戻る <<前 【記事52740】2016年熊本地震(4月14日M6.5の激震)を踏まえ,川内原発の運転停止と基準地震動見直しを求める緊急申し入れ(若狭ネット2016年4月22日) 次>> 戻る
KEY_WORD:熊本地震:
 
参照元
2016年熊本地震(4月14日M6.5の激震)を踏まえ,川内原発の運転停止と基準地震動見直しを求める緊急申し入れ


2016年熊本地震を踏まえ、原子力規制委員会へ緊急申し入れを行いました

2016年熊本地震を踏まえ、原子力規制委員会へ緊急申し入れを行いました
(後日、公開質問状を提出し、5月下旬に原子力規制委員会・原子力規制庁との交渉を設定します)

2016年4月22日
原子力規制委員会委員長
田中 俊一 様

2016年熊本地震(4月14日M6.5の激震)を踏まえ,
川内原発の運転停止と基準地震動見直しを求める緊急申し入れ

若狭連帯行動ネットワーク(pdfはこちら http://wakasa-net.sakura.ne.jp/news/pnrc20160422.pdf )

4月14日のM6.5の地震を皮切りに、16日にM7.3の本震が発生した2016年熊本地震は、震源の分布範囲を広げながら今なお続いています。
4月14日のM6.5の地震は、南北方向に張力軸を持つ右横ずれ断層でしたが、震度7の激震をもたらし、図1(左)のKiK-net益城観測点KMMH16では、地表で1,580ガルの非常に大きな地震動が観測されました。原発の基準地震動と関係の深い地下地震計では、南北方向237ガル、東西方向178ガル、鉛直方向127ガル、3成分合成で260ガル程度の地震動が観測されました。これを解放基盤表面はぎとり波に換算すると、ほぼ2倍になり、それぞれ470ガル、350ガル、250ガル、3成分合成で520ガル相当になります。
益城観測点の地下地震計は地下252m、S波速度Vs=2,700m/sの地震基盤に設置されており、川内原発の解放基盤表面(Vs=1,500m/s)より硬い岩盤だと言えます。他方、原子力安全基盤機構JNESはM6.5の右横ずれ断層で1,340ガルの地震動が生じると報告していますが、益城観測点と同等の地震基盤(Vs=2,600m/s)上に観測点を置いた評価になっており、震源断層との位置関係からは図1(右)の断層右斜め下300〜400ガルの地点が益城観測点の位置に相当します。
図1:http://wakasa-net.sakura.ne.jp/www/wp-content/uploads/2016/04/kumajisin.gif
したがって、益城観測点での南北方向470ガルはJNESによる地震動解析結果をやや上回ると言えますし、JNESの地震動解析結果からは、より震源断層に近いところで1,000ガルを超える強い地震動が発生した可能性が高いと言えます。川内原発のクリフエッジは1号で1,004ガル、2号で1,020ガルですので、これを超える地震動が川内原発に近い九州地方で実際に発生した可能性があると言えます。
このM6.5の地震は地表からはその存在を確認できないため、いつ、どこで起きるか分かりません。ましてや、2016年熊本地震は未だ収束せず、南方へも活発に活動範囲を広げています。川内原発のごく近辺でM6.5の地震がいつ起きても不思議ではありません。
また、南北方向470ガルの地震動は、川内原発の540ガルの基準地震動Ss-1(水平方向)より少し小さめですが、その応答スペクトルは図2のように周期0.2秒付近で一部超えています。基準地震動Ss-2についても、図示はしていませんが、周期0.08〜0.3秒で超えています。つまり、川内原発の基準地震動を超える地震動が、しかも、M6.5のどこでも起こりうる小さな地震によって、川内原発周辺で実際に起きたことになります。
また、このSs-1は市来断層帯市来区間(M7.2,価震源距離Xeq=14.29km(基本ケース))の内陸補正なしの耐専スペクトルによって規定されていますが、この耐専スペクトルは約470ガルであり、益城観測点での地下地震観測記録はぎとり波はこれにほぼ等しく、図2のように周期0.1秒以上ではこれを上回ります。益城観測点はM6.5の地震との震央距離が11km、等価震源距離ではほぼ14kmになり、川内原発と市来断層帯市来区間の等価震源距離にほぼ等しいと言えます。つまり、M6.5の地震で、地震規模が1桁大きいM7.2の耐専スペクトルと同程度の地震動が観測されたことになり,M7.2の耐専スペクトルが過小にすぎることは明らかだと言えます。断層モデルによる地震動評価結果は耐専スペクトルの1/2ないし1/3にすぎず,最大加速度(水平方向)では300ガル弱にすぎません。益城観測点でのM6.5の地震観測記録はぎとり波はこれをはるかに超えています。
これらを踏まえ、緊急に下記のことを申入れます。真摯にご検討の上、英断されるよう強く期待します。

1.2016年熊本地震を踏まえると、M6.5の地震が川内原発周辺または直下で起きる可能性を否定できず、そ
の場合には川内原発のクリフエッジを超えて炉心溶融事故が起きる危険性もあることから、九州電力に対し、川内1・2号の運転中止を命令して下さい。

2.益城観測点のM6.5の地震に対する地下地震観測記録はぎとり波の応答スペクトルが川内1・2号の基準地
震動を一部超えることから、設置変更許可の前提が崩れたことは明らかであり、即刻、設置変更許可を取り消してください。

3.益城観測点の地下地震観測記録のはぎとり波によれば、今の耐専スペクトルや断層モデルによる地震動
評価では過小にすぎることが明らかであり、最近20年間の国内地震データに基づいて地震動評価手法を根本的に改定し、新しい地震動評価手法で基準地震動を策定し直してください。

以上

http://wakasa-net.sakura.ne.jp/www/wp-content/uploads/2016/04/kumajisin.gif
(図1の左図)

http://wakasa-net.sakura.ne.jp/www/wp-content/uploads/2016/04/M65acc.gif
(図1の右図)


図1.2016年熊本地震の前震M6.5、本震7.3と余震の震央分布(左図:KiK-net観測点▲を追記)および原子力安全基盤機構JNESによるM6.5の左横ずれれ断層による水平方向加速度分布(右図:最大値1340.4gal)(右横ずれの場合には上下を反転させた分布図になるため、左図の震央距離11kmの益城観測点KMMH16は右図では震源断層の右斜め下300〜400ガルの地点に相当する)

http://wakasa-net.sakura.ne.jp/www/wp-content/uploads/2016/04/masiki-1.gif
図2.益城観測点KMMH16の地下地震観測記録のはぎとり波(2倍化)の擬似加速度応答スペクトルと川内1・2号の基準地震動Ss-1および耐専スペクトル(水平方向)の比較(防災研データから長沢が作成)

注:2016年4月22日に福島みずほ社民党参議院議員を通して原子力規制委員会へ提出しました。九州電力の4月21日資料では市来断層帯市来区間の耐専スペクトルは約460ガルになっていましたので「約470ガル」から修正しました。この緊急申し入れの内容については、原子力規制委員会に公開質問状を提出して5月下旬に交渉する予定です。公開質問状(案)・交渉へのご賛同、ご参加、遠方からの参加者への交通費カンパをよろしくお願い致します。

戻る <<前 【記事52740】2016年熊本地震(4月14日M6.5の激震)を踏まえ,川内原発の運転停止と基準地震動見直しを求める緊急申し入れ(若狭ネット2016年4月22日) 次>> 戻る