[2021_04_28_07]運転開始から40年超の原発の運転 福井県同意 関電が再稼働へ(NHK2021年4月28日)
 
参照元
運転開始から40年超の原発の運転 福井県同意 関電が再稼働へ

運転開始から40年を超えた関西電力の3基の原子力発電所について福井県の杉本知事は28日、運転の延長に同意する考えを表明しました。関西電力は準備が整った原発から再稼働させる考えで、福島第一原発の事故のあと40年を超えた原発の再稼働は全国で初めてとなります。
 経年劣化のリスクなどの観点から福島第一原発の事故のあと、国内の原発は法律で運転期間が原則40年に制限されていますが、電力会社が対策を示し、原子力規制委員会の審査に通ると最長60年まで運転延長が可能です。
 福井県にある関西電力の高浜原発1号機と2号機、美浜原発3号機がこの審査に合格していて、ことしに入り地元の2つの町が再稼働に同意し、県議会も容認したため、知事の最終判断が焦点となっていました。
 これについて杉本知事は28日午前、会見を開いて、国と電力会社の対応や方針の確認のほか県としても安全性の評価などを行ってきたと説明したうえで「原発の安全性の確認、立地地域の理解と同意、そして恒久的な地域の福祉の向上について一定の評価ができると判断した」などと述べ、運転延長に同意する考えを表明しました。
 関西電力は準備が整った原発から再稼働する考えで、福島第一原発の事故のあとに原発の長期運転を制限する制度ができてから40年を超える原発の再稼働は全国で初めてとなります。
 杉本知事は当初、議論を進める条件として原発にたまり続ける使用済み核燃料を県外に運び出す「中間貯蔵施設」の候補地の提示を関西電力に求めていましたが、選定は難航していて、候補地の確定は2023年末に先延ばしとなっています。
 40年を超える原発をめぐっては、国は最大25億円を自治体に交付する新しい交付金制度を検討するなど活用を後押しする方針です。

長期運転の原発 収益性あがる場合は利用も

 運転開始から年数がたった原発については、安全対策にコストがかかりますが、電力会社は長期に発電をすることで収益性があがる場合には利用を選択するケースがあります。
 現在、原子力規制委員会の40年を超える運転の審査に申請し、合格した原発は、28日に福井県知事が再稼働に同意した関西電力の高浜原発1号機と2号機、美浜原発3号機のほか、茨城県にある日本原子力発電の東海第二原発の合わせて4基があります。
 東海第二原発は、地震や津波に備えた対策工事が続いているほか、地元の同意が得られておらず、再稼働のめどはたっていません。
 このほか、昭和59年(1984年)に運転を開始した鹿児島県にある九州電力の川内原発1号機や、昭和60年(1985年)に運転を開始した福井県にある関西電力の高浜原発3号機を含め、現時点で運転を開始してから30年を超えている原発は合わせて11基あります。
 この11基についても、電力各社は今後、40年を超える運転延長の審査を申請するのか廃炉を選ぶのか評価して決めることになります。

原発の運転期間 原則40年に制限のルール

 原発の運転期間を原則40年に制限するルールは、経年劣化など古い原発のリスクを抑えるべきだとする当時の民主党政権の方針を踏まえ、福島第一原発の事故のあと2013年に法律を改正して導入されました。
 電力会社は40年を超えて原発の運転を計画する場合、特別な点検を行ったうえで、原子力規制委員会による審査に合格することが求められます。
 特別な点検は、原子炉の部材の劣化や、格納容器のコンクリートの状況などを確認するもので、点検の結果を踏まえて規制委員会が健全性を審査します。
 高浜原発1号機と2号機、美浜原発3号機はいずれも5年前の2016年に運転延長に必要な、この審査に合格しました。
 また、審査に合格しても10年ごとに設備の経年劣化の進み具合を評価することが電力会社には求められます。
 原発事故の前、長期運転をする原発については30年を超えた時点で配管の厚みが減ったり、ひび割れを起こしたりしていないかなど、安全上重要な設備の劣化状況を評価することが電力会社に求められていました。
 そのうえで、メンテナンスの方針を盛り込んだ保守管理計画を作り、10年ごとの更新が義務づけられ、当時の規制当局の原子力安全・保安院が確認を行っていました。
 こうした10年ごとの確認の仕組みは、原発事故後も継続されています。
 原発事故の前の2011年1月に、福井県にある日本原子力発電の敦賀原発1号機が40年を超えて、40年と10か月運転をしたケースがあります。
 原子力関連の企業で作る団体、日本原子力産業協会によりますと、原発をできるだけ長く運転しようという試みは海外で先行して行われていて、たとえばアメリカでは経年劣化の対策などを前提に、最長80年まで運転を認めています。

