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※当学習会のまとめは地震がよくわかる会で行いました。とりまとめに際して、分量的な観点から、かなりな部分を省略しましたのでご容赦ください。島村さんの後チェックは受けていませんので、意訳が過ぎたところ、誤字・脱字等の責めは当会にあります。
※補足部分は当会が当学習会の参考になりそうな記事等を追加したものです。講演本文より小さなフォントで示してあります。補足部分の記事の見出しをクリックすると、補足記事を見ることができます。
※文中の小見出し部分( [ ○○ ]××× )は当会でつけたものです。
 


地震列島日本の今・

そしてこれからは?


たんぽぽ舎
2016年5月14日(土曜)


島村 英紀
しまむら ひでき
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[1]通常の本震・余震型ではなかった

 今回の熊本地震の話からします、14日に強い地震がおきまして、このときには、本震・余震型だと、思っていたわけです。地震の中では本震・余震型というのは、9割がたあります。残りの1割の中に、双子地震という兄弟みたいなものがありまして、さらに、群発地震というのがあります。群発になるか双子になるか通常の本震・余震型になるかは、最初の地震が起きた時には分かりません。

(補足1)気象庁HPに「余震の性質」という項目があった
【記事55660】 余震の性質 気象庁 2016年5月22日
(補足2)飯野能久・京都大防災研究所地震予知研究センター教授が14日のM6.5の地震と15日0時過ぎのM6.4の地震に関して、『「ダブレット」と呼ばれるいわば双子の地震だ。』と語る。
【記事51567】 双子地震後に本震ほぼ例なく 熊本地震メカニズム 京都新聞 2016年4月17日
(補足3)井村隆介・鹿児島大学准教授が『一般的な「本震余震型」ではなく群発地震のように大きな余震が続く恐れがある』と語る。
【記事51481】 大型識者談話 明治大大学院特任教授 中林一樹 古い住宅の耐震化急務 鹿児島大准教授 井村隆介 活断層調査を役立てよ 東奥日報 2016年4月16日

 


[2]東日本大震災の余震は100年以上の恐れ

 数からいえば本震・余震型が多くて、2〜3週間で余震がおさまるのが普通です。それが、本震の大きさによりますので、本震であると思っていた14日の地震はM6.5だったので、2〜3週間ぐらいでおさまる。一方、本震が大きいと長引くことがわかっていまして、例えば東日本大震災、5年経ちましたけれども、その場合はM9でしたから、ほぼ100年以上続くと思います。
 アメリカ東部で起きた地震(注)、M8を超える地震が起きた、その場所では、いまだに200年近くたっても余震が観測される。余震の数はだんだん減るんですが、減った後に、普段あるバックグランドといいますが、普段ある地震活動の中に隠れてしまいます。これくらいの地震(M6.5)で2〜3週間、、3.11ぐらい大きいと100年ぐらい、こういった地震だと思っていた。ところがそうじゃありませんでした。16日、ご存知のように、さらに大きい地震M7.3というのがありました。場所は非常に近いので、14日の地震が起きた時に、実はエネルギーがまだあったということです。残念ながら、今の地震学では、わかりませんでした。
(注)ニューマドリッド地震(1811)
 


[3]前震とは

 気象庁は前震、本震という言い方にかえましたけれども、実は前震というのは聞いたことが無い人はいっぱいいたと思います。前震というのは本震の前に起きて、本来、これから本震がこれからくるよというのが分かるというものなのですが、分かったためしがない。ほとんど、いや、全くありません。
 前震というものを前震として認識できるかどうかは、地震と予知の本流というか、一番大事なものとしてあったのですが、結局はわからない。3.11の場合も前震と呼ばれるものががありました。

(補足4)16日の気象庁の記者会見で、14日の最大震度7の地震を「前震」と捉えられなかったことについて、「ある地震が発生した時に、さらに大きな地震が発生するかどうかを予測するのは、一般的に困難だ」と述べた。
【記事51489】 熊本地震 気象庁課長 観測史上、例がない事象を示唆 毎日新聞 2016年4月16日
(補足5)『同庁が余震確率算出に使うマニュアルには「(最初の地震が)M6.4以上なら本震とみる」』と気象庁がM6.5を本震とした経緯が書かれている。
【記事55540】 気象庁の敗北宣言 震度7、連鎖の衝撃(1) ルポ迫真 日経新聞 2016年5月10日
(補足6)東日本大震災の「前震」の記事
【記事20040】 宮城県北 震度5弱 M7.3 養殖施設に被害 宮城沖「関係ない」気象庁 河北新報 2011年3月10日

