戻る <<前 【記事35860】「川内」優先審査 原発を再活用する第一歩に読売新聞社説(読売新聞2014年3月15日) 次>> 戻る
KEY_WORD:原子力規制委員会:九州電力:川内原発:東日本大震災:東京電力福島第1原発事故:新規制基準:優先審査:意見公募:公聴会:自民党原子力規制プロジェクトチーム:避難計画
 

「川内」優先審査 原発を再活用する第一歩に読売新聞社説

 原子力規制委員会が、再稼働に向けて優先的に安全性を確認する原子力発電所として、九州電力川内原発1、2号機鹿児島県を選んだ。
 原発の長期停止を脱する一歩としなければならない。
 規制委は、10原発17基の安全審査を進めている。川内原発は、その中で初の「合格」候補となった。今夏にも再稼働に向けた法的手続きが終わる見通しだ。
 東日本大震災の影響で、国内の全48基の原発が停止する中、代替の火力発電用燃料費が増加し、電気料金が上がった。再値上げを検討中の電力会社もある。産業や国民生活への影響が深刻であることを軽視すべきではない。
 規制委は昨年7月、東京電力福島第一原発事故を踏まえた原発の新規制基準を策定した。それによる安全審査は、「半年程度で終わる」との見通しを示していた。
 しかし、規制委と電力会社の間で、必要なデータの種類や、データの解釈などを巡って見解が食い違い、審査終了の見通しが立たない状況が続いていた。
 規制委が先月、優先審査の仕組みを打ち出したのは、現状打開の観点から評価できる。 想定すべき地震の規模などで電力会社の検討内容が適切と判断した原発については、優先的に審査官を配置し、「合格証」に相当する審査書作りを急ぐ。早ければ来月にも審査書案をまとめる。
 規制委と九電は、効率的に審査を進めてもらいたい。
 懸念されるのは、規制委が、審査書案の段階で意見公募や公聴会の実施を予定していることだ。
 膨大な意見への対応に相応の人員を割くことになり、肝心の川内原発の審査が手薄にならないか。川内原発以外の原発の審査にも、しわ寄せが出るだろう。
 そもそも、自らが科学的観点からまとめた審査書案に、改めて外部の意見を求めるのは、規制委の信頼を損なうものだ。
 規制委の姿勢に対しては、自民党内にも批判が多い。党原子力規制プロジェクトチームからは、「裁判官が判決文の案に意見を募集するようなもの」「判断の責任から逃げている」といった疑問の声が上がっている。
 規制委は、意見公募、公聴会の実施を取りやめるべきだ。
 川内原発の地元では再稼働を期待する声が多い。周辺自治体では避難計画の策定も進んでいる。政府は、九電とともに再稼働の重要性について、丁寧に理解を得ていかねばならない。

戻る <<前 【記事35860】「川内」優先審査 原発を再活用する第一歩に読売新聞社説(読売新聞2014年3月15日) 次>> 戻る