【記事46440】1.原発再稼働〜避難計画「どこに向かう 日本の原子力政策」NHK解説スタジアム8/26(文字起こし)「どこに向かう 日本の原子力政策」(みんな楽しくHappyがいい♪2016年8月26日)
 
参照元
1.原発再稼働〜避難計画「どこに向かう 日本の原子力政策」NHK解説スタジアム8/26(文字起こし)「どこに向かう 日本の原子力政策」

NHK総合 8月26日(金) 午後11時55分〜午前0時49分
「どこに向かう日本の原子力政策」(動画)
https://youtu.be/pv3pH9e2RpU

出演
 司会:西川吉郎解説委員長、小林恵子
 島田敏男・板垣信幸・関口博之・竹田忠・水野倫之・橋祐介 各解説委員

●小林 生放送でお送りする解説スタジアムです。今回のテーマは「どこに向かう 日本の原子力政策」です。
●西川 今月愛媛県の伊方原発3号機が再稼動した一方、今日、鹿児島県の三反園訓(みたぞの・さとし)知事が川内原発の一時停止と再点検を要請するなど、再稼動をめぐっては様々な動きが出ています。一方原子力政策の柱である、核燃料サイクルの軸、高速増殖炉もんじゅは将来が見通せない状態が続いています。原子力政策の根幹が改めて問われています。今夜は、日本の原子力政策をどう考えるのか、解説委員が徹底討論します。
●小林 番組ではみなさんからのご意見を受け付けています。各地で相次ぐ原発再稼動の動き、どう考えますか?解説スタジアムのホームページからお送りください。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu/stadium/
頂いたご意見、この番組の中でご紹介したいと思います。

●西川 はい、それでは始めていきましょう。今夜はこちらにいる5人、そしてむこうの一人と、合わせて5人の解説委員で進めてまいります。最初の大きなテーマとしては、やはり各地で相次ぐ原発再稼動の動きについて考えていきたいと思います。まずその現状について、水野委員から解説してもらいます。
●水野 審査に合格した原発の再稼動を進めるという政府の方針のもと再稼動の動きが相次いでいます。まず規制委員の審査に合格した原発ですけれども26基ありまして、そのうち7基がこれまで審査に合格しました。そして川内、高浜、伊方合わせて5基が再稼動しています
 しかし、このうち高浜3、4号機は裁判所が運転停止を命じる仮処分を下したことから運転ができなくなりまして、現状運転中は伊方と川内の合わせて3基にとどまっていまして、ま、必ずしも政府の思惑通り再稼動が進んでいるというわけではありません。
 しかも川内原発につきましては、今日、鹿児島県の三反園知事が熊本地震や避難計画への不安があるとして、一時停止するよう九州電力に申し入れをしています。知事に停止の権限があるわけではありませんけれども、原発の運転には地元の理解、これが不可欠ですので、今後運転に影響が出るという可能性もあります。
 そしてもう一点、最近注目すべき出来事がありました。運転開始から40年以上の老朽原発の合格です。高浜原発1、2号機が20年の運転延長、これが認められました。福島で事故を起こしたのはいずれも古い炉でしたので、事故後に「原発の運転期間を一律40年に制限する」というルールができました。そして一度だけ延長を認めるという例外も設けられたんですが、当時、政府も規制委員も、この延長というのは相当困難だというふうに説明をしていました。しかし今回規制委員は電力会社が行うべき試験を先送りするということを容認する形でこの運転を認めました。早くもその例外を認めたわけなんですが、例外がだんだん当たり前となりつつあるというわけで、この40年ルールは形骸化しているという指摘もあります。
●西川 はい、ありがとうございました。討論に移っていくんですけれども、一人発言は原則1分で、それを超えますと前のランプが赤く点灯します。今の解説は、去年の夏以降に実際に再稼動が始まったこと、さらに老朽原発の運転延長が認められたということで、まず再稼働の方から見ていきたいんですけど、「政府の思惑通りには進んでいない」という説明があったんですけど、この辺の展望はどうでしょうか?
●関口(経済・エネルギー担当) 実はね、この原発の再稼働って、政府自身は個別には判断していないんですよね。それを委ねているのは原子力規制委員会。だから主力は規制委員ということになるんですけど、規制委員の審査は慎重に時間をかけて行われています。当初は1基半年ぐらいで結論を出すんじゃないか、というふうに言われていたんですけれども、結局今の説明にもあったように3年経って、新規性基準になってから3年経って、まだ伊方3号機で5基目ですからね、にとどまっていると。ただ、第一関門になるのは想定する地震の大きさで決めることなんですけど、それはだんだん8箇所の原発ですでに決まってきましたので徐々にペースが上がっていると。
 ただもう一つの主役が出てきているのが、司法がこの原発の再稼動を判断するようになってきたという問題がありますね。で、結局高浜の3、4号機の差し止めが代表的な例ですけれども、専門家が積み重ねた議論を、例えば裁判の仮処分決定という形で覆るということもできると。これでいいのか?という議論も一方で起きている。何れにしても再稼働の先行きが、かならずしも見通せるという状況にはなっていないことですねぇ。
●島田(政治・安全保障担当) 今、司法の判断の話が出ましたよね。これは時代背景の大きな変化の現れですよ。30年前でしたら、裁判官が常識的な判断というのはそれは「運転を認める」とイコールなんですね。しかし福島第一原発、あの事故の後、「常識的な判断」と。常識的な判断というときにはものすごく幅が広くなった。これがやはり置かれている環境の大きな変化ですよね。で、国民もまたそれを支持している面がある。もちろん電力会社の人たちの中には「一裁判官の判断で右や左に行っていいのか」と強い批判はありますけれども、その後ろに国民の厳しい射目があると、そういう、やっぱり、リスク。コストというものを背負わなければ、原子力発電っていうのはもう、立ちいかないところに来ている。これは現実の問題として受け止めなければいけないと思うんですね。
●西川 そういう意味では、再稼働そのものが問題になっているということですよね。
●板垣(財政・金融・エネルギー担当) そうですよね、先ほどね、関口さんの方から「規制委員会は慎重に審査をしている」というんですが、「審査は慎重であっても基準が甘い」というところが私は問題点だと思うんですね。例えばアメリカの基準の中には「避難計画」はちゃんと入っています。で、日本は「避難計画」は自治体に丸投げ。「こんな甘い基準はない」と私は考えているわけですね。ですからこういう形での安易な再稼働は、僕は認めたくないと思っています。それから、再生可能エネルギーだとか、水素エネルギーを使った代替エネルギーがもう最近はだいぶ出てきています。より安全なエネルギーを目指すというのは先進国の役割だと思うんですよね。
 ですから、アメリカなんかを見ると、基準はテロ対策は相当厳しいし、地震の多い西海岸には努めて設置しないようにしている。それから日本を見れば、地震・津波・火山の原発リスク3原則、三大要点と私はいうんですけれども、それが揃っている日本が、やっぱり原発に多くを依存するには問題だと思うわけですね。