 


[4]熊本地震の地震活動状況

 熊本地震の始まりは先ほど話したように、M6.5があってM7.3の本震があって、浅い地震が熊本だけではなくて、次に阿蘇山に、熊本県の東北にあります。阿蘇山の下にいき、その後、大分県に入ります。そしてここまで行きます。そういった意味では震源が伸びた、そして、その後二つの断層、日奈久断層と布田川断層と言われています。熊本県としては南西側にある、八代の近くまで行きました。かなり、東北南西側に延びた格好になる。


【図1】

(補足7)熊本地震の地震活動状況
【記事55620】 「平成28年(2016年)熊本地震」熊本県から大分県にかけての地震活動の状況(5月21日13時30分現在) 気象庁 2016年5月21日

 


[5]長く続く地震

 震度1が数百回、震度1とは人間が揺れを感じるぎりぎりの震度です。これは、今日までの地震の回数ですが、基本的には、14,15,16日が多かったのですが、かといって、それでおさまってしまうのではなくて、普通の本震ー余震ぐらいだったらこれぐらいでおさまった。またぶり返す。そういった意味では、非常に長い間続いている。これは本震ー余震型ではないことがほぼ明らかになっている。熊本市、益城町、いまだにずっと続いている。さっきお話しした八代市の方にも、熊本の南の方、水俣、それから、大分に入って、この辺にずっと続いている。
 最初の地震、最大の地震の30秒後に、次の地震が誘発された(注)のではないかと昨日気象庁が発表したようです。これは十分あり得ること、地震計の記録からいうと、30秒後に誘発されたということを、この地震の揺れが続いていますので、震源を正確に見れる。大分でおきたのは確か。

(補足8)気象庁は「大きな地震が2回おこり、震源が広域に広がる過去に例がない形で、今後の予測は難しい」と語る。
【記事51701】 気象庁「過去に例ない」 震源域内、広範囲で揺れ 東奥日報 2016年4月20日

 


[6]中央構造線

 実は熊本で地震が起きたということは、日本最大の活断層の上で起きた地震でした。日本最大の活断層は中央構造線といいます。約1000kmでして、ここから先(東端)は学説的に分かれていまして、あるかないかはっきりわかりません。この辺でボーリングの調査をしたところ、ありまして、ここで、中央構造線らしきものが見えた。という学説があります。関東地方に伸びた可能性がある。そうすると1000kmをこえ1200kmを超えるぐらいになる。

(補足10)埼玉県岩槻市のボーリング調査(地下3500m)で中央構造線が特定
【記事17700】 関東平野地下深部に特定された中央構造線_活断層の原因を地下深部に探る_高橋雅紀 産総研TODAY_VOL_6-5  2006年5月1日

 地質学的に調べますと、いままで、何百回と、この上で地震が起きていることがわかってきました。ただし、地質学的な調査というものは、昔、地震があったかどうかは分かりますけれども、これが、例えば、連鎖したものか、何十年とか、時間的にどれくらい接近したものであるとか、そういった子細な時間の分解能はありません。
 伏見の地震とか、そういったものは、中央構造線でおきたという説がありますが、そういったものは、あくまでも学説でありまして、昔の古文書に書いてあるものは被害を書いてある。特定の場所で被害があってとか、大変な揺れがあったとか、ということは分かっていますが、もちろん地震計がないし、震源はわかりません。そういった意味ではどこで起きた地震かどうかははっきりわかりません。

(補足11)
【記事51645】 震源拡大 16世紀にも 「豊後」と類似、警戒必要 東奥日報 2016年4月18日

 そういった意味では、今回熊本で起きた地震は、この中央構造線が起こした日本人がちゃんと見た最初の被害地震、いつ地震が起きても不思議ではない状態がずっと続いていたのだけれども、それは、地質学的な的スケールの話で、人間のスケールからいうと、はじめてみたのがこの地震となる。

