[1984_06_15_01]緊急時における放射線の環境影響予測計算システムの開発_日本原子力研究所(日本原子力研究所1984年6月15日)
 
参照元
緊急時における放射線の環境影響予測計算システムの開発_日本原子力研究所

 日本原子力研究所は、原子力施設が、万が一にも事故を起こして、自然環境の中に多量の放射性物質が放出された時の防災対策として、計算による環境影響の予測を迅速に行う計算システム−緊急時環境線量情報予測システム(SPEEDI System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)の開発を昭和56年度から気象研究所等の協力を得て行ってきたが、この程実用に供し得る段階に達した。

 このSPEEDIシステムは、放射性物質の環境中への放出量及び事故の起きた施設周辺の気象観測データを入力することで、大気中での放射性物質の拡散挙動を計算し、放射性物質の空気中濃度及び人の被曝線量を予測する。
 計算された結果は、SPEEDIシステムが保有する全国14個所の原子力施設周辺の地理情報を用いて、施設周辺の地図上にカラー表示されるようになっており、防災対策に必要な情報を迅速かつ正確に提供することが出来る。
1. 開発の経緯
 昭和55年6月に、原子力安全委員会の原子力発電所等周辺防災対策専門部会(江藤秀雄部会長)がまとめた「原子力発電所等周辺の防災対策について」の報告書では、原子炉事故が起きた時の緊急措置として、環境中での放射線測定と、計算による放射線の線量の推定を行うことを勧告している。
 緊急時環境線量情報予測システム(SPEEDI)の開発は、原子力安全委員会の環境放射能安全研究年次計画(昭和56年〜60年)に従って原研を中心に行われている緊急時関連の環境安全研究のうちの一つの大きな項目となっている。

2. SPEEDIの概要
(1) システムの特長
 事故後の緊急措置としての線量評価には、計算の迅速性と正確性の2点が強く要求される。
 そのため、事故時には計算が迅速な簡易計算コードと、正確な予測のための詳細計算コード群を使いわけ、要請に応じた迅速な対応をとる必要がある。
 そこで、幾つかの計算コードの使い分けを容易に行うため、SPEEDIでは、統一的な入出力管理機能と各種の図形表示機能及び環境データベースを保有した、コード・システムとして種々の計算コードを統一的に取り扱っている。
 地域情報は、原子力施設周辺の標高、土地利用、道路、鉄道、海岸線などのデータが狭域(周辺25km)、広域(周辺100km)に分けて保存されている。
 この地域情報は、国土庁の国土数値情報を用いて全国14個所の原子力施設について整備されている。

(注)

(2) システムの構成
 図1にSPEEDIの計算の流れ図を示す。
 流れの中のそれぞれの手順は、ユーザーがそれに対応するコマンドによって会話形式で計算機とやりとりしながら進める。

(3) 図形出力例
 図2にSPEEDIの図形出力例を示す。

3. SPEEDIが用いている計算モデルの検証と性能評価
 原研では、SPEEDIの開発と並行して、緊急時関連の環境安全研究の一つとして野外での大気拡散実験を昭和55年度から実施している。また、これらの野外実験結果と計算結果との比較を行い、良く一致していることを確認している。

4. 今後の計画
(1) 緊急時における気象データ収集の検討
 大気中に放出された放射性物質の拡散・移行の予測には、適切な範囲の気象データの迅速な収集が不可欠である。
 このため、気象庁や自治体の気象観測網と、そのデータの収集方法が、緊急時に対応して利用できるかどうかを検討する。
 また、SPEEDIシステムに必要な気象データを電話回線を利用して自動的に入力する方法も検討する。

(2) メニューによる簡場入力方式の採用
 現在の入力方法に加え、更に簡易化した日本語メニューによるワンタッチ入力方式を採用する。
(注) 全国14個所の原子力施設
女川、福島第1、福島第2、東海、浜岡、柏崎、敦賀、美浜、高浜、大飯、島根、伊方、玄海、川内

図1 SPEEDI の計算の流れ図
(後略)

KEY_WORD:SPEEDI_:TSURUGA_: