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高浜原発運転差し止め 大津地裁「安全性立証せず」

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)について、滋賀県内の住民29人が再稼働の差し止めを求めた仮処分で、大津地裁は9日、住民側の申し立てを認め、運転を差し止める決定を出した。山本善彦裁判長は「関電は原発の安全性を立証していない」と断じた。稼働中の原発の差し止めを命じる仮処分決定は初めて。決定はただちに法的効力を持ち、関電は10日午前、営業運転中の3号機の停止作業に入る。

 関電は決定を不服として大津地裁に異議と執行停止を申し立てる方針だが、認められない限りは運転できない。

 山本裁判長は、福島第1原発事故を踏まえ、「(関電は)原発の設計や運転のための規制がどのように強化され、どう応えたかなどを説明する責任がある」とし、説明が尽くされなければ安全性に疑いがないとはいえないとの考えを示した。

 その上で、原子力規制委員会の新規制基準に含まれ、耐震設計の目安となる基準地震動(想定される最大の揺れ)について検討。地盤特性などを詳細に調べたとする関電の主張に対し「調査は徹底的ではなく想定に余裕がない」と退けた。算出方法も過去のわずかな地震データしかもとにしておらず「危ぐすべき点がある」と判断した。

 避難計画に関しては自治体に任すのではなく「国主導で具体的な計画を作ることが必要」と指摘し、使用済み核燃料プールの防護態勢や津波対策などにも疑問が残るとした。

 山本裁判長は「住民の人格権が侵害されるおそれが高いにもかかわらず、関電は安全性を確保していることの説明を尽くせていない」と結論付けた。

 大津地裁では、2011年にも住民らが「過酷事故があれば琵琶湖が汚染される」として高浜原発などの差し止めを求め仮処分申請をしたが14年に却下された。その後、高浜3、4号機が規制委の新基準に事実上合格したことを受け昨年1月、住民らが2回目の仮処分を申し立てていた。

 高浜3、4号機は、福井地裁が昨年4月に再稼働を認めない仮処分決定をしたが、12月の異議審で覆り、それぞれ今年1月29日、2月26日に再稼働した。4号機は冷却水漏れや原子炉の緊急停止などのトラブルが続き、現在は停止している。

■大津地裁仮処分決定の骨子

◇関電は高浜3、4号機を運転してはならない

◇住民の人格権が侵害されるおそれが高いが、関電は安全性の説明を尽くしていない

◇福島の原発事故後を踏まえた地震や津波対策、避難計画に疑問が残る

◇避難計画は個々の自治体に任せるのではなく国主導で作るすべきだ

◇甚大な災禍と発電の効率性は引き換えにできない

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