(補足12)中央構造線の成り立ちについては以下のHPが分かりやすい。
【記事55700】 中央構造線ってなに? 大鹿村中央構造線博物館 2016年5月22日
 


[7]2014年に糸魚川ー静岡構造線上でも地震があった

 2014年11月、長野県・白馬村で、マグニチュード6.7、最大震度6弱の地震がありまして、これもかなりな被害を出しました。日本第2の活断層、糸魚川ー静岡構造線上にある神城(かみしろ)断層、この上で起こした最初の地震、いままでも起きたことは推定はされていたのですが、ほんとに、地震計で観測されたのは初めてです。これは松本を通り、諏訪湖をとおり、静岡に行く。

(補足13)「震源地付近は、強い圧力により地震が起きやすい『ひずみ集中帯』と呼ばれる」
【記事42920】 神城断層の活動原因か 政府地震調査委 分析結果を発表 東奥日報 2014年11月24日
 


[8]中央構造線上にある伊方原発・川内原発

 中央構造線が断層帯だとすると、伊方原発と目と鼻の先にある。九州で二通りにわかれますが、島原の雲仙岳にいくやつと、南西にいっている二つの断層帯に分かれることがある程度わかっています。こちらは川内原発のすぐそばを通っています。日奈久断層と布田川断層、ちゃんと見えているの活断層は、こういうローカルな名前がついている。これは火山灰がかぶっていたり、さきほどの東京の地下みたいに川がはこんできた堆積物が厚いところでは見えません。従って、そういったローカルな名前はついていません。けれども、中央構造線がずっと続いているのがわかっていまして、ここで大きな地震が二つ起きた。


 


[9]隣接地震との留め金が外れた状態

 地震というものは、中央構造線上にいっぱい候補者が並んでいる。今まで何百回も地震を起こした。その中である地震がおきたということは、ここで地震のエネルギーが解放されたということ、解放されると、どういったことが起きるかというと、隣の地震の候補者との間の境を取っ払ってしまう。つまり留め金がとれた状態になる。そういったことが起きたのではないかと思います。ただそれは、どれくらい地震が近いのか、さっき言ったみたいに、残念ながらわかりません。そういった意味では、隣が留め金とれたからといって、すぐに地震がおきるわけでは無いかもしれません。起きないかもしれません。
 昔々をいうと、中央構造線の上で、なんらかの地震が起きたことは確かです。ここは地震の候補地ではあるのですが、今、この候補地にどれだけ地震のエネルギーがたまっているか、分かりません。で、南西側もそうでして、さっきの地震、4月14日と16日の地震の後、八代市で、比較的大きな地震がありました(注)。鹿児島県に入ったところは、地震がおきやすくなった、か、わからないのですが、そういった意味では、ここまで地震の留め金が外れたのは確かです。

(注)【図1】の4月19日17時52分の地震
 


[10]NHKが鹿児島県の震度情報を放送しなかった

 NHKの画面、鹿児島の震度が入っていないのが随分不思議だという話がありました。僕も不思議だと思っていました。どうみてもこれは、震度4とかですね。川内原発はここにある。そういった意味では不思議で、NHKはいまだに中央構造線という名前を決してださない。使わないようしているように見える。


(補足14)「14日の地震発生直後、NHKの地震速報は、なんと川内原発のある鹿児島県を、九州一帯の震度を伝える地図から不自然にカットしたのだ。IWJがNHKにこの件について問い合わせると、広報担当者は『特に意味はありません』と回答した。しかし、この地図はあまりにおかしい。熊本県から離れた四国の愛媛県や本州の山口県の震度は表示して、隣県である鹿児島県の震度を伝えない、などということがあり得るだろうか。震度が観測されなかったということならまだ分かるが、この時、鹿児島県でも震度3から4を記録している。」
【記事53581】 熊本・大分大地震の報道から消された中央構造線と原発の危険性!安倍政権の「虎の威を借る独裁」を敷くNHK籾井会長 2016.4.30 IWJ Independent Web Journal 2016年5月1日
(補足15)実際の震度分布図を示す
【記事51042】 平成28年4月14日21時26分頃の熊本県熊本地方の地震について 気象庁 2016年4月14日
(補足16)鹿児島県での震度、震度5はないが、川内原発のある薩摩川内市で震度4が計測されている。
【記事51043】 地震情報(各地の震度に関する情報)_鹿児島県 気象庁 2016年4月14日
(補足17)中央構造線に触れないNHK
【記事53565】 震災報道で原発をタブーにするテレビ局の実態! 学者の警告を遮るフジと日テレ、中央構造線に触れないNHK リテラ 2016年4月28日

