[2016_10_08_16]美浜町議会(2016年6月)一般質問・河本猛 「連続地震と原発事故、その対応や対策について」 (河本猛_美浜町議会議員_ブログ2016年10月8日)
 
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美浜町議会(2016年6月)一般質問・河本猛 「連続地震と原発事故、その対応や対策について」


1、連続地震と原発事故、その対応や対策について

河本

 日本共産党の河本猛です。
 質問に入る前に、熊本地震の犠牲者に哀悼をささげ、被災者にお見舞い申し上げます。
 4月に震度7を観測し、その後も連続して強い揺れを伴う地震が発生した熊本県の連続地震。この連続地震は、活断層型の内陸地震であり、周囲一円を活断層に囲まれた敦賀半島でも起こる可能性が高い地震であります。美浜町には関西電力の「美浜原発」があり、同じ敦賀半島に「高速増殖炉もんじゅ」、廃炉研究が進む「ふげん」、日本原電の「敦賀原発」が存在しています。
 活断層型の内陸地震によって原発事故を誘発した場合の原子力複合災害は、住民の健康、生命、財産、人間がこの美浜町で根をおろし生活するという権利、生存権、人格権を破壊するものです。それは美浜町民だけでなく、周辺自治体に住む広範囲の住民にとっても同じであり、原発の存在は身近に存在する危険であり、脅威であり、リスクであります。そこで、連続地震と原発事故、その対応や対策について伺っていきます。
 日本は、世界の面積の1%にもならない国であるのに、世界で起きている約10%の地震が日本で発生しています。体に感じない小さな地震まで含めると、いつもどこかで地震が発生している状態です。
 熊本地震は、活断層によって連続地震が引き起こされました。活断層に囲まれた美浜町、敦賀半島でも、熊本県で起きた連続地震が起こる可能性が高く、美浜町、敦賀半島で連続地震が発生しないとは言い切れないと思います。
 以前にも、地震についての認識を伺いましたが、美浜町で連続地震が発生しないと言い切ることはできるのか、町長の認識を伺います。

町長

 熊本地震、大変な地震が発生して、収束に向かいつつありますけども、大きな被害を受けておられます。今、復興に向けて取り組んでおられるわけでございますが、これは議員も先刻御承知のとおり、福島での事故以後、原子力の安全につきましては基準や、あるいはそれに基づく確認等は、原子力規制庁と規制委員会が独立した組織として、国として認められました。そして設けられまして、政府もその判断に従って再稼働等の政府としての判断を行うというふうにされております。また、田中規制委員長は、大津の裁判がございましたけども、その後も新規制基準を見直す必要はないということを明言されております。
 そういう上に立ってのお答えなんですが、地震の発生のメカニズムは、地域によって地盤や地質構造も異なりますし、活断層の分布や、その近接する状況など一様でないということは、もう議員仰せのとおりです。いろいろあるわけでございます。そうした意味において、原子力発電所に適用される新たな規制基準においても、最新の科学的知見を踏まえまして、影響を考慮する必要のある活断層は、その長さや連動性などを綿密に調査を実施し、評価が行われ、その上により厳しい地震が発生することを考量して、十分余裕を持った備えがなされているものと認識いたしております。
 美浜発電所も750ガルから993ガルに、その基準地震動が決められました。したがって、私はその判断のもとに、原子力に対する議会や町民の理解を得るべく努力をいたしております。今、地震に対しての町長の見解はどうなんだということに対しましては、地震を含む基準の判断には、規制委員会が十分事業者と打ち合わせをされて決められたことに対して、我々として新たな判断を下すというような技術的な、日本トップの技術集団が判断されて決めておられるというふうに思いますので、殊に実施に関してはお答えする立場にはないというふうに思ってますし、一町としてそういう技術的な集団も持っておりませんので、お答えできないというのがこの御質問に対するお答えでございます。