●高橋(国際・アメリカ担当) アメリカが出ましたけれども、そのアメリカの原子力行政に対する考え方っていうのは、事故のリスクはゼロにはできない。そうである以上「一度事故が起きた場合にいかに最小限に食い止めることができるか」というリスク管理が基本です。リスク管理のためには、社会としてどこまでのリスクだったら受け入れることができるのか?という、コンセンサス作りが欠かせません。日本の場合はこのコンセンサス作りがまだ出来ていないんだと思いますし、その前提となる国や電力会社による情報公開の徹底というところに我々は課題があるというふうに思います。
●竹田(経済担当) そこにちょっと関連して言いますと、なぜこの司法の判断が重要になってくるか?またするかということの一つの原因は、私は原子力規制委員会にあるとおもいますよ。
●竹田(経済担当) そこにちょっと関連して言いますと、なぜこの司法の判断が重要になってくるか?またするかということの一つの原因は、私は原子力規制委員会にあるとおもいますよ。
 「安全性を保証するものではない」明確に何度も言うんですよ。
規制委員会がやっているのは「基準に適合したかどうかを審査しているので、安全性を保証するものではない」と何度も言っているわけですね。
 じゃあ、地元住民はどうすればいいんですか?
 要するに電力会社は、そこでどんどん再稼動の動きを進める。規制委員会が、安全性をきちんと審査してそれにお墨付きを与えたと思ったら、規制委員会は「安全性は保証しません」と言う。そうすると地元住民は、「じゃあ、それは裁判所に判断してもらうしかないじゃないか」と、こうなるわけですよね。ですから、やはり基本的に規制委員会として、少なくとも現在の知見ではこれは、規制委員会としてはこのレベルを超えたものは安全だと、そう認定するんだという態度はきちっと出して欲しいと思いんですよね。
●水野(原子力担当) だからね、日本ももうアメリカのように「事故は起こり得るんだ」という立場にはなったんですよ。じゃあ、何が重要なのか?と言ったら、
 どれだけ原発を頑丈に造っても起こり得るんだったら、いざという時の避難ですよね。
それでいいますと、過去の福島の事故もそうですし、この間熊本地震がありましたけれども、ああいった教訓が果たして生かしきれているのかどうか?というところが僕は非常に疑問に思っていまして、特に先日の熊本地震、あれで問題になったは、避難先の体育館でさえ、耐震性のある建物でさえ、壁とかが壊れるんですね。で、日本は原発避難の時に、すぐに避難するというのもありますけれども、しばらくは屋内にとどまる「屋内退避」というのも考えられているんですけれども、じゃあ、ああいう熊本みたいな揺れが起きた場合に、果たして体育館のようなみんなが集まる場所、あれが屋内退避施設として果たして通用するのかどうか?と。そこらへんのちゃんとした議論が行われないまま、再稼動が進んでいっているという状況は如何なものかと。
●島田 いや、それに関して言うとね、原子力規制委員会にそもそもその避難の問題を審査する権限を与えていない。この政治の意思決定、そこが不足しているところですよね。
●水野 全くそうです。で、規制委員が審査しようというと、「いや、我々の仕事じゃありません。法律の枠組み上そうなっていない」と言うんですね。だったらその法律を変えればいいんですけど、その枠組みを変えようという動きが政府からもそれから規制からも、どこからも起こらないと。それは度々我々も含めて言ってるんですけど、なかなかこの動きが起こらない。
●島田 そうだよね。
●板垣 たとえばね、規制委員会は「基準に合っているかどうかだけの権限を私たちは持っている」「完全に安全とは言えない」ところがこれまで政府は、なかなか自分たちが仕切るとは言わなかったけど、「政府として責任を取る」という言葉を吐いたことがあるんです。だけれどもですね、責任ってどうやってとるんでしょう?今の福島の第一原発の惨状を見ていて、お金を渡せば責任を取ったことになるのか?ならないわけですよ。災害関連死の方もたくさんいるわけですから、そういうことが起きたら「責任が取れないのに、責任を取る」と公言することこそ問題なのであって、むしろそういうことじゃなくて、きちっと現状を説明して、こうなったらこうしますという説明をしないからいけないんだと思いますね。
●竹田 だからね、やっぱり、話を峻別しなければいけないんですよ。ハードな安全性をきちっと認定するということと、もし、それでも事故が起きたら、どこまでそのリスクを最小化するのか。そのための避難計画も含めて、手立てがどれだけ防災計画としてきちっと政治に対しているか、この両方を審査しないといけない。その原子力規制委員会は今、ハードの部分、のみが審査の対象になっていて、いざ起きた場合の防災の部分の審査というのは、それは権限がないわけですよ。政府もそれを与えていない。だからそこをきちっと問題を峻別して、議論すべきだと思います。それは誰が責任を持つのか。
●関口 やっぱり、規制委員会の仕事はリスクを最小化することにあるのと同時に、継続的に安全を監視していくことっていうことが大事。その意味でいうと、実は一回、最初の再稼働の審査の厳格かどうかという問題ではなくて、その後に渡ってもずーっとね、それは避難計画の、常に見直しも含めて、僕も必要だと思いますけど、それは電力会社と規制委員会が共同してというか、ある意味強調した関係の中で作っていかなければいけないものだから、という意味で、「規制委員は電力会社に絶えず継続的に安全性を高めていく努力をさせる」という責任も負わなければいけないと思いますね。
●竹田 それはやっぱり権限を持たせなきゃダメですよね、規制委員会に、そういう。
●島田 まさにそれは国会で議論しなければいけないテーマなのに、なかなか大きな議論のテーマになっていない。ここに問題があるんですね。
●竹田 そこはやっぱり政府の中で、そこはきちっと判断をすべきだと思いますよ。ここから先は役所に任せる。ここから先はここに任せるって、ちゃんと腑分けをね、きちっとそれぞれのところに責任を持たせないといけない。
●水野 今日は鹿児島県の三反園知事が九州電力に原発の一時停止を要請したわけなんですけど、あれも三反園知事は当初から原発停止といっていたわけではなくて、原発に依存しない社会を目指すんだという程度だったんですが、やはりあの熊本地震を経験して、あれでやっぱり県民の不安が高まっていると。やっぱり不安があるんであれば、知事として言うべきだということなんですけれども。で、先週ですか、避難路とか色々と見に行ったら、やっぱりこれはちょっとどうなの?っていうような話になりまして、鹿児島の場合は、特に病院ですとか、それから福祉施設ですね。10km圏内はあらかじめ避難所を決めているんですけど、10kmから30kmについては「事故が起きてから避難先を決める」っていうんですよ。でもそんな、事故が起きて混乱してどうやってやるか?というと、県庁の職員が電話して「そちらの病院で引き受けてくれますか?」なんですが、その電話がつながるかどうかもわからないし、そういうやっぱり避難の問題もあるので、この際ですね、本当に九州電力が要請に応じるかどうかはわかりませんが、そういった避難の問題とかを三反園知事がわかったのであれば、それは徹底的にちょっと検証して、直すべきところはやっぱり直して欲しいですね。
●関口 避難についてはね、これは水野さんがいつも言っているけど、その計画だけじゃなくてやっぱり実施訓練をしてどこに問題点があるかということをやっていかなきゃいけない。それが当然、電力会社の協力も得て、それから自治体も含めてみんなでやらなければいけないわけですから、そういう意味でいうと、すべての関係者が加わってやらなければいけないことだと思っています。
●竹田 一応国としてはね、原子力防災会議という仕組みがあって、そこで防災訓練なんかも自治体と一緒にね、みて、訓練も共同でやったり、というようなことはやってはいるんです。でもそれはあくまでも、念のためそういう訓練をやっておこうねということで、やっぱりその計画、訓練の内容そのものが本当に原発を動かす、その審査の条件に、法的なきちっと条件になっているのかどうかで、全然力の入れようが変わってきますから、それは私はもっともっと、ここはきちっと原発を動かす時の審査基準っていうか、それを要件に法的に入れるということが私は必要になってくると思いますよ。
●板垣 いや、それとね、避難計画を作らないと原発も動かせずに、そうしなきゃ電気も。つまり電気を取るために大掛かりな避難計画を作るこの煩わしさ。「もっと別の電源があるんじゃないか」っていう議論が当然あったんですよ。それを全くスルーして、原発再稼働っていうことにしたので、いろんな歪みが今出ているわけですよ。例えばね、なぜ今原発を再稼働するか?というと、それは原発は今再稼働したら非常に安く電気が作れます。それはなぜか?というとですね、それは裏側にあるコストが入っていないから。償却は終わっているから、動かせば儲かるに決まっているので、ただそのコストを注目しなければいけないと、私なんかは思うわけです。例えば原発はこの60年間で、国家予算で15兆円つぎ込んでいるんですよ。でも60年ですから貨幣価値が違いますので、現在価格で言えば45兆円、3倍すれば45兆円ぐらいかかってると。それから今、事故の対応で9兆円お金を使っている。こういうことですと、コストが一体安いっていうのは、「いや安くはないんだ」ということにならざるを得ないわけですよ。
●島田 そのコストで言うとね、電力会社の立場で見ますと、すっぱり原子力発電所という巨大な投資をした資産、それを使わないということはつまり、会社の経営を左前にしてしまうという、そこに直結してしまうんですね。だからコストということで言えばあるものは使わなければいけない。そこにどうしても発想がいくわけですけれども、今板垣さんが御指摘の点については、その計算の外に置いていると。それでいいのか!?と。
●板垣 つまり、裏負担を国民は知らないうちにずーっとやってきたし、いま対応で9兆円の枠が出てます。それを使ったら、それは電気料金で取るんですよ。つまりこれから原発の問題の料金が上がってくる。原発要因として。だからいま再生可能エネルギーで料金が上がっているなんていう理屈も一方でありますけど、原発で上がってくる部分も相当多いということをやっぱり知っておく必要があると思いますね。
●竹田 請求は一つですから、やっぱり国民は電気料金という名目でお金を出すのか、税金という名目でお金を出すのか、要するにそれは同じ負担だよという、そういう
●板垣 そういうことですね。だからコスト面でも原発の問題はよく考えなきゃいけない。それから稼働基準についてもよく考えなきゃいけない。竹田さんがおっしゃったように、避難計画はドンとその基準の中に入れなきゃいけないんですよ。アメリカの規制当局に話を聞いてごらんなさい。「日本で、えっ!?、避難計画って入ってなかったの?」と疑問を呈する人もいるんですよ。ですからもともと左様にゆるい基準だと。