(補足18)「NHKの籾井勝人(もみいかつと)会長が、熊本地震発生後に開いた局内の会議で、原発については住民の不安をいたずらにかき立てないために公式発表をベースに伝えるよう指示していた」
【記事53520】 熊本地震 原発報道は公式発表で NHK会長が指示 東京新聞 2016年4月27日
 


[11]熊本県の企業立地ガイド

 現在は見られなくなっている、熊本県の企業立地ガイドのHPの画面がこれ、これによると、日本の北側はあぶないよ、熊本は大丈夫だよ、かわいそうなことにこれを謳えなくなった。これは熊本県のせいではなく、地震地域係数のせいともいえる。

 


[12]地震地域係数

 地震地域係数とは、国土交通省、昔の運輸省、が決めたものです。東京は1.0、ここ(熊本)は0.9、福岡は0.8ですね、こういったものが独り歩きしている。逆に言うと、東京、静岡の人は、地震保険料を払いすぎているともいえる。基本的に40年間使われている。沖縄県だけが、0.7、これも意味がわかりません。こんどのように、まさか地震が起きないといわれているところで、地震が起きてしまった。地震地域係数というのはあまりあてにならない。


(補足19)野家牧雄(構造力学関連の著書がある)氏は『実に「厄介」かつ「人騒がせ」な値』と評している。そして、記事の最後の部分に沖縄だけがなぜ0.7なのかの経緯が書かれている。
【記事53576】 地域係数の謎(再掲)_野家牧雄 株式会社ストラクチャー_コラム 2016年4月30日
 


[13]政府の地震調査委員会が地震の危険度が低いとしたところに被害地震が起きる

 毎年、政府の地震調査委員会(注)というものが、確率論的地震動予測地図という日本地図を出します、これをみますと、地震が来そうもない所を黄色、危ない所は赤い色、中間は朱色になっています。これをみますと、ほとんど毎年同じなんですが、熊本は黄色で、危険度が低いことになる。ロバート・ゲラーさんという地震学者がいまして、この方が、いままで、起きた大きな地震(注2)をプロットしてみたところ、みんな危険度の低い黄色の所で起きている。これは国費をかなり使っている。


(補足20)東京大学のロバート・ゲラー教授は「日本政府は、欠陥手法を用いた確率論的地震動予測も、仮想にすぎない東海地震に基づく不毛な短期的地震予知も、即刻やめるべきだ」と主張する。
【記事20621】 日本の地震学、改革の時_ロバート・ゲラー NATURE 2011年4月28日

 これらの地震はいずれおきるかもしれません。次に起きる地震というのはないわけです。阪神淡路大震災が起きた時もそうです。1976年、東海地震さわぎが始まって、78年に大震法、大規模地震災害特別措置法ができて、地震予知体制ができたことになっています。気象庁に判定会というのができて、日本中の人は1978年以降、次におきる地震は東海地震に違いない、そこからは誤解なのですが、日本中で、どこかに地震がおきるとすれば、政府がなんかの警告を出してくれるに違いないと思ってしまったのですね。それはまったくの誤解です。

 

[14]御嶽山噴火は噴火規模としては小さなものだった

 火山でちょっと怖い話をしないといけないのですが。実はこのところ静かすぎたという話をします。御嶽噴火(注)というのは、死者・行方不明者が60人以上となって、戦後最大の火山災害となってしまった。噴火としては決して大きなものではありません。もっと大きな噴火が今までいっぱいありました。火山の噴火の大きさを調べる方法としては、火山の噴出物を全体としてどれだけの量があったかどうかで例えるのが普通です。東京ドームの何杯分で例えるのが普通です。御嶽噴火は東京ドームの1/5〜1/3にしかすぎませんでした。東京ドームは随分大きなもので、124万立法メートルあります。


(注)2014年9月27日の御嶽山噴火
(補足21)御嶽噴火と川内原発を関連づけた記事
【記事41500】 周辺に火山抱える川内原発 対応問われる可能性 東奥日報 2014年9月28日

 


[15]「大規模噴火」が異常に少ない

 火山学でいう「大噴火」は東京ドーム250杯以上というものです、それが百年間に4回も6回もあった。それが今のところない。これは非常に心配になります。「カルデラ噴火」という、また桁の違う噴火がありまして、東京ドームに例えると10万杯以上というのがあります。日本は火山国。カルデラ噴火は10万年間に20回あります。
 これは過去における大噴火。東京ドームでいうと250杯以上。17世紀に4回。18世紀で6回、19世紀で4回、ところが、20世紀になって、桜島の大噴火と、北海道駒ヶ岳、大沼公園の隣ですが、この2回を最後にぱったりなくなってしまいました。実はぱったりなくなった間に、地震災害が少なかったので、地震も火山噴火も少なかった時に、日本はこれだけの経済成長したのだと思います。

(補足22)上記の図の引用元
【記事43255】 大規模火山災害について_藤井敏嗣 内閣官房_政策課題_ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会_資料 2015年2月3日
 


[16]東日本大震災が火山噴火を起きやすくした可能性あり

 久しぶりの大震災、3.11がマグニチュード9でしたから、日本列島の地下にある基盤岩、基盤の岩と書きますが、それを全部こちら側(東側)に動かしてしまった(注)。そういった意味では地震も火山も今までよりもずっと起きやすくなる。通常の状態にもどりつつあるというのが、もっぱら地球物理学者の印象です。ですから、さっき言ったように火山の影響というのは、すぐ5年前におきた(東日本大震災)から、おきるというわけではなくて、じわじわとくる。21世紀、あと83年しかありませんけど、いわゆる大噴火というものが、例えば4回ぐらいあったとしても、ちっとも驚かないという学者は多いです。


(補足23)上記の図の引用元。
【記事21181】 -東北地方太平洋沖地震-地震による地殻変動 国土地理院 2011年6月23日

 


[17]最近12万年における広域火山灰の分布範囲

 ここに阿蘇山の噴火がありますが、これはいわゆる大噴火ではなくて、これはもう一つケタが違うカルデラ噴火です。九州ではカルデラ噴火を繰り返しています。ここ(鬼界)で7300年前に起きたのが最後です。北朝鮮にある白頭山もカルデラ噴火したことがあります。この赤い線は何かというと、火山灰がどこまでいったかというのが、掘ってみて、分かったものです。火山灰というのは一種のマーカーでして、調べてみると、どこで噴火したものか、わかります。例えば浅間山の1783年の火山灰はグリーンランドまで行った事がわかっています。そういった意味では、阿蘇山の噴火、喜界カルデラ噴火から7300年たったということは、もうそろそろ起きても不思議ではないかもしれない。
(補足24)上記の図の引用元。
【記事31961】 第5回 カルデラ噴火!生き延びるすべはあるか?_藤井敏嗣 NHK_コラム 2013年3月29日

 


[18]阿蘇4噴火の火砕流の分布

 阿蘇山は過去4回カルデラ噴火をしたのですが、比較的新しい噴火、9万年前(阿蘇4噴火)ですが、この赤い所、ここを掘ってみた。火砕流というのを、みなさん知っていると思うのですが、温度は300度以上で、人間はみんな死んでしまいます。カリブ海では3万人の町が全滅したことがあります(注)。火山ガスや水蒸気を含んでいて、家屋等を簡単に超えてしまいます。阿蘇のカルデラからきた火砕流が残っているのがわかっています。今人が住んでいるところは、ほとんど全部なくなった。


※図は補足24の記事より抜粋
(注)Wikipediaに「プレー山(仏:Montagne Pelee)は、西インド諸島のなかのウィンドワード諸島に属するマルティニーク島にある活火山。名称は『はげ山』の意味。1902年に大噴火を起こし、当時の県庁所在地だったサン・ピエールを全滅させた。その結果、約30,000人が死亡、20世紀の火山災害中最大であったことで知られる。」とある。

 


[19]日本列島の巨大カルデラ火山の分布と巨大カルデラ火山噴火の最悪のシナリオ

 ここから先は脅かしになるのですが、東京大学の巽好幸さんという、火山学者ですが、日本でこれから、カルデラ噴火が起きたとしたら、1億3000万人の人が影響を受ける。彼は死ぬと言っていませんが。九州であったとすると、一番日本中に影響が広がるので、一億三千万人の人が生活不能になる。


※図は補足22の記事の11ページ目から抜粋
(補足25)巽好幸さんが「日本で巨大カルデラ噴火が発生する可能性は今後100年で約1%に上る」と述べている。
【記事42130】 巨大噴火、今後100年に1% 「超巨大」なら列島まひ 神戸新聞NEXT 2014年10月22日

 鬼界カルデラ噴火が起きたのは7300年前ですが、そのころは縄文時代でした。縄文時代の遺跡をご存知だと思うのですが、この(鬼界カルデラ)あたりの人はみんな死に絶えてしまった。

(補足26)上野原遺跡は、鹿児島県にある鬼界カルデラの火山噴出物(アカホヤ)に埋もれた縄文時代の遺跡。川内原発から西南西に100km程度の所にある。
【記事55640】 縄文の自然 火山灰から年代がわかる 鹿児島県上野原縄文の森 2016年5月22日

 


[20]2015年11月14日薩摩西方沖地震(M7.1)と熊本地震

 2015年11月14日、地震がここ(鹿児島県の西方海上)で起きている、九州の全域で結構大きな地震、結構大きな揺れがあった。今回の地震はここ(熊本)でありますので、延長上に、続いているのかもしれません。



(補足27)東大地震研究所の古村孝志教授が「昨年11月から今年にかけて最大M7級の地震が続いていた。これらが逆に熊本地震に影響を与えた可能性もある。」と述べている。
【記事52781】 「熊本」は「南海トラフ」の引き金にはならない…専門家指摘も「沖縄」の地震活動には影響か 産経ニュース 2016年4月24日
(補足28)「熊本地震が起きた別府−島原地溝帯は同トラフの延長線上にある。昨年11月には薩摩半島西方沖でマグニチュード(M)7・1の地震が起き、鹿児島県内で最大震度4を観測した。同西方沖では今も地震が続き、九州大の松島健准教授(固体地球物理学)は『熊本地震と何らかの関係性があるとみていい』と警戒を呼びかける。」
【記事55600】 熊本地震 専門家の注目点 数十年単位で余震警戒を 火山近くに断層?定説覆す 西日本新聞 2016年5月14日

 


[21]地震・火山と原発の話

 最後に地震と原発、火山と原発の話をします。中央構造線のほぼ線上に、川内原発、伊方原発がある。伊方原発は、佐多岬のところにいっぱい人が住んでいるわけで、これが、海を渡って逃げろということになっている。川内原発は高速道路と新幹線使ってにげろと、なっています。今回の熊本地震で絵に描いた餅同様であることがわかったわけです。

(補足29)「鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は18日の記者会見で、九州電力川内原子力発電所(同市)で再稼働後に重大事故が発生した場合、住民避難のために九州新幹線を利用できるよう、九州旅客鉄道(JR九州)に、鹿児島県と共同で協定締結を申し入れる考えを明らかにした。」
【記事40615】 原発事故時の住民避難「九州新幹線活用を」 薩摩川内市長 日本経済新聞 2014年8月18日

 


[22]マグニチュード7以上の大地震が起きている場所と原発の位置

 これは地球上でマグニチュード7以上の大地震が起きている場所と原発の位置を示した図です。日本は赤丸でほとんど埋め尽くされています。日本以外の国では、地震が多い所に原発はあまり建設していないようです。そして、地図をみても、トルコは大変な地震国であることがわかります。ここに日本の企業が原発を作ろう考えているのはかなり無謀なことのように思います。


(補足30)トルコの地震の件は島村さんが以下の記事の中で「私も現地で調査したことのあるトルコの北アナトリア断層も、やはり長さ1000キロにも及ぶ巨大断層です。この断層では1939年に東端で地震が起こり、それから約60年かけて西端に近いところまで、次々にM7クラスの地震が発生していきました。間隔はさまざまで、1年に2回起きたり、かと思えば十数年空いたこともありました。こんな事例もあるので、日本でも気を抜くべきではないでしょう。」とのべています。
【記事52286】 熊本地震と阿蘇山噴火、南海トラフは関連するのか 島村英紀・武蔵野学院大学特任教授に聞く 週刊ダイヤモンドオンライン 2016年4月21日