河本

 町としては答えることができない。そうすると、(原発の安全に関する)判断自体も町としては行うことができないということに等しいと思います。
 日本において地震の観測が開始されたのは1885年からです。まだ130年余りしかたっていません。地震の全容を解明するには、まだまだ観測データが不足しています。その上でも、地震が発生しないとは言い切れないわけでありまして、人類は太古の昔から地震の発生を完全に否定することも、予知することもまだできていません。地震に対する備えや対策も不完全であります。
 そんな中、活断層による連続地震が実際に発生したんですから、実際に起きた災害を教訓として、最新の地震研究をもとに対策・対応を強化していかなければいけません。
 熊本県の連続地震では、耐震補強したばかりの施設が損傷し、避難場所として使用できないということが発生しました。住民からは、国の耐震基準は役に立たないなどの声が出ています。熊本地震のような連続地震が原発を襲った場合、現在の新規制基準や基準地震動に基づいた耐震補強工事だけで、美浜原発は安全と言えるのでしょうか。町長の考えを伺います。

町長

 原子力施設の建物等は一般の建築物とは異なりまして、想定している地震の規模を厳しく設定するとともに、揺れが少ないかたい地盤に設置させておりまして、高い耐震性を有していると理解いたしております。また、原子力規制委員会では、新規制基準の審査において、敷地に対して影響が大きい検討用地震が選定されまして、各種の不確かさを考慮しつつ基準地震動が策定されていること、また、震源を特定せずに策定する地震動について、適切に評価されているかが確認されております。
 なお、熊本県では2回大きな地震がありまして、これも十分議員御承知やと思うんですが、一番初めにあった大きな地震、これは通常本震かなと思っていたわけですが、その後に大きな地震が来まして、前震と本震ということで、その後余震も長期にわたったわけではございますが、原子力は機器の耐震設計に当たっては繰り返しの荷重にも耐えられる設計が基本とされております。繰り返し来ることも設計が組み込んでおるということでございます。また、その知見を生かしていくべきやという議員の一つの御提案、熊本県のようなことを生かしていくべきやということに対しては、原子力規制委員会では新規制基準は既に世界最高レベルの基準であるとしておりますけれども、それでおしまいというわけではなくて、新たな知見等については、今後、反映していくということで、もし熊本地震から新たな知見が得られれば、また規制委員会のほうでそういう検討がなされるものと理解いたしております。

河本

 原子力規制委員会の田中委員長は、新規制基準を満たしたからといって原発は安全とは言えないと言ってるんです。安倍総理が言う世界一安全基準というこの言葉は、政治的な発言だと言っています。
 規制委員会の委員長が、新規制基準を満たしていたとしても原発は安全とは言えないと言っているんですから、新規制基準に合格して運転延長の認可が出たとしても、原発の安全は確立されていないわけです。
 熊本県では震度7、震度6レベルの地震が繰り返し発生しました。原発が震度7、震度6レベルの地震を繰り返し受けた場合、基準地震動に対して弾性範囲を超えて、安全上重要な機器が直接疲労して、安全機能が保持されない事態を起こします。物体に力を加えたときに、力を加えるのをやめればもとに戻る場合を弾性範囲にあるというんですけども、加える力が弾性範囲を超えると、力を抜いて取り除いたとしてももとに戻らなくなる塑性変形を起こします。要するに安全上重要な機器が、塑性変形によって安全機能が保持されない事態を引き起こすと言っているわけですけども、町長は原発が震度7とか震度6レベルの地震を繰り返し受けた場合、原子炉や機器類、配管などへ及ぼす影響をどのように考えておられるのか。

町長

 先ほどにもお答え申し上げましたように、原子力規制委員会では新規制基準の審査において、敷地に対して影響が大きい検討用地震が選定されておりまして、各種の不確かさを考慮しつつ、基準地震動が策定されていることが確認されております。また、機器の耐震設計に当たっては、繰り返しの荷重にも耐えられる設計を基本としているなど、世界で最も厳しいと言われる基準で審査がなされております。
 今、田中委員長も、全く事故が起こらないということは言えないという発言をされました。それはどういう背景のもとに言われたか、私は全て委員長のあれをしておりませんが、この世の中にリスクゼロということが言えないという意味のことを言われたんではないかなと私はとっております。しかし、考えられるリスク除去はもう全てとっておると。今回の竜巻であるとか、津波であるとか、そういうものに対しても、また基準地震動の大きさからしても、考えられるものは全て対応しておるという新基準であるがために、地裁の判決があっても、自信を持って今の基準は変える必要がないんだと言っておられるんではないかと理解をいたしております。

