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参照元
(危険!!)基準地震動が過小評価されている_ちょぼちょぼ市民連合:田中一郎


1.はじめに
(1)理科系論文を読みこなすコツ
 *一般向けの理科系論文を読んでみてよくわからないときは、自分が悪いのではなく、書いた人が悪いと思う(説明が悪い・読んだ人をわからせようと思っていない)
 *数式そのものや、数式計算の過程は「おまかせ」⇒数式の意味を大づかみにおさえる
 *数式計算結果や数値の「単位」にもこだわらない⇒大きさの相対関係に注目(例:eV)
 *上記で、「数字の次元(ディメンジョン)」には注意⇒(例:Nm:ニュートン・メートル)
 *いったん理解したことは忘れないようにする(理科系の議論は「積み上げ」

(2)覚えておいた方がいい物理学の法則
 *ニュートン方程式F=mα(F=力、m=質量、α=加速度(重力980cm/秒秒))
 *運動量保存の法則 mv=Ft(v=速度、t=時間)
 *エネルギー保存即 1/2×mv2⇒「Nm」(ニュートン・メートル)と同じ
 *エントロピー増大の法則

(3)算数の基礎知識
 *乗数(べき数)
  102=10×10 103=10×10×10
 *2乗根、3乗根
  2×2=22=4 √4=2
  2×2×2=23=8 3√8=2 √8=2.82・・・
 *対数(log:log10X、logeX)(10やeを「底」という)
  Log10103=3log1010=3
  片対数グラフ(目盛が10倍ずつ増える=1,10,100,1000)、両対数グラフ

2.地震とはどういうものか

(1)何故、地震は起きるのか?
 「プレート」の動き、インド亜大陸の例、日本列島の数億年前⇒地殻内に働く力
 活断層は地震を起こすナマズなのか?

(2)断層の種類:縦ずれ(正・逆)、横ずれ(左・右)

(3)震度とマグニチュード(M)
 *震度(揺れる度合い:「1」〜「7」)
 *マグニチュード(地震の威力・エネルギー)「0.2」違うと2倍ほど威力が違う(「1.0」違うと、2×2×2×2×2=32倍)
  気象庁マグニチュード(Mj)=地震波の振幅、中小規模の地震
  モーメント・マグニチュード(Mw)=地震のエネルギー、大規模地震(東日本大震災)

(4)地震の3つの「震源」(内陸地殻内、プレート間、プレート内(スラブ内))

3.基準地震動の求め方(高知県と四国電力の勉強会資料参照)
  *「敷地ごとに震源を特定して想定する地震動」の「応答スペクトル方式」
  *「敷地ごとに震源を特定して想定する地震動」の「断層モデル方式」
  *「震源を特定せずに策定する地震動」

(2)「敷地ごとに震源を特定して想定する地震動」の2つの方式
 「応答スペクトル方式」=松田式(断層の長さVS気象庁マグニチュード:Mj)
 「断層モデル方式」=入倉・三宅式(断層面積VSモーメント・マグニチュード:Mw)

(3)過去10年間くらいで6件の基準地震動オーバー=「基準地震動」になっていない
 宮城沖3回(2005、2011.3、2011.4)、能登2007、中越沖2007 福島第一2011.3

(4)基準地震動は「入倉・三宅式」、基準津波は「武村式」=ご都合主義
 最近は基準津波にまで「入倉・三宅式」を使うようになった(国土交通省)

(5)島崎邦彦東京大学名誉教授他は「今回の問題」で何をしているのか
 経験式(「入倉・三宅式」「武村式」他)⇒断層面積(長さ)から地震のモーメント(Mo)を求める
+「不確かさの考慮」を加えて⇒共振周期別ガル数(加速度=力、原発の共振域は0.02〜0.4秒)

(6)「不確かさ」(uncertainty)と「ばらつき」(variability)は違う(前もって、かつ全部はわからない)
 (実際に起きたバラツキ値の「平均値」経験式)

(7)よくわからない言葉・グラフ・説明
 そもそも「応答スペクトル方式」「断層モデル方式」の計算プロセスが複雑
 スペクトル(耐専スペクトル、応答スペクトル)=虹のようなもの(共振周期別ガル数)
 アスペリティ、応力降下量(Mo/S)、短周期レベル、すべり量
 地震発生層(深度2kmくらい〜15kmまで)=こんな仮定は非現実的
 スペクトル・グラフの速度軸に対して加速度軸の45°線(??????)

4.島崎邦彦東京大学名誉教授の問題提起
 福島第1原発事故前の中央防災会議での言動への後悔、熊本地震の計算で「確信」
 6月半ば以降の経緯=新聞記事(東京、毎日、朝日)

5.島崎邦彦氏の岩波書店月刊誌『科学2016.7』論文
 中央防災会議、国土交通省の委員会報告書=入倉・三宅式、話の核心は津波ではなく地震
 (1)「式」は「地震のモーメント」を求める経験式(Nm:ニュートン・メートル)
 (2)基準地震動は「入倉・三宅式」、基準津波は「武村式」なのに「入倉・三宅式」使う
 (3)「入倉・三宅式」「武村式」「山中・島崎式」の3つがある
 (4)「入倉・三宅式」は断層面積に比例、「武村式」は断層の長さに比例(下記系3参照)
 (5)過去の3つの地震での試算(1891濃尾、1930北伊豆、2011福島浜通り)
 (6)地震発生後に得られるデータは前もっては不明(断層面積や長さ等=不確かさの考慮)
   ⇒このことと「入倉・三宅式」の過小評価とを混同する議論(東大地震研・纐纈教授)
 (7)(6)とは別に存在する「入倉・三宅式」の大幅過小評価(大きな原因は日本の地震に基づかない(世界の地震)こと、断面積使用=断層断面が垂直に立つと面積が小さい)
 (8)熊本地震の試算(1.37、4.2、3.7 ⇒実際は4.66 :×1019Nm)
 (9)「地震のモーメント」をガル数に換算するのは3乗根(3√)(⇒2乗根(√)という説もある=安全性の観点から2乗根を使うべき)
 (10)結論=原発の基準地震動評価に「入倉・三宅式」を使ってはいけない=危険だ!!
注:活断層を細切れにしてごまかす(衣笠善博方式)、断層は断層表面の下だけ(面積過小)

6.原子力規制委員会・規制庁のインチキ(「いちろうちゃんのブログ」より)
 (1)「入倉・三宅式」と「武村式」(別紙線グラフ)
  (系1)熊本地震で決定的に「入倉・三宅式」の過小評価が判明
  (系2)柏崎刈羽原発・2007中越沖地震では「入倉・三宅式」の6倍(そのうち2倍分を「不確かさの考慮」として基準地震動評価手法に反映、残り4倍分は不明)
  (系3)断層の深さ(地震発生層)は15kmまで、断層の幅は(垂直なら)14kmで最大
      「入倉・三宅式」は断層面積を使うので断層が垂直に近づくと面積が小さくなる
 (2)原子力規制庁の「武村式」計算におけるインチキ(別紙棒グラフ)
  一つが基本パターンの引下(関電計算方法使わず)、もう一つが「不確かさの考慮」無視
 (3)原子力規制庁計算結果:「入倉・三宅式」×1.81=「武村式」
 (4)大飯原発(関西電力)の基準地震動に×1.81すると
    856ガル×1.81=1550ガルor 596ガル×1.81+260ガル(不確かさ)=1339ガル
    いずれも「クリフエッジ」の1260ガルを超える⇒×××
 (5)その他
  @平均式であること、2つの「方式」の手法も「平均方式」⇒平均を10倍せよ
  A「不確かさの考慮」が泥縄方式、「ばらつき」を「不確かさ」でごまかし⇒2倍まで
  B「不確かさの考慮」の「不確かさ」の最大は「活断層がすべてわかっていない」こと
  C「震源を特定せず策定する地震動」=2004留萌南部地震(Mw5.7)
    M7以上のマグニチュード地震を使わない(別表参照)、留萌以外もほとんど不使用
  D「地震のモーメント」のガル換算は3乗根ではなく2乗根(「応答スペクトル方式」)
  E原子炉の工学的耐震性は疑問(連続の強地震(熊本)、弾性・塑性でごまかし、悉皆性)
   Sクラス、Bクラス、Cクラスの重要度分類がいい加減(別紙参照)

7.長沢啓行(ひろゆき)大阪府立大学名誉教授のコメント
 (1)熊本地震では、Mj6.5で1000ガルを超えた
 (2)熊本地震では、益城地下観測点で川内原発の基準地震動を超過していた
 (3)「耐専スペクトル」は大幅な過小評価
 (4)「松田式」修正レシピを使いなさい(「応答スペクトル方式」)

8.「耐専スペクトル」の大幅な過小評価
 (1)「耐専スペクトル」とは
  「耐専スペクトル」=日本電気協会の「原子力発電耐震設計専門部会」の略
  「耐専スペクトル」は過去の地震観測に基づく経験式(グラフ)
 (2)「学協会」方式の一つ(業界+御用学者に規制当局が参画しその結論を追認=利益相反)
 (3)過小評価となっていた過去の「実績」
   女川原発の宮城沖地震(2006年:Mj7.2)=耐専スペクトルの5倍
   柏崎刈羽原発の中越沖地震(2007年:Mj6.8)=耐専スペクトルの6倍
   志賀原発の能登半島地震(2007年:Mj6.9)=耐専スペクトルの5倍
   岩手宮城内陸地震(2008年:Mj7.2)ではどうだったか?
(4)「耐専スペクトル」では、バラつきを「1.6〜1/1.6」で想定している(小さい)
  これではマグニチュード7以上の大地震には使えない
(5)「耐専スペクトル」の基データが少なすぎる(1997年以降、関東・東北の44地震)
  大半がプレート間地震(32)、内陸地殻内地震少ない(12:しかも伊豆半島周辺に集中)
  プレート内地震はゼロ
(6)短周期レベルの相対値
  「耐専スペクトル」は使えない、のに、使っている

9.その他
 原子炉圧力容器や配管類など、原発の安全性を維持する機器類の鋼材が不良品
  緊急冷却で冷水を注入すると「パリン」と割れる(ガラスのコップに熱湯を入れた時と同)

(1)最近の情報で、原子力規制委員会・規制庁が、原子炉その他の原発に使われている鉄の炭素濃度の偏り(高濃度で鉄が脆くなる)がある可能性を指摘し全原発に点検を指示(日本鋳鍛鋼社(新日鉄住金と三菱グループの共同子会社)製造の鋼材)、契機はアレバ社
(2)老朽化原発に多い不純物「銅」(金属)の混入⇒中性子照射脆化がひどくなる

以上

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