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社説 不具合続く高浜原発 安全対策検証と原因究明を急げ

 先月26日に再稼働した関西電力高浜原発4号機(福井県)の原子炉が、3日後に緊急停止した。発送電を始めた途端、送電線側から想定を超える電流が流れたという。機器の点検や整備などに不備はなかったか。安全対策の検証と原因究明、情報公開の徹底に努めるべきだ。
 4号機の不具合はこれだけではない。先月20日には放射性物質を含む1次冷却水漏れがあった。ところが関電は月内再稼働の予定を見直さず、発覚2日後に配管のボルトの緩みが原因だったと公表すると、延期していた起動試験をその日の夜のうちに開始。重要作業は日中に行うとの方針を曲げてまで再稼働を急いだ姿勢に、スケジュールありきとの印象を強くする。
 関電は電力小売り自由化による競争激化に対応するため、5月から電気料金を引き下げると発表している。すでに営業運転に移行した3号機に加え、4号機の早期の営業運転を見込んでいたのは想像に難くない。安全対策より経営戦略を優先したとすれば、批判は免れまい。
 問題のボルトを最後に点検したのは、東京電力福島第1原発事故より前の2009年だ。4号機は10年にも、配管内の圧力異常が原因とみられる冷却水漏れを起こしている。それでも再稼働前の点検対象にならなかったというから、安全意識が希薄と言わざるを得ない。
 関電は緊急停止の原因と対策を取りまとめるまで、再稼働を進めないと明言している。当然だ。そもそも3、4号機については、周辺住民らが再稼働差し止めを求めた仮処分申し立てが抗告審で争われている。司法の結論が出るまで再稼働を見合わせるのが筋だろう。住民の不安に向き合い、見切り発車を繰り返さぬよう求めておく。
 懸念は他にもある。福島の事故で必要性が高まった免震重要棟が整備されていない。原子力規制委員会の審査では「17年度末までに完成」とし、当面は会議室で代用する案を示し了承された。代用案でさえ容認し難いのに、関電は最近になって完成時期を「未定」と言い換え、さらなる先送りを示唆した。
 新規制基準が免震構造を義務付けていないとはいえ、審査に「合格」した後の一方的な計画変更は信義に反する。規制委は苦言を呈し説明を求めるにとどめているが、審査のやり直しを含めて厳しく対応すべきだ。
 広域避難計画の実効性にも疑問が残る。避難対象となる半径30キロ圏には福井、京都、滋賀3府県が含まれるが、計画は再稼働が決まった昨年12月にできたばかり。再稼働を進める国は、18万人もの移動や受け入れを想定した準備が十分でないことを重く受け止めねばなるまい。
 高浜原発の相次ぐ不具合に、周辺住民をはじめ国民の原発に対する視線は厳しさを増す。国と全ての原発事業者の再稼働ありきの姿勢に異を唱えるとともに、脱原発への道筋を早期に示すようあらためて促したい。

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