河本

 関西電力の評価でも、美浜原発で基準地震動に対して弾性範囲を超えてしまった機器が多くあると思うんです。(美浜原発は、)弾性範囲に余裕がある状態とは言えないと思うんですけど、原発の疲労評価では、熊本地震のように繰り返し強い地震に見舞われるということを想定しておりません。
 原発の耐震性に関する評価ガイドは、基準地震動に対して弾性範囲であることを求めていません。基準地震動の半分を下回らないように定める地震動に対して、ということで993ガルの半分なんで496.5ガルということになるんですけど、それをおおむね弾性状態にとどまる範囲で耐えるということを求めています。部分的に弾性範囲を超えることが許されるという、これは甘い評価基準なんですよ。
 美浜原発の基準地震動は993ガルといっていますが、(原発の耐震性に関する評価ガイドは、)この半分でいいということになってるんで、これは過小評価だと指摘しなければいけません。
 通常、安全上重要な機器が基準地震動に対して弾性範囲を超えている場合、力を繰り返し受けることによる材料の疲弊を評価して、安全強化が保持できるかを確認しなければいけません。この場合、力のかかる回数が評価に直接影響してきます。
 原発の疲労評価は、熊本地震のように繰り返し強い地震に見舞われることを想定することが必要ですし、また、対策を求めていくべきだと思いますが、町長はどう思いますか。

町長

 非常に技術的な、学問的に非常に高い判断を要しなけりゃならない御質問かなというふうに思っております。一番当初には地震動の波形を説明を受けて、お聞きいたしておりますが、今、議員の御質問のようなことに対して、今の私の明確な回答をする資料を持っておりませんので、その件に関してはもし、後ほどまたお聞きをして、委員会の御質問、あるいは専門家の意見をお聞きする必要があるんかなというふうに思っておりますが、今、お答えできる立場にはございません。

河本

 こういうこともしっかり調べて判断していくということは、非常に大事なことやと思うんです。そうじゃないと、責任ある対応が住民に対してもとれてないということになってしまいます。

 被曝と、屋内退避を前提としている避難計画についてお聞きします。
 連続地震の発生により、屋内退避そのものができない状態になることが熊本地震から学ぶべき教訓であります。
 連続地震により原発が事故を起こして原子力複合災害となった場合、連続地震により避難場所として設定していた施設が損傷して、避難できないことが想定されます。
 熊本県では多くの被災者が、「余震が怖くて家に戻れない」と車中泊を余儀なくされ、屋内退避の方針の矛盾が浮き彫りになりました。
 連続地震と原発事故による原子力複合災害が発生すれば、屋内退避を前提としている避難計画では全く対応できず、被曝から逃れることはできません。
 熊本県の連続地震を教訓にすると、屋内退避を強いる現在の2段階避難は破綻しているとしか言えませんが、行政の考え方を伺います。

町長

 今、議員は熊本県の地震のように地震が起きて、仮に熊本県に発電所が建っていたらというような想定での御質問かなというふうに思っております。避難計画では対応できないということを申されましたけども、避難計画ではそういうことも想定して立てておるということでございますんで、その詳細については担当課長からちょっと御説明申し上げたいというふうに思います。