2.老朽原発40年ルール「どこに向かう 日本の原子力政策」NHK解説スタジアム8/26(文字起こし)

老朽原発 40年ルール

●西川 そこでそのようにコストとか色々問題はあるんですけど、その延長上には老朽原発の運転延長という問題があると思うんですけど、この形骸化が指摘されているということ。この辺はどういう見方でしょうか?
●竹田 基本的な数値、データとして考えますとね、まず国はなんて言っているか?というと、まずエネルギー基本計画というのをちゃんと作っていて、そこで2030年レベルで電源構成として原発に大体20%から22%原発に持ってもらうという計画を立てているんです。それを実際やってみようとすると、2030年時点って、大体原発って30基程度動いていることが必要なんですよね。ところが、ところが、その40年ルール廃炉を厳格に適用しますと、多分2030年時点で動けるのは大体25基ぐらいだと言われているんです。そうすると、その差の5基はどうなるのか?新しく原発をね、最新鋭で大容量の原発を新しく造ったり、同じ敷地内で造り替える、これをリプレースと言いますけれども、そういうことが、ま、できればいいんですけれども、かなり、今の現状では難しいですよね。そうするとその部分は、結局全部運転延長。結局40年を超えても運転延長というのがその部分でてこないといけないということになるんですよね。
●板垣 この40年ルールというのはですね、発表された時点でマスコミ人は、霞が関の文学を知っている、どういう文章を作るかということを知っているマスコミの人たちはですね、「あ、ザル法だ」と思ったわけですよ。それで一斉に批判したんですよね。でも「これは厳しい基準だ、20年は延長させません」と「なかなか厳しですよ」と言って切り抜けてきたわけです。ところが今回、条件をまだクリアしていないのに20年延長を認める方向になってしまった。そこで結局何が起きたか?というと、あ、結局あの時指摘したことは正しくて、みんなそれで騙されてしまったんだということなんですよ。つまりこの40年ルールというのは、本当に当初から、あの、ま、騙すっていうことではないんですが、まやかしが入っていたということだと思いますね。
●関口 ただその、(経済カット?)までいうのは、ぼくはその言い過ぎだなと思っているんですよ。というのは、高浜の1、2号とか、美浜とか、申請したところはあるけど、一方では5つの原発の6基がね、もう廃炉を決めましたよね。これはある意味でいうと電力会社が合理的な判断をしつつ、ま、自ら決めていくっていうことですよね。だからそういう意味からすると、40年ルールというものを国がそのまま押し付けるんだったら、もう「40年経ったら終わりです」って言えばいいだけの話で、少なくとも電力事業者にその判断をさせて、それによって、ま、ある種の選別をしていくという趣旨は生かされている面もある、というふうに思います。
●西川 電源構成から見るとですね、2030年に20%とか22%が原子力というんだけれども、その先やっぱりその、まずその時点で達成されていたとしても、どんどんどんどん老朽した原発は廃炉になっていくわけですよね。当然足りなくなってくる。そこのところをどうするかっていうことを。ちょっと新設という話も出たんですけど、
●水野 だから今政府は原発の割合を維持するために老朽原発を活用しようとしていますけど、新設やリプレイスをどうするんですか?っていうと、「現状では想定していない」という言い方なんですけれども、「やらない」とも言っていないんですよね。「想定していない」というだけで。じゃあ、来年とか再来年になってきたら、そういう話が出てくるのかどうか。一方考え方によっては、古い原発を一生懸命お金をかけて新しくしたりして使うよりは、最新鋭の設計でもって新しく造ったほうが安全ではないか、という考え方もあるわけなんですよね。そこら辺をどう考えているのかというのは、よく、ま、見えてこないんですよね。
●西川 そこは、まやかしというか、その前に将来設計の中に見えていない部分があって、そこは議論されていないという。
●関口 それはエネルギーミクスを議論する時からそれはみんながわかっていたことで、議論されていたことだけど、それを封印しちゃったんですから、それはやっぱりリプレイス新増設どうするか?っていう議論は、あの、賛否ありますよ。もちろん賛否あるけれども議論としては、もう一度立ち上げてやらなければならない。
●島田 そうそう、その立ち上げということでいうとね、結局去年政府が決めた2030年度時点での原子力発電での割合、これが20%から22%。これが決まった金科玉条(きんかぎょくじょう 人が絶対的なよりどころとして守るべき規則や法律のこと)のように言われるけれども、そもそもこの数字自体が、「福島原発事故前の28%よりも低くしたからいいだろ」と、そういうつかみの数字なわけですよね。だけど、仔細に見ていったら、もっともっとこれは、安倍総理でさえ言っている、原子力の割合を、依存していく割合を減らしていかざるを得ないという、この基本方針にどこまで沿ったものなんだ?と。これはですね、一回決めたらそのまんまじゃなくて、数年おきにきちっと見直していくと。そういう話で今関口さんがご指摘になった点について、考え方の整理が進まないですよね。
●板垣 ですからね、経済産業省の中の審議会の中でもメンバーが入れ替えになったんですよ。それで推進派の人たちが沢山入っちゃったので、それはこういう計画にならざるを得ないわけですよ。で、実際、新設の原発を今造ろうとすると大変高価なものになりますよ。安全基準をクリアしなければいけない。それから資材も上がっている。そういうことの中で果たして電力会社が「あ、新設できるんだ」と言って、喜び勇んで造るかどうか?それはわからないと思いますよ。リスクもありますから。
●西川 ということで、長期的な視野での議論が欠けている、その材料もない、という、そういうところに尽きてくるんだと思います。

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安倍デタラメ原発政策を一刀両断NHK番組の波紋広がる
2016年8月29日バックナンバー
安倍政権の“御用メディア”NHKが原発政策を批判(C)日刊ゲンダイ
 ライブだったからか、NHKが26日(金)深夜に放送した討論番組「解説スタジアム」は衝撃だった。

 NHKの解説委員7人が、「どこに向かう 日本の原子力政策」というタイトルで議論したのだが、日本の原発政策のデタラメと行き詰まりを赤裸々に語っているのだ。
 番組を見た元外交官の天木直人氏は、翌日のブログにこう書いている。
〈たまたま途中からそれを見た私は、たちまちその議論に引き込まれ、あっという間に見終わってしまった〉〈この番組は国民必見の番組だ〉〈そして、この番組を見た国民は、もはや日本が原発を維持する事は不可能だと知るだろう〉〈NHKの解説委員たちに敬意を表したい〉〈このような番組を作って放映したNHKは捨てたものではない〉

 番組を見た視聴者は、天木氏と同じような感想を持ったのだろう。ネット上では、NHKに対する驚きと称賛の声が上がっている。
 番組を見た視聴者は、天木氏と同じような感想を持ったのだろう。ネット上では、NHKに対する驚きと称賛の声が上がっている。
 7人の解説委員が口にしたことは、当たり前といえば当たり前のことがほとんどだったが、安倍政権の“御用メディア”NHKの幹部が原発政策を批判したことに、視聴者は驚いたのだろう。

■日本の原発政策を完全否定

 実際、解説委員7人の批判は強烈だった。
 ある解説委員は、「アメリカは、地震の多い西海岸には設置しないようにしている。日本は地震、津波、火山の原発リスク3原則が揃っている。原発に依存するのは問題だ」と日本の国土は原発に適さないと指摘。
 再稼働が進んでいることについても、「規制委員会が慎重に審査しているとしているが、審査の基準が甘い。アメリカの基準には周辺住民の避難計画も入っているのに、日本は自治体に丸投げだ。こんな甘い基準はない。安易な再稼働は認めるべきじゃない」と正面から批判した。
 その規制委員会や政府に対しては、こんな言葉が飛び出した。
 「規制委員会は(再稼働にお墨付きを与えておきながら)『安全性を保障するものではない』としている。だったら地元住民はどうすればいいのか」「政府は責任を取ると口にしているが、(事故が起きた時)どうやって責任を取るのか。カネを渡せば責任を取ったことになるのか。災害関連死も起きている。責任を取れないのに、責任を取ると強弁することが問題だ」
 「もんじゅ」を中核とする核燃料サイクルについても、「破綻している」「やめるべきだ」とバッサリ斬り捨てた。
 そして、最後に解説委員長が「福島原発事故では、いまだに9万人近い方が避難生活を強いられている。安全神話は完全に否定され、事故を起こすと、いかに手に負えないかを知ることになった」と締めくくっている。

 要するに、日本の原発政策を完全に否定しているのだ。改めて天木直人氏はこう言う。
 「政治、経済、国際、科学……とさまざまな専門分野を持つ解説委員が、原発の危険性、核燃料サイクルの破綻、原発の高コスト、最終処分場が決まらないこと、さらに政府と官僚の無責任さなど、問題点を次々に明らかにする議論に引き込まれた。日本の原発政策がいかに矛盾しているか浮き彫りにしてくれた。よくぞ、放送したと思いました」

安倍首相が方針転換する可能性

 確かに、よくぞNHKは、日本の原発政策を全面否定する内容を放送したものだ。
 深夜23時55分〜午前0時49分という視聴者が少ない時間帯だったから、自由に討論ができたのだろうか。あるいは、上層部は腐っていても番組を作る現場はジャーナリズムを失っていないのかも知れない。
 いずにしろ、安倍政権にショックを与えたことは間違いない。本来なら参院選の前に放送すべきだったのだろうが、いったん再稼働した高浜原発が裁判によって止まり、鹿児島県知事が川内原発の停止を九州電力に要請したタイミングで放送した意味は大きい。
 この先、「解説スタジアム」の番組内容が広く行き渡っていけば、国民世論と安倍政権の原発政策に影響を与える可能性もあるのではないか。
 「もし、多くの国民が番組を見て原発の実態を知り、“原発反対”の声が広がったら、政府の原発政策が変更される可能性もあると思います。安倍首相は、世論に弱いからです。ポイントは、それほど原発に対して思い入れがないことです。原発にストップをかけた方が支持率がアップすると判断したら、あっさり政策を変えると思う。小泉純一郎は、『なぜ、安倍さんが原発をやめないのか分からない』『やめたら国民は拍手喝采しますよ』と一貫して主張している。日本が原発を放棄することにアメリカが反対しているという声もあるようですが、アメリカが了解したら、安倍首相は決断すると思います」(天木直人氏=前出)

 この5年間、「原発即時ゼロ」をしつこく訴えている小泉元首相の運動も、安倍政権にはボディーブローのようになっているという。

■「即時ゼロ」でも困らない

 安倍首相さえ決断すれば、日本は簡単に「原発即時ゼロ」を実現できる。原発を全面的に廃止しても、まったく困らないからだ。
 この5年間、実質「原発ゼロ」でやってきたが、弊害はひとつもなかった。
 「3.11の後、原子力ムラは『原発を稼働させないと電力が不足する』『突然、停電したら医療機器がストップして死者が続出する』と散々、国民を脅してきました。でも、原発を稼働させなくても電力は十分に足りた。国民の節電意識が進み、省電力家電が増えたからです。これから人口が減る日本は、さらに電力需要が減るでしょう。その後、原子力ムラは『原発を稼働させないと電力料金が上がる』と新たな理屈を持ち出したが、その主張も説得力を失っています。原油価格が下落したために、火力発電のコストが大幅に下がっているからです。それに、NHKの解説委員が指摘した通り、『原発はコストが安い』という電力会社の言い分にはマヤカシがある。確かに、短期的なランニングコストは安いですが、建設から廃炉までトータルで考えたら、原発のコストは高い。イギリスでは、原発の建設に対して金融機関が融資しなくなっているほどです」(原発問題に詳しいジャーナリスト・横田一氏)

