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原発反対派の批判エスカレート 「川内原発」と「御嶽山」を結び付ける議論の"アンフェア"


 戦後最悪の火山被害をもたらした御嶽山おんたけさんの噴火で、原子力規制委員会の審査に合格した九州電力川内せんだい原発鹿児島県への風当たりが強くなっている。川内原発は日本にある原発の中で、最も火山のリスクが高いとされているからだ。再稼働反対派はこれを奇貨として勢いづく。しかし御嶽山の「水蒸気爆発」と、川内原発で想定される「超巨大噴火」を混同する議論はフェアではない。原発周囲で予測されている噴火とはどういうものか。規制委が判断した火山のリスクとは何か。原子力取材班

小泉元首相「原発やっちゃいけない国」
 「御嶽山の噴火は専門家でも想定外だったと言っている。想定外とはいつでも起きるということだ。日本は原発をやっちゃいけない国だ」
 小泉純一郎元首相が9月29日、音楽家の坂本龍一さんが主催した脱原発イベントに出席後、記者団にこう語った。火山のリスクがある川内原発の再稼働に反対するとともに、安倍晋三首相に対して「原発ゼロをなぜ進めないのか。こんないい時期はない」と呼びかけた。
 同28日には鹿児島市でも原発の再稼働反対集会があり、県内外から約7500人主催者発表が参加した。主催者によると、鹿児島県内では、過去最大規模の反対集会となったという。
 集会では菅直人元首相が演説した。翌日の菅氏のブログでは、桜島など火山地帯に囲まれた川内原発の危険性を訴えた上で、「国民の大多数は原発再稼働に反対している。そして再稼働しなくても必要な電力が供給できることは実証済み」と記した。
 9月27日に突然噴火した御嶽山がもたらした災害は、原発関係者に衝撃を与えた。最も再稼働に近い所に位置する川内原発の半径160キロ圏内には、過去に巨大噴火した5カ所のカルデラ大きなくぼ地がある。これまでにも原発敷地内に火砕流の到達の恐れが指摘され、再稼働反対派の攻撃の的にされてきたが、ここにきて批判がエスカレートしている。

「御嶽山とは違う」規制委が反論
 こうした原発への批判の声に対し、規制委の田中俊一委員長は次のように反論する。
 「川内原発と御嶽山の噴火とつなげて議論されているのは承知しているが、全く違う話で、一緒に議論するのは非科学的だ。川内原発周辺で超巨大噴火が起こるときには、マグマの量の蓄積が非常に長期にわたって、相当大量にたまってくる。当然、地殻変動とか地震などの兆候が事前に、相当早くから出てくる」
 小渕優子経済産業相も9月30日の閣議後の会見で、「今回の御嶽山の噴火があったからといって再稼働に影響があるということではない。火山対策も含めて世界で最も厳しいといわれる新規制基準に適合したと認められたものは再稼働することになっている」と強調した。
規制委がいう超巨大噴火とは、九州の南半分が全滅するような事態を想定している。土地も火山灰と火砕流で埋め尽くされてしまい、人が住めなくなるレベルのことだ。
 こうした噴火は1万年に1回程度と予測されており、原発の運用期間である30〜40年の間には起こらないと規制委は判断し、川内原発の安全性を認めた。
 特に規制委は審査の中で、川内原発敷地周辺にある14カ所の火山が噴火するかについて想定データを徹底的に分析した。富士山が1つ吹き飛ぶぐらいの噴火が起きたとしても、原発敷地への影響はないとの見解も示している。

南九州全滅、原発だけ残る異常事態も
 火山噴火予知連絡会によると、御嶽山の噴火は、マグマ由来の物質が確認できなかったことから、マグマで加熱された地下水が水蒸気となって噴出する「水蒸気爆発」と断定した。すべての噴出物は100万トンと想定し、火砕流は斜面を3キロにわたって流れ下ったという。
 規制委によると、超巨大噴火の噴出物は、御嶽山の100万倍に相当し、火砕流は100キロまで到達する。御嶽山とはまったくスケールが違うのだ。
 いつ噴火するかの予知は困難ではあるものの、こうした"破局的噴火"の前兆をとらえることは比較的容易だという。川内原発の審査では「マグマだまりの観測結果から、噴火の間隔は十分長く、噴火直前の状態ではない」と結論付けた。
 そもそも南九州が全滅するというような超巨大噴火が起こることに対して、田中委員長は「一原発の問題ではないので、国全体として捉えていく必要があると思う」と指摘する。
 九州の南半分が荒廃しているにもかかわらず、原発だけ無事に残っている姿は異様だろうという示唆がうかがえる。

研究者は自覚を、多額の金も投入
 とはいっても、仮にこうした噴火が起きた場合のことも考えなくては、安全神話に陥ることになりかねない。
 規制委によると、原発の炉心から燃料を抜いて運び出し安全を確保するまでに、年単位の準備が必要だという。このため、観測体制が最も重要となる。
 規制委は8月、火山の専門家を集めたモニタリング検討会をつくった。来年度の予算には、火山観測のため「火山学者が驚くような金額」田中委員長という、2・6億円を国に要求した。原発をきっかけに、火山研究をリードしていこうとの意気込みだ。
 火山学の研究は非常に遅れている。研究者が少ないことから「40人学級」とも揶揄やゆされる。
 規制委の検討会のメンバーである京都大の石原和弘名誉教授は「地震観測や監視カメラで噴火予知ができるというのは思い込み、俗説、誤解である」として、火山学の水準を過大評価する規制委の姿勢を問題視した。
 これに対し、田中委員長は「基礎的研究をする学者は社会的視点をあまり意識しないが、ギャップを埋められるよう努力することが大事だ。火山の研究は非常に社会的影響が大きいので学者は自覚を持ってほしい」と研究の発展を促す。
 御嶽山の噴火で、期せずして問われた原発と火山。これをきっかけに、火山への研究が一層進むことが期待される。

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