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防災計画 連続震度7想定せず 全ての都道府県

 災害時の緊急対策などを定めるため、各自治体が策定する「地域防災計画」に、熊本地震のような最大震度7の地震が連続発生することを想定した記載がないことが、47都道府県への取材で分かった。熊本地震では、4月14日の震度7の発生後、避難者が自宅に戻り、16日の2度目の震度7で死者を含む深刻な被害が出た。専門家は地域防災計画に盛り込むよう呼び掛けており、兵庫県など4府県が見直しを検討すると回答した。
 今月2〜6日に取材した結果、「震度7が連続して発生する」と想定した地域防災計画を定めている都道府県はなかった。熊本県は、熊本地震を引き起こしたとされる布田川(ふたがわ)、日奈久(ひなぐ)の断層帯で地震が発生した場合、「最大震度7」と想定していたが、連続発生については記載していなかった。
 連続して発生することを計画に盛り込んでいない理由について、各担当者は「国が想定していない」(滋賀県)▽「過去に例がない」(長野県)▽「1回でも複数回でも対応は同じ」(宮崎県)--などと回答した。ただ、阪神大震災で被災した兵庫県は「震度7」とは明示していないものの、「(四国の南の海底にある)南海トラフ沿いで、複数の地震が数時間から数日のうちに連続発生する可能性がある」と記載。最初の地震で損傷した建物が次の地震で倒壊して死傷者が出るのを防ぐため、建築士らが住宅などの安全性を調べる「応急危険度判定」を早急に実施するなどの対応を盛り込んでいる。
 一方、「地域防災計画の見直しを検討する」と回答したのは、兵庫、奈良、鳥取、大阪の4府県。このうち、奈良県は「県に影響する八つの断層を確認しているが、現在の計画では複数の断層が同時に動くことは想定しておらず、実際に発生すると十分に対応できない」と説明。大阪府も「ハード面での対策は国の対応を待たなくてはならないが、避難に関しては独自に見直すことができる」と答えた。兵庫県も「実際に連続で発生した以上、具体的な対策が必要」としている。熊本県は見直しについて「未定」と回答した。
 熊本地震で4月14、16日に震度7を記録し、大きな被害を受けた熊本県益城(ましき)町では、14日の地震による死者(地震による直接死)は8人、16日は12人。12人の中には、14日の地震でいったん屋外に避難したものの、自宅に戻って被災したケースが含まれている。役場も使用不能になり、熊本県の蒲島(かばしま)郁夫知事は4月25日、記者団に対し「(震度7の地震の連続発生が)あった時の対応を考えておかなければならなかったが(想定が)そこに至っていなかった」と語った。
 内閣府の担当者も取材に対し「地域防災計画の基になる国の『防災基本計画』には、大きな地震が2度連続で起こった場合の対策については特に明示していない。今後、中央防災会議の中で見直される可能性は十分にある」と語った。【樋口岳大、林由紀子、吉住遊、尾垣和幸】

 【ことば】地域防災計画

 災害対策基本法に基づき、都道府県や市町村が定める。震災対策や風水害対策など災害の種類ごとに、予防や応急対策、復旧・復興に関して実施すべき業務などについて策定する。国の「防災基本計画」や「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」、各自治体の被害想定などを踏まえて決める。各地で発生した災害や地域の実情などに応じ、順次見直すことになっている。

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