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81年基準改定で「耐震」のはずが被害… 震度7続発は想定されず

 観測史上初めて、震度7を2回記録した熊本地震で、耐震工事をした役場や避難所が損傷し、使えない状態になった。大地震の続発は、1981年に定められた現行の耐震基準の想定外であり、国も被害状況を踏まえた上で、基準について再検討する方針だ。 (増井のぞみ)

 「数年前に耐震工事を終えていたのに…」と熊本県益城町の職員は言う。鉄筋コンクリート造り三階建ての町役場は、外付けフレームで補強していた。十四日夜の震度7には耐えたが、十六日の本震で亀裂が入り、倒壊の恐れで立ち入り不可となった。
 熊本市でも、避難所となっている小中学校二十四校の体育館で「筋交い」が破断するなど損傷し、使用禁止に。避難者はより安全な校舎に移った。「大地震の続発でびっくりしている」と、同市教育委員会施設課の担当者は訴える。市内の公立小中学校は、二〇一二年度末に耐震化率100%を達成していた。
 東京理科大の北村春幸教授(建築構造学)は「大地震は二度来るとボディーブローのように効いて被害が大きい。一度目で壊れて強度が落ちた建物は、むち打つように大きく揺れて壊れやすい」と言う。「耐震基準は最低限の基準。免震や制震など、被害軽減のための対策が必要だ」とも。
 一方、国土交通省の担当者は「確かに耐震基準では、繰り返しの大地震は想定していない。しかし全く対応していないわけではない。六十秒以上の揺れも想定して、構造計算をしている」と話す。長時間の揺れは、複数回の揺れに相当するという考え方だ。耐震基準はこれまでも大地震のたびに変更が加えられており「被害状況を調査したうえで検討したい」とする。
 耐震基準をクリアしていても万全というわけではないが、新しい建物の被害が少なかったのは事実だ。日本木造住宅産業協会(東京都港区)の坂田徹さんは「全国には九百万戸の耐震基準を満たさない住宅がある。空き家も入れるともっと多い。家全体が無理なら、せめて寝室だけでも補強をしてほしい」と話している。

<耐震基準> 現在の国の耐震基準は建築基準法に基づき、1981年に導入された。「震度5強の地震でほとんど損傷しない。震度6強から7に達する大地震で損傷はしても倒壊や崩壊はしない」ことが目安だ。震度7を記録した二つの大地震ではこの基準が効果を発揮した。95年の阪神大震災では、基準を満たす建物の被害は、それまでの古い基準の建物の3分の1程度。東日本大震災でも被害は小さかった。だが、両地震とも震度7の強い揺れは最初の1回だけだった。2013年の住宅耐震化率は82%となっている。

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