【記事18411】揺らぐ安全神話 柏崎刈羽原発 はがれたベール 検証・設置審査 <2> 地質学と工学 断層評価 意識にずれ 「つくる」ために妥協許す 金科玉条の式 地質屋に非難(新潟日報2008年1月3日)
 

※以下は上記本文中から重要と思われるヶ所を抜粋し、テキスト化したものである

 垣見が感じていた工学者との意識のずれは、松田が専門誌上で七五年に発表した地震規模の計算式の扱いをめぐって如実に表れる。
 「松田式」と呼ばれる計算式は、活断層の長さから、起こり得る地震の規模(マグニチュード=M)を推定する。十キロ以上の断層が過去に起こしたM6・5級の地震記録を根拠にしていた。だから十キロより短い断層には応用できなかった。
 だが、数式で表すことが難しい地質学の分野で、松田式の登場は「画期的だった」と垣見。工学者もこれを見逃さず、「便利な式」として独り歩きが始まる。電力各社でつくる日本電気協会も原発耐震設計マニュアルで松田式の活用を明記。本来使えないはずの短い断層にまで、式を当てはめるようになったのだ。
 予想もしなかった事態に、生みの親である松田は戸惑った。「大ざっばな材料から作った式なのに、いつしか金科玉条のように使われていた」
 ちょうど松田式発表の年に始まった1号機の審査でも、焦点となった「気比ノ宮断層」の評価で採用された。それも、「もっと長い可能性がある」とする松田本人の見解は事実上無視されるという皮肉な形で。気比ノ宮断層が起こす地震の推定規模は、式から「M6・9」とはじき出されたのである。

KEY_WORD:東京電力柏崎刈羽原発1号機の安全審査の分科会:東京大助教授で耐震工学の専門家・秋山宏:東大の松田時彦:地質調査所(当時)の垣見俊弘:試掘坑:松田式:日本電気協会も原発耐震設計マニュアルで松田式の活用を明記:気比ノ宮断層:地質調査所は旧通商産業省の下部組織:一金科玉条の式:元科学技術庁職員の塚腰勇:CHUETSUOKI: