[2019_11_30_01]<東海第二原発 再考再稼働>(3)核エネ脱却 研究に転換を 東海村前村長・村上達也さん(東京新聞2019年11月30日)
 
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<東海第二原発 再考再稼働>(3)核エネ脱却 研究に転換を 東海村前村長・村上達也さん

 私の後任の山田修村長が、原子力業界誌の対談で、村に立地する東海第二原発の再稼働を容認するような発言をした。村民の意見がまとまっていない中で、村長として軽薄な行為だ。原発を認めない人をばかにするような発言も問題だ。
 東海第二は、日本で最も危険な原発だと思う。
 事業者の日本原子力発電(原電)は、財政的にも厳しい。さらに、東海第二に加えて、原電が保有する福井県の敦賀原発も長年、動いておらず、経験がなくなっている。余裕がない会社が再稼働をすると、事故を起こすリスクも高まる。
 政府の発表で、茨城県沖では、マグニチュード(M)7〜7・5の地震の発生確率が、三十年以内に80%程度とされている。東海第二は運転開始から四十年以上がたっており、大地震が起きた際に安全が確保できる構造なのか心配だ。
 村長時代に起きた東京電力福島第一原発の事故では、立地自治体だけでなく、広範囲にわたり住民が避難した。立地自治体だけで再稼働の判断をするのはおかしいと思った。
 だから、村の隣接四市と東海第二から二十キロ圏に入る水戸市を入れた「原子力所在地域首長懇談会」で周辺自治体の権限を拡大するよう、原電に求めた。
 二〇一八年三月、この六市村が再稼働の際に、同意するかを判断する新協定を全国で初めて作ることにつながった。周辺自治体が再稼働への関与を求めている中部電力浜岡原発(静岡県)など、ほかの原発立地地域にも波及してほしい。
 原電は今年二月、再稼働を目指す意向を表明した。東海第二の三十キロ圏内には、約九十四万人が暮らしている。周辺自治体は現在、広域避難計画を策定しているが、課題は多い。
 原発の立地自治体は放射性廃棄物は持ち出せと言っているが、持っていく場所がない。村もそうだが、原発を誘致してお金をもらっている。いいとこ取りで嫌なものを持ち出せというのは無責任。原発を動かすなら、廃棄物や使用済み核燃料も自分のところで抱える覚悟をしなければならない。
 原子力と共に歩んできた村は、福島の事故で原発の危険性を体験した。核エネルギーから脱却し、これからは先端科学としての原子力研究に転換していくべきだ。村には、素粒子や生命科学を研究する大強度陽子加速器施設J−PARCもある。財産として生かす方策を考えてほしい。(聞き手・松村真一郎)

<むらかみ・たつや> 1943年、石神村(現東海村)生まれ。一橋大を卒業後、水戸市に本店を置く常陽銀行に入行。97年の村長選で初当選し4期16年務めた。東京電力福島第一原発事故後、脱原発を主張し、全国の首長らでつくる「脱原発をめざす首長会議」の世話人を務める。

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