 


[23]加速度980ガルを超える地震動と原発の問題

 加速度の話をします。加速度とはなにかというと、地震計の記録には速度計、加速度計、変位計と三つある、加速度というのは、物を一番動かす力、どう関係するかというと、加速度に重さを掛けると力になります。原発での問題です。原発が何千トンあるか知りませんが、何千トンに直接かかった力を表すのが加速度になりますので、そういった意味では、設計基準というものに、加速度というものを盛り込んである。


 地震学会がよくわかっていなかったことがあるのですが、それは地震の加速度で980ガルをこえるものがあるかどうかです。物体が飛び上がる。そういったものは実際にあるといったのは、実は、京都大学のある人だけだった。すごい、みなさんに馬鹿にされまして、そういうものはあるわけがない。いやあるという議論になった。


 阪神淡路大震災の唯一のいいことは、日本中に加速度計、というか強振計を設置した。普通の地震計は地震の加速度が大きくなると、飽和してしまう。けれども、加速度計は飽和しないので、日本中にばらまいてみると、例えば2516ガルを記録してしまった。2007年の中越沖地震では、電力会社が自分ではかったもので、1500ガルを超えた。4022ガルというのも記録した。これは置いたある場所があまりよくなかったので、本来、厳美町で観測する値より高かったのではという学説があります。


 980ガルを楽に超えるぐらいの加速度というものが、地震で観測されるのが、分かってしまっている。ところが、原発を作る基準というものは、数10年間の地震学の成果は指針に入っていない。たとえば、今はその原発サイトのHP(注)から削除されていますが、「将来起こり得る最強の地震動」は350−450ガル、「およそ現実的ではない地震動」は450-600ガルとあった。これは1960年代の前半までの古い常識でありまして、今、現在は常識そのものが違っている。今回の熊本地震においても、原子力規制委員会が川内原発が652ガルの地震動を想定していると話していたが、古い地震学の常識のままであるように思える。


(注)600ガルという数値から推測するに中部電力の浜岡原発であろう。
(補足31)上記のお話は以下の記事にもあります。
【記事34230】 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 心配ないままでの「常識」で作られた建造物 強震計の大増設でわかった驚愕の事実 夕刊フジ 2013年12月6日

 


[24]原発から160km圏の火山の影響

 以下の図は原子力規制委員会が調べているものです。原発から160km圏の火山の影響を調べると言っています。


 


[25]原発事故の最悪シナリオ

 以下の図はすでに皆さんご存知だとおもいますが、原発事故の最悪シナリオとして、強制移住となる170km圏で原発を囲むと、日本中ほとんどとなり、絶対安全という場所がほとんどないことがわかります。


(補足32)図は下記の記事より抜粋した
【記事37322】 原発メルトダウンまで20分--避難時間は2日半!? GREENPEACE 2014年4月24日
(補足33)強制移住の件は「福島第一原発の事故当初、新たな水素爆発が起きるなど事故が次々に拡大すれば、原発から半径百七十キロ圏は強制移住を迫られる可能性があるとの『最悪シナリオ』を、政府がまとめていた」とある。
【記事24760】 福島事故直後に「最悪シナリオ」 半径170キロ 強制移住 政府公表せず 250キロ圏、避難の可能性 東京新聞 2012年1月12日

 


結論1

      ●日本列島は活断層が多い

      ●活断層は地震を起こす

      ●しかし活断層だけを警戒していればいいのではない

結論2

      ●日本は火山国

      ●ことところ「異常に」大噴火が少なかったが、
       このまま推移することはない

      ●数千年に一度の「カルデラ噴火」。原発の廃棄物は?

結論3

      ●普通の生活をしているかぎり、特定の活断層を毎日、
       恐れることはない


      ●しかし、原発や核廃棄物のように
       数万年以上の管理が必要なものは別

      ●地震国・火山国では原発は「無謀」

      ●このところ異常に大噴火も大地震も少なかったが、
       東日本大震災以後、その影響が出る


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