エネルギー政策課長

 地震等による家屋に居住ができなくなった、そういう場合において屋内退避が必要な原子力災害というものが起こった場合を想定いたしまして、原子力規制庁のほうでそういった対応についても整理をされてございます。
 まず、地震等により家屋が住めなくなったという状況におきましては、当然、一般災害、地震災害等において町は避難所というものを指定してございますので、そういったところにまずは避難をいただくということになるかと思います。そういった中で原子力災害が発声して、避難であったり、あるいは屋内退避、そういう状況が生じた場合でございますけども、これはPAZ、いわゆる5キロの範囲につきましては即時避難ということになりますので、県内のおおい町、あるいは大野市、そういったところを広域避難場所ということで指定してございますので、そちらに避難をするということになるかと思います。
 そういった中で、いわゆるUPZ、30キロの範囲ということになるわけですけども、避難所に滞在可能なというようなことであれば、そこで屋内退避をいただくということになります。また屋内、その避難しております場所について困難であるということであれば、近隣の安全な避難所、そちらへ移っていただくというような対応になるかと思います。
 そうした中で、さらに余震、今、おっしゃられてるような繰り返しというようなことで、その被災の状況がさらに激しくなるというようなことで、屋内退避ができなくなるということも想定いたしまして、UPZの場合については、当該の別の指定する避難所等へうつるということで、引き続き屋内対応をできるかというふうに思いますし、また、全部そういう施設がない、あるいは建物もないというような、そういうような状況であれば、当然先ほども言いましたけども、大野市であったりおおい町そういったところの避難先に避難というよりも、地震での避難ということでございまして、原子力災害においては、今、おっしゃられておりました屋内退避という状況という意味において、そちらに避難いただくということになるかというふうに考えてございます。
以上です。

河本

 私が質問してるのは、原子力複合災害の場合にどうなのかということを聞いてるんです。原子力複合災害を想定した場合は、全く対応できないですよ。
 原発が事故を起こしてるときに、複雑な作業や手続をして、この避難施設がだめになったから別の施設に移動してくださいなんていうことが、現実に可能だとは思えません。
 広域避難については、空間線量が毎時500マイクロシーベルトになって広域避難が開始されるわけです。空間線量が500マイクロシーベルトもある状態で何十時間もかけて避難してたら、健康や身体に害を及ぼす被曝をしてしまいますよ。
 毎時500マイクロシーベルトというと通常の1万倍の放射線ですから、広域避難が開始されたら美浜町に帰れる保証もありません。そんな危機的なレベルなんです。住民の生命を意図的に危険にさらすような避難計画は絶対に許すことはできません。
 町行政は熊本地震を教訓にして、現在の避難計画が機能するのか再検討すべきではないですか。検討されているんですか。

エネルギー政策課長

今おっしゃられたことについては、必要に応じて検討し、今の防災計画等へ反映していくということになるかと思います。それにつきましても、国の計画、あるいは県の計画、そういったものと整合をとるということが前提でございますので、そういった中で町の防災計画等についても、必要な部分については改定していくということになるかと思いますので御理解いただきたいと思います。

河本

 何か国任せとか、県任せみたいなところが見えてしようがないんです。やっぱり町がどうするかということをしっかり打ち立てて、それで県や国に対して物申していくということも必要なんですよ。そういうことをやっていかないと住民に責任ある行政とは言えない。
 放射線の大量放出があるような重大事故が起きた場合、民間のバスが緊急輸送で出動してくれるのかということについて疑問に思ってるんですが、まず、緊急時に美浜町内だけで何台のバスが必要になってくるのか伺います。

エネルギー政策課長

 国のほうでは、平成25年9月に原子力防災会議におきまして避難計画作成を支援する方針を決定してございます。内閣府の原子力防災の担当では、同方針に基づきまして、原子力発電所がある地域ごとに13の地域原子力防災協議会を設置いたしまして、関係道府県市町村の地域防災計画、避難計画の充実化を支援するというような取り組みが行われてございます。現在、県内におきましては高浜地域の詳細な避難計画を含めた緊急時対応を策定し、国の原子力防災会議等において報告、了承されておるというような状況でございます。
 現在は、大飯地域の今申し上げたような緊急時の対応について検討がなされてございます。そういったことで、今後、この美浜地域においても、内閣府の支援のもとに地域原子力防災協議会におきまして、議員御指摘の福祉車両であったりバス、そういったものの必要台数を含めた詳細な避難計画を策定するということになってございますので、御理解いただきたいと思います。

