[2017_06_01_01]【社説】原発の集中立地 本当に良きことなのか(東京新聞2017年6月1日)
 
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【社説】原発の集中立地 本当に良きことなのか

 関西電力大飯原発3、4号機が新規制基準に「適合」と判断され、関電が再稼働を申請した大飯、高浜、美浜の七基は全て基準をクリアした。だが七基がフル稼働した場合の安全性は、評価の外だ。
 大飯原発は原子力規制委員会の規制基準に「適合」と判断された。だが、それは安全を保証するものではない。電力会社はおろか、自治体にも政府にも科学者にも、安全の保証などしようがないのが原発なのだ。
 私たちは福島第一原発事故にそのことを、いやというほど思い知らされたはずである。
 関電の三つの原発は、いずれも福井県にある。地図を開けば一目瞭然。若狭湾を陸側から取り巻くように並んで立っている。
 その上、日本原電の敦賀原発、廃炉が決まったとはいうものの、高速増殖原型炉の「もんじゅ」まで、集中的にひしめく福井。世界屈指の「原発銀座」と呼ばれる、ゆえんである。
 三原発七基稼働への道が再びひらけたことで、例えば地震などにより、複数の原発が同時、あるいは連鎖して過酷な事故に陥る「多重事故」への不安が高まるのも無理はない。
 福島第二原発が被災を免れたのは奇跡という指摘もある。
 規制委の審査は、自動車の車検のようなものではないか。車検に通った自動車が事故を起こさないという保証はない。ましてや多重事故など結局、想定外というしかないではないか。単発の事故ですら、逃げ場などほとんどないのが現実なのだ。
 事故だけではない。原発が動けば、危険な核のごみが出る。三原発がフル稼働した場合、各原発の貯蔵プールは七年でいっぱいになるという。
 福井県の西川一誠知事は県内での一時保管を許さない方針だ。最終処分場のめどはまだ立っていない。再稼働の環境は「完備」とはほど遠い。
 その上、大飯原発では、前規制委員長代理が指摘した地震の揺れの過小評価の問題が棚上げにされたままである。なのに、規制委の審査適合=安全=再稼働の図式が定着してしまってもいいものか。
 再稼働への最後のかぎを握るのは事実上、立地県の知事である。
 「原発銀座」との共存をこのまま続けていくことが、多くの県民、そして周辺府県の住民にとって、本当に良きことなのか−。

 西川知事の英断を望む。

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