 そもそも、いまだに福島原発事故の原因さえ解明されず、いつ廃炉できるのかメドさえ立っていないのに、危険な原発を再稼働させようという発想が間違っている。
 福島原発は100年後も廃炉できないのではないか。
 福島原発は100年後も廃炉できないのではないか。
 NHKの解説委員長が番組の最後に語ったように、原発は人間の手に負えないモンスターである。NHKが正面切って批判したことで、原発という悪魔の退治が始まるのか。政府のデタラメがことごとく明らかになった以上、それを決めるのは世論の盛り上がりなのである。

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3完.核のゴミ〜核燃料サイクル「どこに向かう 日本の原子力政策」NHK解説スタジアム8/26(文字起こし)
https://youtu.be/pv3pH9e2RpU?t=24m33s

核のゴミ

●西川 で、もう一つ再稼働が議論になっているというのは、原発を動かせばいわゆる核のゴミが出てくると。この核のゴミをどう処分するのか?全く方向性が見えていません。地下の300mより深い地層に埋めるという計画で、年内にはどこに処分場を造るか、参考にするための地図が出てくるということなんですけれども、その点についてはどうでしょう?
●関口 これ一応公募っていう形でねどこか実際に手を上げてもらうという考え方が当初はあって、10数年かけてこれを募ってきたんですけど、全然進んでこなかった。その中で、まず国の方が、この「科学的有望地」と呼んでいますけれども、そういうものを示すことで、ま、議論の第一歩を始めようとしているわけですね。国はどういう示し方を考えているか?というと、適正の低い地域、それから適性のある地域、より適性の高い地域と、この3分類にしてね、日本地図を全体として塗り分けると。じゃあどういうところを分けていくか?というと、具体的に例えば、火山、それから活断層の近くは外すとか、それから隆起とか浸食の大きいところ、それから地熱が高い、あるいは軟弱な地盤のところは避けるということです。それから後は、廃棄物の運搬のことを考えると、港に近いところということで、それはより有望というところに入れようということを考えています。ただこれもみなさんイメージしづらいかもしれないんですけど、ここってピンポイントで示すんじゃなくて、あくまで白地図を塗り分けて「こうです」って提示するところから議論をするというものですね。
●西川 始めようとしていることですけれども、どうですか?何か意見は。
●水野 これはでもね、相当事前に説明しておかないと、「科学的有望地」って聞くと「ああ、もうそこに埋めることができるのかな」みたいな感じがするんですけど、そうでもないんですよね。
でもそういうことが起ころうとしていることも国民は知らないので、やっぱりどういう意味なのか?というのをちゃんと説明しなければいけないのと、それからこれを提示したところで、それはあくまでスタートラインに、関口さんも言われたように、すぎないんですよね。そこから先例えば世界で処分場の場所を決めているのはフィンランドとスウェーデンしかないんですが、この二ヶ国とも取材しましたけれども、実際そういう地図を出したりいろんな活動を始めてから決まるまでに20年、30年かかっているんですよ。
●西川 20年、30年
●水野 だから日本もですね、この後決められるとしてもやっぱりそれくらいの時間はかかるんじゃないかという、長期的な視点に立って、やはり最終的にものをいうのは「どれだけ信頼を得られるのか」という点だと思うんですよね。それは日本の原子力って信頼は今地に落ちているわけなので、それを回復しつつやっていかなければいけない。
●高橋 アメリカだって処分場をめぐる議論というのはやっぱり迷走しているんですよね。30年近く前にネバダ州のヤッカマウンテンというところに、ここに処分場の候補地をつくるという選定までいったんだけれども、その後30年近く経ってもほとんど進捗しないままで。で、今のオバマ政権はそれの計画を撤回してしまったと。これはまた政治状況がどうなるかによって全くわかりませんよね。で、やっぱり日本、我々から見ても、処分場をめぐる議論というのはおざなりになっているんじゃないでしょうかね。
●竹田 そういう意味ではね、とにかく最大の問題は「最終処分地が全然議論が進まないまま、しかし再稼動だけは進めるというところが課題だ」と言われてきたのだから、そこを国がね、少なくても「どこか自治体手をあげてください、候補地手をあげてください」で待ってるんじゃなくて、自分たちの方から少なくともここは適していますよというマークを出して議論を始めようというのは、これは大きな意味があると思います。ただこれね、ものすごく気をつけないといけないのは、これをそのままドンと出しても、それは今度は混乱が起きますよね。「えっ!一方的に我々のところは候補地にされるのか?」と。ですからそれは全然そうではなくて、あくまでも地層学的に見て、地盤的に見て、ここは少しは、もしここでも安全かな、という程度の情報を出すだけであって、本当にその自治体が、地元がそれをOKしないといけないわけですから。
●西川 そうですね、この問題はやっぱり水野委員が言ったように、信頼が土台になって初めて話し合いが始まると思うんですが、そういう意味でもまだまだ先が長い。他でも20年30年かかったということで、極めて重要な問題にもかかわらず、まだ出口が見えないという状態だと思います。で、日本の原子力政策の柱である核燃料サイクル。これはこうした核のゴミについても効果があるものだということで始まったんですけれども、そのあたりにテーマをちょっと移していきたいのですが、その前に一度テレビをご覧のみなさまのご意見を伺っていきたいと思います。

https://youtu.be/pv3pH9e2RpU?t=29m17s
https://youtu.be/pv3pH9e2RpU?t=29m17s

現在運転を停止している原子力発電所の運転を再開することに賛成ですか、反対ですか。
やはり反対が多いですね。
賛成25.5% 
反対67.2%
どちらとも言えない7.3%
7割近くの方が原発再稼動に反対という結果になりました。
https://youtu.be/pv3pH9e2RpU?t=31m34s