河本

 策定をするということで、まだ何も決まってないということなんですね。
 自然災害や過酷事故というのは、平穏な日常から突然発生するものなんです。誰もが災害や過酷事故を体験した後に、こんなはずではなかったと思うものです。通常、営業運転を行っている民間事業者が、緊急時に対応できる余剰人員や余剰のバスをあらかじめ用意してるとは思えないんです。原発事故を想定して人員を配置したり、バスを待機させて体制を整えている民間のバス事業者なんてないと思うんです。いたら教えていただきたいんですけど、そういう事業者というのはありますか。

エネルギー政策課長

 いろいろと民間のバス協会等の協力をいただくというようなことで、御理解いただいてるというふうに考えてございます。ですから、特定の社ということではなくて、県、あるいは国を通じながら、そういったところの協力を求めていくということだと考えてございます。

河本

 民間のバス事業者が協力してくれることになっていたとしても、事業者は運転手に対して放射能を浴びて、生命、身体に危険や害を及ぼす業務を命令することは、これはできないんです。
 労働契約法5条に、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と記載されてます。これは安全配慮義務なんですけども、労働者は業務に伴う通常の危険を超える生命、身体に対する危険がある業務命令は拒否することができるという判例もあります。
 バスの運転手に対して生命、身体に危険や害を及ぼす、被曝を伴う危険がある業務を命令することは、通常の危険を超える生命、身体に対する危険がある業務命令と言わざるを得ません。
 それについて、県はバスの運転手に出勤要請ができる一定の基準を設けてると思うんですけども、その放射線量の限度は幾つですか。

エネルギー政策課長

 国のほうでは、民間企業の運転手等につきましては、放射線業務従事者であったり、防災業務関係者とは異なります。そういうことで、一般公衆の被曝線量管理の考え方の適応が適当であるというふうにされてございます。そういうことで、運転手等の被曝線量の管理の目安は、ICRP勧告における平時の一般公衆の被曝線量限度でございます1ミリシーベルトが基本とされてございます。
 それで管理の目安を超えて被曝することがないように、運転手等には防護服や個人線量計等の装備を提供するということになってございますし、運転手等の雇用者については、個人線量計による被曝線量が1ミリシーベルトを超えないよう管理するというふうにされておるところでございます。
 また、放射線であったり、放射線防護について、知識の取得をということが重要であるということで、規制庁であり、県とか町がそういった研修等の機会を提供するということになってございます。
以上でございます。

河本

 1ミリシーベルトということなんですけど、何も防護対策しなければ、広域避難が開始されてから2時間ぐらいですか。1ミリシーベルトを超えて被曝を伴う危険がある業務を命令することは、先ほども言いましたように通常の危険を超えて生命、身体に対する危険がある業務命令でありますから、労働者みずから生命と健康を守るために、これは就労を拒否することができることになります。また、使用者も労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるように必要な配慮をすることができない場合、安全配慮義務違反になるわけですから安易な業務命令はできないことになります。
 連続地震と、原発事故を伴う原子力複合災害となった場合の影響ははかり知れません。広域避難が開始されるような数時間で1ミリシーベルトを超える放射性物質の大量放出があるような重大事故が起きたら、現実には民間業者のバスが緊急輸送で出動することはないんじゃないか。広域避難のバスは迎えにこないんじゃないですか。どうなんですか。

エネルギー政策課長

 民間企業等からの移送支援が得られないというような場合につきましては、そういうことで搬送能力が不足する場合につきましては、知事からの要請に基づいて国の防衛省、あるいは警察庁、消防庁、あるいは海上保安庁等が対応するというふうにされてございます。また、民間企業等から提供された車両がある場合、そういった場合で運転手が手当てできないというようなことも想定があるかと思うんですけども、そういった場合には、国は自治体の要請に基づいて、各省庁の大型免許を有する者の派遣であったり、その車両の提供を受け、先ほど申し上げた防衛省であったり、警察庁、消防庁、そういった省庁が対応するということも、今、検討されておるというところでございます。

