[2017_03_30_04]破綻する日本原電、東海第二原発再稼働の論理 稼働38年のオンボロ原発 植田泰史(非核活動家)(たんぽぽ舎メルマガ2017年3月30日)
 
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破綻する日本原電、東海第二原発再稼働の論理 稼働38年のオンボロ原発 植田泰史(非核活動家)

 目次
 1.日本原電のもくろみ
 2.露わになる「原子力安全協定」(以下「安全協定」)の不備
 3.日本原電の姿勢の変化 6市村懇談会案浮上
 4.「水素爆発まで23時間、通常の避難は間に合わない」
              (3月24日朝日新聞茨城版)
 5.那珂市の住民アンケート調査で「再稼働反対」は65%
              (3月24日朝日新聞茨城版)
 6.日本原電、東海第二原発のみに再稼働、企業再建を託す

1.日本原電のもくろみ

 日本原電(株)は敦賀1号炉(廃炉決定)、2号炉(直下に活断層、ほぼ廃炉)、東海第二原発を持つ、「電力卸会社」です。筆頭株主は東京電力で、電事連9社が株主です。
 敦賀1,2号炉再稼働が絶望になった中、日本原電は唯一の生き残り策として、「東海第二原発の再稼働」を画策しています。
 東海第二原発(電気出力110万kw/h)は、東日本大震災の「被災原発」で、地盤が東に1.2m、下方に0.2m移動しました。稼働以来38年余が過ぎ、日本原電は40年の「年季」(2018.11)が来る前に、再稼動させたいと画策しています。今年が山場と言われています。再稼働されれば、関東地方にある、日本最古の原発ということになります。

2.露わになる「原子力安全協定」(以下「安全協定」)の不備

 3.11福島第一原発事故(以下「F1事故」)以後、「原発事故は起こりうる事故」政府も、電力会社も認定するようになりました。
 日本原電は従来、茨城県と東海村2自治体のみと「安全協定」を結んで「よし」としていました。東海村という小さな村に原子力立地交付金を投下するのは簡単だったからです。10億円程度の金で、東海村を買収していた、といえなくもありません。
 F1事故以後、新たな危険地域として、PAZ(原発5km圏、放射性物質が放出される前の段階から予防的に避難等を開始する)、UPZ(原発5から30km圏、予防的防護措置を含め屋内退避などの防護措置を行う)が問題地域と公認されました。
 東海村は東西に細長い村(約4.5km)で、南北長(2−3km)は僅かです。PAZを最悪の避難地域と考えると、東海村だけでなく、日立市久慈町・留町、ひたちなか市長砂地区、那珂市の一部を含んでしまうことになります。
 日本原電は、東海村”買収”だけではなく、少なくも隣接するPAZ日立市、ひたちなか市、那珂市にも買収の手を伸ばさなければなりません。しかし、電力卸として5年余発電していない日本原電には新規”買収”の力はありません。
 東海村に隣接するのは日立市(北)、ひたちなか市(南)、那珂市(西)、常陸太田市(北西)、水戸市(南西)などです。これまでこの6市村の首長が、6市村「首長懇談会」(東海村を含む)をつくり、東海村と同等の権限を求めています。
 日本原電は、「これら隣接5市に」東海村を通して意見を言う権利を認め、同等の権利付与を、当然ながら、拒否(昨年12月26日ゼロ回答)してきました。
 さらにUPZにあたる15市町村が、日本原電への関与(6市首長懇談会を含む)を求めています。