専門家「技術的に問題ないが 地元に説明を」

 旧原子力安全・保安院で検査を担当するなど、原発の安全性に詳しい政策研究大学院大学の根井寿規教授は、40年を超える運転について「原子力規制委員会は、40年を超える運転延長の認可をする際、国際的な技術標準だけでなく福島第一原発の事故を踏まえて相当厳しく審査を行っていて、技術的に問題はないと思う」と話しています。
 その一方で、40年を超える運転が原発事故のあと初めてとなることから、関西電力には安全側に立った丁寧な対応が求められるとしたうえで「技術的に基準を満たせばいいというわけではない。関西電力は毎回の定期検査で配管のすり減りや設備の劣化などを確認し、ギリギリではなく余裕を持って取り替えるなどの取り組みを当然やるべきだ。また、異常にならなくても、何か気になることがあれば、きちんと公表をして地元に説明することが求められている」と述べました。
 そして根井教授は、2019年に関西電力の経営幹部らが原発が立地する福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取る金品受領問題が明らかになったことなどにも触れ「関西電力は不祥事も踏まえて、地元の信頼をきちんと再構築して、丁寧に運転管理をしていく必要がある」と指摘しました。

NPO「40年超えた原子炉の内部は経年劣化」

 原子力政策に提言を続けてきたNPO法人 原子力資料情報室の山口幸夫共同代表は「40年を超えた原子炉の内部は核分裂反応で発生した中性子に長い間さらされ、金属の性質が熱に対して弱くなるなどの経年劣化が起きることがこれまでの知見でわかっている。これにより懸念されることは、内部で急激な温度の変化が起きた場合、破損するなどのリスクにつながりかねないことだと考えている。このため、事故やトラブルで原子炉に緊急で水を入れるという事態は避けないといけない。そういった意味で関西電力は原発を再稼働すべきではないし、仮に再稼働したとしても出力をできるだけ抑えつつ、異常が起きないよう厳しく監視しながら運転すべきだ」と指摘しています。

共産 穀田国対委員長「平然と同意に憤り感じる」

 共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で「原発事故から10年という節目に、まるで事故がなかったかのように平然と運転延長に同意することに対し憤りを感じる。この間の電力会社のさまざまな不祥事や司法の判断、国民の世論を無視した暴挙としか言いようがない」と述べました。

高浜町長「安全第一に運転を」

 運転開始から40年を超える関西電力 高浜原子力発電所1号機と2号機の再稼働に福井県の杉本知事が同意したことを受けて、原発が立地する高浜町の野瀬豊町長は「町の再稼働同意の判断から間があいたが安堵している。福島の原発事故のあと10年近く停止していた原発を動かすことになり、まずは安全第一に運転をしてもらいたい」と述べました。

市民団体など 同意撤回を求め抗議

 運転開始から40年を超えた関西電力の3基の原発について、福井県の杉本知事が再稼働に同意したことを受けて、福井市にある県庁前には反原発の活動を行っている市民団体のメンバーなどおよそ30人が集まり、同意を撤回するよう求めました。
 「老朽原発を動かすな」などと書かれた横断幕やプラカードを掲げて「地元同意を取り消せ」などと、シュプレヒコールをあげて抗議の姿勢を示していました。
 「オール福井反原発連絡会」の林広員さんは「知事が再稼働に同意したことは非常に残念です。老朽原発の再稼働を不安に思う県民はたくさんいます。安全性をしっかりと説明する場を設けてほしいです」と話していました。
KEY_WORD:40年超運転_:TAKAHAMA_:FUKU1_:TSURUGA_:MIHAMA_:SENDAI_:TOUKAI_GEN2_:MUTSU_RECYCLE_: