしていたのに…」と肩を落とした。

 無職余米(よごめ)敏子さん(72)は「電気を使う便利な生活をしているのに、運転の差し止めを求めることは矛盾している。原発が止まって活気のなくなった町は面白くない」と将来を憂えた。

 原発で働く作業員が多く宿泊するという旅館の支配人時岡明秀さん(58)は「事業者や協力企業の人たちの努力で再稼働までこぎ着けたのに、水の泡になった。(今後の経営が)またどうなるか分からなくなった」と困惑しきりだった。

 一方、原発反対を訴えてきた町内外の住民は、今回の決定をきっかけに、原発のない社会への転換を望んだ。

 「ふるさとを守る高浜・おおいの会」の東山幸弘代表(69)=高浜町=は「動いている原発を止めるのは画期的なこと。裁判所は、福島第1原発事故の教訓を風化させてはいけないとの思いがあったのでは」と推測。「判決をきっかけに、原発のない社会に変われば」と期待を寄せた。

 「再稼働後もトラブルがあり、運転差し止めは当然の結果」と話すのは「若狭の原発を考える会」の木原壯林(そうりん)代表(72)=京都府。「人間が制御しきれない原発は、これをきっかけに止めるべきだ」と訴えた。

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