[2020_08_18_06]日本原電・敦賀原発2号機の断層偽装 ボーリングデータの削除書き換え80箇所 規制委は「審査打ち切り、敦賀原発2号機は規制基準を満たさない」として不許可としなければならない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2020年8月18日)
 
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日本原電・敦賀原発2号機の断層偽装 ボーリングデータの削除書き換え80箇所 規制委は「審査打ち切り、敦賀原発2号機は規制基準を満たさない」として不許可としなければならない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 何故このような会社(日本原電)に東海第二原発を再稼働させる許可を出したのか。規制委の姿勢には本当に怒りが湧く。
 これまでも、データ改ざん事件はいくつもあった。
 しかし、この事件は審査を通すために活断層を「消す」といった動機で実行された偽装工作だ。
 それを見つけたのは規制委なのだから毅然として「審査打ち切り、敦賀原発2号機は規制基準を満たさない」との決定を下し不許可としなければならない。

◎ 断層上に原発は建てられない

 原発の耐震設計審査指針では、13万〜12万年前以降に動いた可能性のある断層を活断層とし、活断層の上には原子炉建屋など安全上重要な施設は建てられないと規定している。
 これまでに敦賀原発2号機は、真下に活断層が存在することが指摘されていた。
 2008年から原発直下にある断層が活断層で、別の活断層である浦底断層と連動する可能性があることを渡辺満久東洋大学教授ら変動地形学の研究者から指摘されていた。

◎ 北陸電力志賀原発も活断層上にある

 『新規制基準では、原子炉など重要施設の直下に活断層がある原発は運転できない。規制委が設けた有識者調査団は2015年に原電の敦賀2号機、2016年に北陸電力の志賀1号機の直下に活断層があるとの評価書をまとめた。』(日本経済新聞6月10日)
 この段階で規制委は有識者調査団の評価書を受理しており、本来は審査打ち切り、廃炉を決定しているべきだったが、事業者側は活断層ではない証拠を示すとして、2016年6月から断続的に審査会合を開催してきた。
 現在は北陸電力が敷地内の9本の断層について約12万年前の後期更新世以降は断層は動いていないとの説明を続けている。
 更田規制委員長は、事業者が審査を継続してもらいたいという限り審査は行わざるを得ないとの立場を表明している。

◎ ボーリングデータ書き換えとは

 原電の和智信隆取締役副社長は規制委の審査会合で「敦賀2号機の重要施設の中にK断層はつながっていないとの確認結果を得た」(2月7日の審査会合)との主張を行うために資料を提出し臨んだ。
 しかしこの会合で審査の打ち切りが規制委から通告されたのである。
 原発立地の際には、敷地の地質や地質構造を調査し、地震などでも原発を支えることができるほど安定的であるかを調べるためボーリング調査を行う。断層がある場合は、それが活断層であるかどうか確認する。
 原電が行ったK断層のボーリング調査で作成したボーリング柱状図について、2012年に作成した記録には記事欄に「未固結粘土状部」と記載していたが、これが「固結粘土状部」と書き換えられていた。
 このような例を規制委が以前に提出されていた図と最近の審査会合で提出された図を見比べて発見し、記載が消されたり書き換えられている箇所が80にも上ることを発見した。
 原電は「未固結粘土状」としていたボーリング柱状図の観察記録を、後日行った断層岩の薄片偏光顕微鏡観察で「固結している岩石」(断層ではない)と判断したから、柱状図にそれで上書きしたという。
 しかし柱状図観察では「未固結」と判断した事実が抹消され、あたかもはじめから「固結」と判断できたかのように書き換えれば、それはデータの偽造でしかない。「やっちゃいけいないこと」(規制庁 山形浩史緊急事態対策監)である。

 科学調査では絶対にあってはならないことだ。
 具体的な箇所の例も審査会合で示された。
 『今日の参考資料3で言うと「明褐灰色の固結礫状部及び明灰白色の固結粘土状部からなる」ということで、固結しているものしかないという記事になっています。前回の657回の資料を見ると、ここのところには、「明赤灰色の未固結粘土状部:累計幅1.5cm」という記述があります。この記述が消えてなくなっちゃっているという状況にあります。』(規制庁内藤浩行安全規制調整官)
 全く同じ箇所の説明が真逆に書き換えられていた。断層と疑われる幅1.5センチの明確な未固結部が「消滅」していた。

◎ 審査会合で審査打ち切り

 このような書き換えは偽装そのものである。では担当者が勝手にしたことなのだろうか。そうではない。これは原電ぐるみで実行された。それがわかるのが審査会合での説明者と規制委のやりとりだ。
 原電の説明担当者の入谷剛開発計画室部長は『今の柱状図をどう書くかというところで、内藤さんが言われたような記載の仕方もあると思います。ただ、我々がやっているような記載の仕方もないわけではないと思っておりまして。』と主張すると、規制委の石渡委員が『それは、ないと思います。そういう、もともと、その技術者がそのコアを、コアが上がってきて、そこへ、ラボへ入ってきたものをきちんと見て書いた、その記述を後から、例えば未固結か固結かというのは、これ、触ってみればわかるわけですよ。そういうことで、これは未固結帯がありますと書いてあるんですよ、そこに。それを後から、これは未固結かどうかって、薄片じゃわからないじゃないですか。薄片は、そういう処理をしてつくっているんですから、それを見ただけじゃ未固結かどうかわからないでしょう。』と指摘した。

 原電の担当者が勝手に書き換えたものではないことが、これではっきりする。 数次にわたる審査会合の資料を遡って改ざんされたところを確認したところ、80箇所にも上ったことで、規制委は審査を中断し、このような事態に至った経緯を説明するよう求めている。

◎ 関西電力などの資金支援の根拠は失われた

 『関西、中部、北陸の各電力は、原電の敦賀原発2号機から電力供給を受けていた経緯から、総額約600億円の債務保証を検討する。』(毎日新聞2019年3月6日)
 敦賀原発2号機が廃炉になればこれら電力会社が東海第二への資金支援をする道理がなくなり、発電しない原発の維持費用や自社の供給に関わりのない原発の資金供与など株主の理解を得られるはずもない。
 敦賀原発2号機の廃炉は即資金支援の打ち切りになる。
 敦賀原発2号機は1987年2月17日に営業運転を開始しているので既に33年経っている。7年後には40年の期限を迎え、20年の延長申請をしたとしても稼働可能な年数は僅かだ。
 電源として当てにならないものに何百億円も支払い続けることは関西電力などにも重荷になっている。関西電力も高浜町の元助役に関連する役員の不正行為で巨額の損失を出し、裁判も抱えている。
 北陸電力は志賀原発が廃炉寸前で、さらに石炭火力廃止問題も影響して先行きは不透明。
 これら電力会社には原電に無駄な投資をしている余裕はないはずである。
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