3.日本原電の姿勢の変化 6市村懇談会案浮上

 3月25日(土)茨城新聞(26日朝日新聞茨城版追認記事)によれば、日本原電は、従来の安全協定を見直す姿勢を見せたということです。従来の安全協定では、茨城県が甲、東海村が乙、日立市、ひたちなか市、那珂市、常陸太田市、水戸市は「丙」扱いでした。
 「丙」である5市は東海村を通して発言を認めるというものでした(丁は日本原電です)。 簡単に言えば「丙」は今まで意見は言えるが、何もなしえない無権利状態だったのです。
 新しい案では、東海村と同等の権利を周辺の5市(安全協定では「丙」)にも認めるということのようです。さらに、東海村を含めた6市村の「首長懇談会」とも交渉する、という内容です。
 これは、F1事故を考えれば当然です。ただし、6市村懇談会に、東海村と同様の権利を与えるかどうかは、不鮮明です。
 日本の原発政策は、立地自治体として小さな村や町と県のみを対象としてきましたが、日本原電は10数km圏の自治体と交渉せざるを得ないところまで来ています。従来のように、小さな原発立地自治体に法外な交付金に流し込んで麻薬中毒状態にするのは不可能になるかもしれません。
 今夏、東海村長選挙、今秋茨城県知事選挙があり、動きは加速しそうです。
 ちなみにPAZに含まれるのは3月24日朝日新聞茨城版では、東海村全域(3.6万人)、日立市南部(2.8万人)、ひたちなか市北部(1.5万人)、那珂市東部(0.9千人)。ご存知の通り、UPZ(30km圏)内住民(ほぼ茨城県)は約96万人で、想定避難者数は日本一で、事故があれば東京から避難する人も多数になるはずです。
 東海第二原発は首都圏直結型原発で、1年稼働すると、広島原発千発分の放射能毒物をつくり出す力があります。

4.「水素爆発まで23時間、通常の避難は間に合わない」
            (3月24日朝日新聞茨城版)

 東海第二原発の事故の際、水素爆発までは23時間(F1事故の例)で、23時間以内にPAZ住民を避難させるには特別の措置が必要と茨城県は考えています。
 朝日新聞が情報公開条例にもとづき、県が2014,15年に実施した避難シミュレーション結果を入手しました。報道によると、日中、自家用車に2.5人がのり、PAZの8万人、UPZの約6割が避難した場合、東海村民が圏外にでるのに29時間、日立市民28時間、ひたちなか市民27.5時間かかると判明しました。地震等の複合災害は考慮していません。
 茨城県は、解決策として、高速道路のインターチェンジの下り車線を閉鎖して、上り車線専用にする(逆行させる)、交差点を避難重視(東海村から離れる車を優先通行させる)する、などが必要としています。この措置に茨城県警や高速道路会社がどう対処するか、検討中で答えは出ていません。
 6年前の東日本大震災(茨城県北部、中部は震度6強)で、那珂川にかかる橋の半数は、落下の危険性が生じ、通行不可になりました。高速道路は盛り土のために各所で崩落し、1週間程度不通になっています。通常道路も各所で地割れ、崩落が発生し、通行できなくなっています。またガソリンと水不足、停電のため、車での移動、食糧獲得、洗濯、入浴が不可能でした。避難車のガス欠、故障、事故などは考えられていません。情報管理も全くいい加減なものでした。

5.那珂市の住民アンケート調査で「再稼働反対」は65%
               (3月24日朝日新聞茨城版)

 日本原子力発電東海第二発電所の再稼動について、那珂市は市民2千人に調査票を郵送、983人(49.15%)の回答を得ました。
 初めて東海第二原発再稼働について聞いたところ、「反対」「どちらかと言えば反対」が約65%、「賛成」「どちらかと言えば賛成」(併せて約20%)を上回っています。海野徹市長は「重く受け止める」と述べました。那珂市は東部の一部がAPZに、全域がUPZに含まれる街です。

6.日本原子力発電(社員約1100人)敦賀原発再稼働が絶望視されるなか、東海事業所(従業員約360人)、東海第二原発のみに再稼動、企業再建を託しています。

 しかし、再稼働すれば、110万kw/hの電力と300余人の雇用を得るため、96万人が不慮の事故時の退避・避難準備を余儀なくされのです。避難、退避はこれまでの生活基盤の喪失、財産や健康の全喪失につながっています。
 電力不足は既に解消され、日本原電の存続理由は「雇用」しかありません。300余人の雇用のため、96万人に避難計画を立てさせるというのは、資本主義の倫理上でも許されず、理不尽極まりないものです。(了)

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