[2019_06_15_01]3・11以後、ほとんど発電しない日本原電へ 「基本料金」1兆円支払いは電力会社の詐欺行為 電気を1kwも発電しない会社が黒字? 東海第二原発も再稼働はほとんど不可能 小坂正則(脱原発大分ネットワーク)(たんぽぽ舎2019年6月15日)
 
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3・11以後、ほとんど発電しない日本原電へ 「基本料金」1兆円支払いは電力会社の詐欺行為 電気を1kwも発電しない会社が黒字? 東海第二原発も再稼働はほとんど不可能 小坂正則(脱原発大分ネットワーク)

目次
1.電気を1kwも発電しない会社が黒字?
2.日本原電とはどんな会社か
3.東海第二原発も再稼働はほとんど不可能
4.「基本料金」は発電して初めて発生するもの
5.東電は債務超過の日本原電を精算へ
6.発電した時と同額以上の基本料金を払う?

1.電気を1kwも発電しない会社が黒字?

 日本原電は原発専門の発電会社です。この会社は2011年3月11日の東日本大震災で、自社所有の東海第二原発はかろうじて大事故を免れました。
 もう1つの敦賀原発2号機は、その年5月7日に放射能漏れ事故で止まり、2つの原発は今日まで電気は1ワットも発電していませんが、8年間もの間ほとんど黒字を出して、約千人の社員には高額の給与とボーナスも出しているのです。
 その原資は東電や関電などによる電力供給契約の「基本料金」という名目で全体で1千億円から1500億円のお金がつぎ込まれているのです。
 5月24日の朝日新聞によると「2011年以降総額9,885億円になった」という記事がありました。
 こんな債務超過の会社を国の税金で支えられている国営企業の東電が毎年数百億円もの「基本料金」という名で、東海第二原発の再稼働への対策費用3千億円の債務保証まで行うことは東電株主への背任行為ではないかと疑われるのです。

2.日本原電とはどんな会社か

 日本原子力発電(株)略称:原電とは東電などの電力会社が出資して作った原発専門の発電会社です。東海第一原発は1998年に運転停止して廃炉作業中です。残る東海第二原発110万kwは2011年3月11日の東日本大震災で被災て今日まで止まっています。
 福井県敦賀市にある敦賀第一原発(35.7万kw)は2015年に廃炉が決まり、敦賀原発2号機(116万kw)は2011年5月に放射能漏れ事故で止まったままです。
 ところが敦賀原発2号機建屋の真下に活断層があることが判明したため、廃炉の可能性が大なのです。
 また、敦賀3、4号機の新設工事は更地などの作業が進んだままで止まっています。ところが、その建設費用に1400億円を4機の原発廃炉積立金を取り崩して使っていたことが判明しています。
 つまりこの会社は東海第一原発や敦賀1号機の廃炉費用も使い果たして3、4号機の建設資金に流用しているのです。しかも3、4号機が建設される可能性はほとんどゼロです。
 建設費の高騰や、新規原発建設ができる世論ではありません。もし建設して運転開始したとしても発電単価が跳ね上がって、再エネ電力の価格低下の中で電力自由化市場の中で競争に勝てる可能性は全くありません。

3.東海第二原発も再稼働はほとんど不可能

 ところで、日本原電にとっては東海第二原発が唯一残された「動く可能性のある原発」なのですが、それも非常に困難なのです。というのもこの原発周辺30キロ圏内には約100万人の住民が住んでいて、周辺8市町村との間には「安全協定」が結ばれていています。
 その内、東海村や水戸市など6市村との間には自治体が運転を認めなければ動かすことはできない再稼働の「事前了解」協定が結ばれているのです。
 そして東海第二原発は2023年1月までに再稼働ができなければ運転開始後40年が過ぎてしまい廃炉となる運命なのです。
 しかもテロ対策施設と言われている「特定重大事故等対処施設」の建設費およそ3千億円は計画も準備も全く進んでいなくて、資金調達の目処も立っていないのです。
 建設費の3千億円は東電などの債務保証で銀行から借り入れる計画ですが、この会社は実質的に債務超過なのに追加融資の3千億円を貸す銀行があるのでしょうか。また銀行から借ることができたとしても返すことは不可能でしょう。
 また、昨年11月7日に再稼働の許可が下りたのですが、すると残り4年と少しの間で、いわゆる「テロ対策施設」は完成させなければならないのです。
 九電が「5年間の猶予では完成できない」と言われる施設を、日本原電は4年間で完成できるわけはありません。
 まだ設計図もできていないし、テロ対策施設の設計許可も規制庁からは下りていません。仮に2023年に再稼働したとしても、また、すぐ止まってしまうのです。

4.「基本料金」は発電して初めて発生するもの

 東電や関電はなぜ債務超過の原発専門発電会社へ湯水のようにお金を垂れ流すのでしょうか。
 それはこの会社を作った経過にその理由があります。1957年に政府主導で「電源開発」という国策企業を政府は立ち上げたのですが、当時の原子力委員会の正力松太郎委員長は原子力発電はこれからの有望事業の可能性が大きいので民間主体で行いたいとして、政府と利権争いの結果電事連主体で立ち上げた電事連主体の民間企業なのです。
 ですから持ち株比率も東電、関電と続き本土の9電力会社に電源開発も含まれています。
 東電にとっては日本原電を潰せば、そのツケは自分たちに降りかかって来るので、何とか電気料金で支えて、最後は政府に面倒を見てもらいたいのです。
 しかし、この日本原電が例えばガス会社と仮定します。そのガス会社は私の家にもガスを供給していたとします。この会社から次のような請求書が来たら皆さんど思います。
 「当社のガス発生装置が故障して当分の間ガスを供給出来ませんので、皆さんからは基本料金だけ頂きます」という通知がきたようなものです。
 すると、東電や関電は「いいですよ。それでは基本料金としてこれまで買った電気料金分を今まで道りにお支払いします」と言って、毎年1千億円以上の金を8年間支払い続けて、その総額が1兆円になったのです。そんなバカな話があるでしょうか。
 これがトヨタや日産の自分の子会社が赤字でも、資金提供して支えることはあり得ます。それが株主の利益にならないことであれば、株主代表訴訟を起こされて、経営責任が問われるでしょう。東電や関電の株主の皆さん、ぜひこの件について株主代表訴訟を起こしてください。
 ちなみに各電力会社の持ち株比率は東電が28%。関電が18.5%中部が15%で、九電は1.5%です。九電は日本原電から電力供給は受けていないため、基本料金は支払っていません。

5.東電は債務超過の日本原電を精算へ

 東電、関電が債務保証をやめれば、その日に倒産する日本原電を電力会社が、このまま支え続けることは、問題の先送りでしかなく、先送りするごとに負債額は天文学的に増えるばかりです。
 現在日本原電を精算した場合、残る債務は数千億円あるでしょうが、問題は4原発の廃炉費用です。
 仮に日本原電が計画している東海第二原発を20年延長できたとしても、20年後には廃炉になるのですから、110万キロワット以外には発電しないのですから、20年間で4機の廃炉費用を捻出することなど不可能です。
 電力会社は1機の廃炉費用を500億円から800億円と見積もっていますが、実際には少なく見積もっても1千億円から2千億円と言われているのです。それにかかる費用は5千億円から1兆円に近い廃炉費用が必要になるのです。20年でそこまで稼げるのでしょうか。

6.発電した時と同額以上の基本料金を払う?

 東海第二原発は動く可能性は極端に少ないのですが、それでも動いたと仮定しましょう。
 すると、この原発は1時間に110万kwhの発電を行います。その電気を東電などにキロワット当たり12円で販売したとします。すると1時間に1320万円の売り上げです。24時間で3億1680万円です。1年間で定期検査に1ヵ月使うとして年間330日稼働するとします(実際には13ヵ月で2ヵ月の定期検査ですが年間で1ヵ月とは随分甘く算出しました)
 1年間では1045億円の売り上げです。何と1ワットも発電していない現在と同じ売り上げにしかならないのです。
 それでは電力会社が利益抜きの15円で買い取ってくれたとします。こんな破格の買い取りなどあり得ませんが。すると年間売り上げが1307億円です。社員の賃金が年間1人1千万円としたら116億円が消えてしまいますし、その他の経費を差し引いたら、これまでとほとんど変わらない収支にしかならないのです。
 それではいくらで買ってもらえば企業として採算ベースに乗るのでしょうか。1キロワット当たり20円で買い取ってもらうと、年間1742億円になり、年間400億円くらいの収益が見込めるでしょう。
 しかし、それでも4機の廃炉費用は積み立てられないでしょうし、そんな破格の値段で買い取ると、今度は電力自由化の中で激しい競争を強いられている東電や関電の経営に重く負担がのし掛かるし、その分を賄うために電気料金を値上げすれば、東京ガスや大阪ガスに顧客を奪われてしまう可能性が大きくなるのです。
 つまり東電や関電などは日本原電へ原発が発電した場合と同額か、それ以上の金額を基本料金という名目で日本原電へ支払っているのです。東電などが支払っている1千億円以上の「基本料金」という名の「原電支援金」は東電への税金と消費者が支払う電気料金に含まれた不当なお金の横流しなのです。
 しかし、日本原電は東電や関電に取っては金食い虫の重荷でしかなく、どう転んでも遅かれ早かれ消えて行く運命のお荷物会社でしかないのです。ですから一日でも早く会社を精算することが唯一無二の選択なのです。
 ではなぜ、東電などの電力会社は不当な無駄金を支払い続けるのでしょうか?それは「原子力ムラ」連中のなれ合いで、「最後は政府が何とかしてくれる」と期待しているからでしょう。
 今回、私が計算した「売電価格を上回る基本料金」の異常さをマスコミには追求してほしいものです。(了)
(「つゆくさ通信」脱原発大分ネットワーク 2019年5月20日発行No155より了承を得て転載)


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