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福島事故 地震2時間半後に「炉心、1時間後に露出」 東電、予測を国・県に報告せず


 東京電力福島第一原発事故が起きた二〇一一年三月十一日、東電が地震発生から約二時間半後に、原子炉水位が下がっていた1号機の核燃料が約一時間後にむき出しになると予測しながら、法律で義務付けられた報告を政府や福島県にしていなかったことが分かった。炉心を水で冷やせずメルトダウン(炉心溶融)に至れば、大量の放射性物質の流出につながる。原発事故から五年余りがたつが、検証が必要な事故対応が依然、残されていることが裏付けられた。 (宮尾幹成)

 東電が事故当日の午後五時十五分ごろ、「約一時間後に1号機の炉心が露出」と予測していたことは、政府事故調査委員会の中間報告(一一年十二月)で明らかになっている。今回、報告義務がある予測結果を東電が伝えた記録が、経済産業省原子力安全・保安院(廃止)を引き継いだ原子力規制庁や福島県にないことが判明した。

 原子力災害対策特別措置法では、原発事業者は核燃料の冷却ができなくなるといった異常の発生や、その後の応急対応の内容を政府などに連絡しなければならない。当時の菅直人首相は本紙の取材に「予測結果は首相官邸に伝わっていなかった」と証言。「1号機のメルトダウンが迫っているとの報告があれば、より広い範囲の避難を早く決められたかもしれない。検証が必要だ」と述べた。

 政府は事故当日の午後七時四十五分から枝野幸男官房長官(当時)が記者会見し、原子力緊急事態宣言の発令を発表した。だが枝野氏も取材に「東電から(予測結果の)報告はなかった。会見の時点では1号機の水位は維持していると考えていた」と述べた。

 政府は同九時二十三分、原発の半径三キロに避難指示を出したが、2号機の水位低下の情報がきっかけだった。1号機予測結果の未報告は、政府が避難指示を出すタイミングに影響した可能性がある。1号機はその後の政府や東電の解析によると、午後六時ごろに炉心が露出し、同七時ごろに炉心損傷が始まっている。

 東電は取材に対し、報告しなかった理由は「分からない」とした上で「直前に『非常用炉心冷却装置が注水不能』と報告している。官邸には職員も派遣しており、緊急事態であることは伝わっていた」と説明した。

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