河本

 民間のバスが何台かとか、そういうこともまだ具体的には決まってない状態でありますけども、絶対来るという確証とか、どこのバス会社の誰が来てくれるのかとか、そういうことが明確にされていないと、現実的にそれを当てにすることというのはできないんです。現時点での広域避難計画の破綻を認めるべきですよ。
 放射性物質の大量放出があるような重大事故が起きた場合、先ほど公務員のことを言われてましたけど、公務員である町の職員も被災者であり、家族を守らなければならない人がほとんどだと思います。
 町の職員も20マイクロシーベルトから500マイクロシーベルトと空間線量が上がっているときに、支援活動など、役割分担に基づいて業務命令が出されると思いますけども、町の職員が業務命令を拒否して避難する選択をすることが可能なのかどうか、伺います。

町長

 町の職員は、この原子力災害にかかわらず、一般災害、これは非常に大きな役割を担うことになります。今、御指摘のような原子力事故、あるいは熊本県のような地震が起きた場合は、災害対策本部を役場に設置して住民の皆さん方を安全に避難させる、あるいはさっき言われたようにもう家が潰れて住めない方の避難場所を確保するというようなことを初め、食糧の需給から避難先の確保、いろいろ出てきますので、非常に重い任務を持っておると。これは原子力災害にかかわらず、そういう責務を持っておるんだというふうに思っております。
 したがいまして、町がいろいろ計画を定めております。また、一般災害の場合、自分の家が潰れたということも考えられるわけです。私は、そういう機会には、それは全町的に災害があった場合、役場に災害対策本部を立てないと多くの人民を救うことができないわけでございますから、特に幹部はすぐ招集、集まってほしいというお願いを日ごろから話をいたしております。それは人情的には、自分の家が潰れた、家族が下になっとるというのは助けたいということがあるわけですが、そこら辺は非常に、神戸震災のときに芦屋の市長からそういうことを学びまして、自分はこういうことをとったんだと言われておりますので、私もそういう思いでおります。しかし、現実に自分が下になって来れん場合もあるわけでございますが、そういうこと考慮しながらやっていかなけりゃならんと、非常に町の職員は重い責任を持っておるというふうに思ってます。
 今、議員お尋ねの原子力災害については、ある程度要綱を決めておりますんで、また担当課長から若干説明を申し上げたいなというふうに思います。

エネルギー政策課長

 町の原子力災害対策計画においても、防災業務関係者等の安全確保について触れてございます。町職員等の防災業務関係者が被曝する可能性のある環境のもとで活動する場合には、適切な被曝管理を行うということにしてございます。また、県の指示を受けて、必要に応じ防災業務関係者に対しては防護服、あるいは防護マスク、線量計と防護機材の装着であったり、安定ヨウ素剤の配布等、必要な措置をとるということにしてございます。
 県の地域防災計画の原子力災害対策編における防災業務関係者の放射線防護に係る指標につきましては、原子力災害対策指針に示す防護措置に基づきまして、実効線量は50ミリシーベルトを上限としてございます。その値になったとき、またこの値になるおそれが生じたときには、被曝の可能性のある場所での原子力防災業務に従事することを禁止するというふうにしてございます。
 町では、町の職員に対しましては、その放射線、あるいは放射線防護に関する研修を受講させるというようなこともしてございます。放射線に関する知識を取得する等の対策を、今後ともに実施をしていきたいというふうに考えてるところでございます。

河本

 原子力災害というのは、一般災害と比べ物にならないぐらいの本当に深刻な問題ですよ。公務員であっても、生命、身体を危険にさらして健康に害を与えるような業務命令はできませんけども、生命とか身体とか人権にかかわる重要な問題なので、これは安全配慮義務を果たせばいいというものではありません。
 被曝を強いるこういう破綻した避難計画に従うのではなく、民間であれ公務であれ、現実的に実効性のある避難計画になっているのか、本当に被曝から身を守ることができる状況になっているのかというのをしっかり見きわめた上で、それが達成されていなかったら、自分の身体、生命を守るために避難をするという選択を認めていくべきだと思うですけど、そういう考えというのは全くございませんか。

エネルギー政策課長

 避難を認めていくというのは、防災業務従事者たる町の職員等の避難というおっしゃられ方でございますか。先ほど町長が考え方の中で、当然、防災の対策に当たりましては住民の生命、財産を守るというのは、我々公務員に課せられた務めであるというふうに考えてございます。そういった中で対応が必要だというふうに考えてございます。
 そのためにいろんな放射線なり、あるいは放射線防護対策、そういったところの理解を深めるということがまずは必要だというふうに考えてございますし、防災計画、こういったものをもとに訓練等もする中で、いろんな防災の知識等もつけていくということも必要ですし、そういった中でいろんな改善であったり工夫、そういったことも生まれてくるというふうに考えてございます。そういった中で原子力防災に対する対応であったり、職員の心得、そういったものが生まれてくるというふうに考えてございますので、よろしくお願いいたします。

河本

 公務員の置かれてる立場というのは、ものすごく大変な立場に立たされてるなというのは感じます。原発というのは、人権にかかわる重要な課題を抱えております。原発事故というのは、立地自治体の範囲を超えて、広範囲の住民も巻き込み、生存権、人格権を侵害する危険きわまりないものです。40年の規制を超えて稼働させることに対して、危険を指摘されるこの老朽原発が事故を起こせば、美浜町民は被害者であり加害者という立場に立たされてしまいます。被災者でありながら、避難先でもさまざまな批判を受けることになるでしょう。
 そうなれば、静かに平穏に暮らしたいと思っている住民の願いとは全く逆行するものになります。老朽化原発は、直ちに廃炉にするべきです。

 次に、免震重要棟についてお聞きします。
 福島第一原発事故では、現場にいた所員や関連会社の作業員たちの指令室として機能した免震重要棟が、過酷な現場作業を支える大きな役割を果たしました。免震重要棟があったからこそ、指令室の機能が維持され、原発事故時の対応ができたと言われています。国内の原子力発電所では、大規模な地震などによって重大な事故が発生した場合に備えて、早期の収束に万全を期するため、緊急時対応の拠点となる免震構造の建物の設置を進めております。ですが、関西電力には美浜、大飯、高浜の全ての原発で免震重要棟がありません。福島第一原発事故の教訓に学べば、当然免震重要棟が必要となります。それは先ほども申し上げましたように、現場にいる所員や関連会社の作業員への安全配慮義務としても、事業者が設置しなければならないものだと考えているからです。
 緊急時対応の拠点となる免震構造の建物の設置を進めている事業者もある中で、九州電力の話なんですけど、川内原発で免震重要棟を2015年中に完成させるとしていたものを、昨年12月に一転して建設を撤回すると規制委員会に申請いたしました。再稼働前は免震重要棟を建設しますと約束していたものを、再稼働が認められたら、その約束を破棄して耐震構造の対策などで対応するといいます。住民にとってはうそをつかれたのと同じであり、こんな対応では住民の理解は得られません。これには規制委員会からも批判され、再稼働してしまえばどうにでもなるという姿勢のあらわれではないかと疑念が指摘されております。
 原子力事業者は継続的に安全性の向上を図るべきであり、これに逆行する申請は許されません。関西電力は全ての原発に免震重要棟を設置するのでしょうか。町としても、免震重要棟の設置を関西電力に求めているのか伺います。

町長

 万が一事故が起こった場合の、その原子力の稼働をコントロールする施設というのは非常に重要であるというふうに考えております。関西電力では、新規制基準の要求である緊急時対策所は、耐震建屋にて建設すると。それから、緊急時対策所を支援する目的の免震事務棟もその近くに、全ての原子力発電所において設置する計画であるというふうに説明を聞いております。今後、再稼働に向けてのいろんな段階があるわけでございますが、動きはあるというふうに思います。その中で、どういうものをいつごろにというのはしっかり確認をしていきたいというふうに思っておりますが、今、関西電力ではそれぞれの発電所に設けるという方針だけはしっかり明記しておりますので、具体的なことは今後確認していきたいというふうに思ってます。

河本

 先ほども申しましたように、九州電力みたいに一度建てると言ってたものを稼働後に撤回するとか、そういうことがないようにだけ注意していただきたい。私は原発の稼働には反対ですけども、住民を守る、労働者を守るという立場に立ったことを町としてしっかりとやっていただきたい。
 美浜原発3号機の安全対策費なんですけども、最高で2,700億円と報道されていました。しかし、原子力規制委員会に提出した安全対策の強化を盛り込んだ原子炉設置(変更)許可申請書の補正書の安全対策費は1,650億円なんです。2,700億円と比べると1,050億円も減額している。安全対策の強化どころか、弱体化としか考えられません。
 熊本県の連続地震で危険が指摘された川内原発の基準地震動は620ガル、中央構造線断層帯を震源とする地震が指摘される伊方原発の基準地震動は650ガルです。地震による原発事故の危険が指摘される川内原発、伊方原発の基準地震動よりもはるかに高い993ガルの基準地震動になっているのが美浜原発です。川内原発、伊方原発と比べると、美浜原発がいかに危険な場所に立地しているかわかります。活断層に囲まれた立地不適な場所に存在する美浜原発の安全対策費が、1,650億円で済むとはちょっと考えがたいんです。早く新規制基準に合格して原発を動かし利益を上げたいと考えている一方で、安全対策費を極限まで削り、利益最優先で安全対策費を抑えていることが見えるようでは、住民は不安です。
 新規制基準に合格さえすれば安全のお墨つきを与えられているというわけではありません。規制委員会の委員長も、先ほどもいったように、規制基準に合格したからといって安全とは言えないといっているわけです。
 原子力事業者は継続的に安全性の向上を図るべきであり、最新の災害事例や研究、指摘を踏まえ、対策を強化していかなければいけません。福島第一原発事故を起こした東京電力さえ、新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発の事務棟が使えなくなった教訓から免震重要棟を設置したんですから、関西電力も免震棟はつくるべきですし、熊本県の連続地震から教訓を学んで安全対策に生かすべきです。これをやらないというのであれば、関西電力の安全意識とか危険予知能力は、福島第一原発事故を起こした東京電力よりもはるかに低いと指摘しておかなければいけません。
 敦賀半島は、活断層が集中する新潟〜神戸間のひずみ集中帯にありまして、中央構造線断層帯と同様に危険視されています。また、GPSによる最新の断層ひずみ調査でも、ひずみが蓄積されている危険な場所として指摘されています。
 立地不適な場所に存在する美浜原発には、より高度な安全対策が求められるのは必然であり、美浜原発の安全対策に終わりはありません。安全意識の向上や危険予知、安全対策に終わりがないのはどんな職種でも同じですけども、特に原子力事業者については、相次ぐ汚染水漏れや原子炉の緊急停止などで信頼は失墜し、住民の不安は増大しています。町としても、最新の災害事例や研究、学者などの指摘を踏まえた安全対策を関西電力に求めていくべきだと思いますけども、町長の考えを伺います。

町長

 今、我々は原子力を推進するという立場に立っております。その上には、やっぱり今議員おっしゃったような安全に対する確認、あるいは要求、そういうものはもう今おっしゃったこと、積極的にやっていく必要があるというふうに思っております。したがいまして、今、議員おっしゃったようなことを一生懸命やっていきますので、議員も原子力反対ではなくて、推進するためにそういうものをとるわけでございますので、御理解をいただいていきたいなというふうに思います。

河本

 原発が存在している限り、住民の不安や原発事故の脅威は解消されません。常に危険とリスクが隣り合わせなんです。
 原発が稼働すると、企業が美浜町への進出を取りやめたり、定住移住の選択肢から外されるということが起きるわけです。それほど危険・リスクが高いということを町外の人は認識してるわけです。静かに平穏に暮らしたいという住民の願いに真剣に向き合うのであれば、原発は廃炉しかありません。

(後略)

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