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平成28年熊本地震における九州電力川内原子力発電所への影響と見解について(2)

平成28年6月15日
原子力規制庁

 国民の皆さまの疑問や不安を少しでも解消する助けとしていただけますように、平成28年(2016年)熊本地震による九州電力川内原子力発電所への影響に関する原子力規制委員会の見解について、改めてご説明いたします。

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Q:この熊本地震は想定外の大地震です。なぜ川内原子力発電所は停止していないのですか。
A:この地震による川内原子力発電所への大きな影響はありません。
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 この地震により川内原子力発電所で観測された現時点での最大の揺れは、数ガルから十数ガル程度であり、極めて小さい揺れでした。
注:ガルとは人間や建物に瞬間的にかかる力(地震の揺れ)による加速度を表す単位

 4月14日、4月16日の大きな地震は、それぞれ日奈久(ひなぐ)断層帯、布田川(ふたがわ)断層帯の一部が震源となり発生したと考えられています。これに対し、原子力規制委員会の行った川内原子力発電所の新規制基準への適合性審査では、二つの断層帯全体が一度に動く、より大きい地震が発生することを想定し、その地震の発電所に対する影響を評価しています。
注:日奈久(ひなぐ)・布田川(ふたがわ)の断層帯では、断層長さ92.7km、マグニチュード8.1の地震を想定し、その地震が発電所に与える影響は100ガル程度と評価しました。これに対し、今回の熊本地震で観測された最大のマグニチュードは現時点で7.3で、地震調査研究推進本部の評価によると震源断層の長さは約35kmと推定されています。

 川内原子力発電所では、市来断層帯(市来区間)などの、より近い活断層を震源として、最大規模の地震が起こるという想定で評価しています。詳細な調査の結果、川内原子力発電所の敷地内やその周辺近くに活断層の存在は認められていません。
注:川内原子力発電所の敷地から、影響が大きいと考えられる市来断層帯の震央までの距離は約12km

 しかしその上で、詳細な調査で活断層がないとされた川内原子力発電所のような場所でも、一定規模の地震が起こり得るとあえて仮定した「震源を特定せず策定する地震動」についても評価した結果、基準地震動620ガルを設定しています。
注:基準地震動とは、原子力発電所の耐震設計において基準とする地震動。発電所敷地の地下のかたい岩盤において想定される最大の地震の揺れの強さのこと

 なお、日本の原子力発電所は、ある程度の大きさの地震があった際に原子炉が自動停止する機能をもっていますが、川内原子力発電所の自動停止の設定値は80から260ガルとなっています。この熊本地震で観測された最大の揺れは、これらの設定値に比べても小さいものでした。

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Q:この熊本地震では、約1580ガルの地震加速度が観測された地点もあります。
  川内原子力発電所で想定する基準地震動620ガルというのは、小さすぎるのではないですか。
A:地震加速度は、観測地点ごとに特有の地質などの要素、計測の方法によって大きく変化します。
  それぞれの数値を比較するには、それらの詳細な条件について注意が必要です。
  地盤などの条件が異なる場合、地震加速度の単純な比較はできません。
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 地震の揺れの大きさは、震源との距離が遠いほど小さく、近いほど大きくなります。この熊本地震では約1580ガルを観測した地点がありますが、その観測地点はやわらかい地盤にあり、震央までの距離は6.4kmでした。なお、この時の薩摩川内市での観測値は36ガルで、震央距離は113kmでした。
注:ガル数、距離などは防災科学技術研究所公表データより

 また、地震の揺れの大きさは、特に、地表付近の地盤のかたさによって大きく異なります。地表付近の地盤がやわらかいほど大きく揺れ、地下のかたい岩盤では揺れにくいですが、これは地震波がやわらかい地盤に伝わるときに振幅が大きくなるという、地震波の性質によるものです。

 原子力発電所は、かたい岩盤まで地面を削って、その上に原子炉建屋などを建設しています。なお、この熊本地震で約1580ガルが観測された時(4月14日21時26分)、川内原子力発電所での観測値は5.1ガルでした。
注:九州電力公表データより

 川内原子力発電所の設計に用いる基準地震動は、発電所の敷地周辺にある断層での地震や、震源を特定しない「震源を特定せず策定する地震動」についても評価し、基準地震動620ガルを設定しています。

【図表は省略】

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Q:今後、川内原発の周辺でも大きな地震が起きるかもしれません。
  そうなる前に原子炉を停止するよう九州電力に命令するべきではないですか。
A:科学的・技術的な根拠に基づいて、停止を命令する必要がないと判断しています。
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 現時点では、川内原子力発電所で原子炉が自動停止するほどの大きな地震を観測していないということや、施設に危険を及ぼす規模の災害が周辺では発生していないということから、原子力規制委員会は停止を命令する必要がないと判断しています。
 今後とも、状況を監視し、科学的・技術的な観点から適切に判断していきます。

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Q:今後、もし川内原発の周辺で大きな地震があった場合に、原子炉は止まるのでしょうか。
A:地震時には、原子炉の自動停止機能が正常に動作することを確認しています。
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 発電所周辺で大きな地震が発生し、発電所建屋内の地震計で一定規模以上の地震の揺れを検知した場合、原子炉の核分裂反応を制御する制御棒が自動で挿入され、原子炉を停止します。
 現在運転中の川内原子力発電所において、この熊本地震により発電所で観測された最大の揺れは、数ガルから十数ガル程度であり、基準地震動の地震加速度620ガルはもとより、原子炉の自動停止の設定値である80から260ガルに比べても小さいものでした。

【地震加速度の数値についての画像は省略】

また、地震発生時に燃料集合体の変形がある場合でも、制御棒が規定の時間(2.5秒)以内に挿入され、原子炉を停止できることを確認しています。

さらに、原子炉が停止した後、炉心で発生する崩壊熱を除去するための設備などは耐震重要施設として設計され、基準地震動に対して機能が保持できることを確認しています。

原子力規制委員会では、引き続き、地震をはじめ原子力施設への影響が懸念される事象が発生した際には、状況を注視するとともに原子力施設に関する情報の発信に努めます。

今後も、科学的・技術的観点から意思決定を行い、現場を重視した実効ある規制を実現し、原子力に対する確かな規制を通じて人と環境を守る努力を続けてまいります。

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