●西川 ありがとうございました。反対がこれだけ多いという結果ですね。これは、番組をご覧になっていただいている皆さんのご意見ということなんですが、世論調査などでも反対の方が2倍から3倍出ているというのと、ま、同じ傾向かしら、ということと思います。さて二番目の大きな議論として核燃料サイクル、日本の原発政策の柱です。核のゴミを減らすという以上の役割を期待されています。そのあたり、水野さんとそれから小林さんにも加わってもらって解説してください。
●小林 水野さん、テレビをご覧になっていらっしゃる方からこんなご意見をいただいているんですね。核燃料サイクルについてごく初歩から教えて欲しい。知っているつもりが一番怖い。という声が届いているんですけれども、
やはり核燃料サイクル、聞いたことはあるけどよくわからないという方は多いと思うんですよね。
●水野 「この核燃料サイクルこそが原子力をやる最大のメリット」とされてきたんですね。火力発電の燃料の石油石炭、これは一回使ったらそれで終わりですよね。それに対しまして原発は使い終わった燃料をリサイクルすることで再び燃料として使える。これが核燃料サイクルなんですね。こちらの図で説明したいんですけど、原子力発電所でウラン燃料の使用済み燃料が出るんですが、この中にプルトニウムという物質ができるんです。これを再処理工場で取り出しますと、ウランが原発の燃料としてまた使えるんですが、これは一般の原発じゃなくて高速増殖炉という特殊な原発で燃やしますと、さらに多くのプルトニウムができるという、夢のようなことが原理的には可能なんですね。資源の少ない日本は当初からこの高速増殖炉を開発して核燃料サイクルを目指すということを目標にしてきました。その研究段階の炉として開発されたのが高速増殖炉「もんじゅ」ですね。ただこれは冷却にナトリウムを使うことから技術的に難しくて事故を起こすなどして実用化の見通しが立たなくなりました。また最近は機器の点検漏れなど、安全上の問題も起こしまして、規制委員から運営主体を変えるよう最後通告を受けているんですね。受け皿探しは続いていますけれども、頼みの電力会社からの支援の取り付けがうまくいかないなど難航していまして、核燃料サイクルは岐路に立たされていると言えると思います。
●小林 このもんじゅがうまくいかないと、核燃料サイクルはどうなるんですか?
●水野 当初の目的からいきますと、事実上破綻しているという見方もできますけれども、国や電力会社はそうは言わないんですね。高速増殖炉ほど効率は良くないものの一般の原発でプルトニウムを使うプルサーマル、これを当面の核燃料サイクルの柱として位置付けています。でも実際にこれが行われていますのは、伊方原発1基で始まったばかりでして、そういう状況の中でも新たにプルトニウムを生み出す再処理工場、これの可動も目指していると。じゃあ果たしてこの核燃料サイクル、このままでいいのかどうか?ということが今問われているわけです。
●小林 はい、核燃料サイクルはどうあるべきなのか、このあと徹底討論します。
●西川 はい、この問題、もんじゅの問題、それからやはり核燃料サイクルをどうするか?この丸の右側の半分ですね。そちらをどうするか?という問題があると思うんですけれども、もんじゅをどうやってこの核燃料サイクルの中に位置付けて今後見通していったらいいのか、その辺について。
●板垣 もんじゅはですね、もう、もんじゅが核になっていたわけですから、核燃料サイクルは実質的に破綻していると私は考えてるんですね。例えば高速増殖炉のもんじゅについては、これまで1兆円以上のお金をかけているのに組織的な問題もあったりして、全く動けない。これはもうどうしようもないと。で、今回組織が変わるということになっていますけれど、それもまだ決まっていない状況なんですね。だから当面は可動するのは無理なので、ただ毎年およそ200億円近い予算が消えて無くなるんです。ほぼ毎年ですよ。これは異常事態なんですね。今年はちょっと減らしてはいるんですけど、それでもこれは大変な問題ですから、「使用済み核燃料をどうするか」という議論は本当にしなければいけないんです。例えば安全な形でドライキャスク。乾燥した、水で冷やすんじゃなくて、乾燥した状態で安全に保管するだとか、あるいは地層処分をどうするか?なんせ先ほど、最終処分地に30年かかるという話もあるわけです。その間どうするのか?ということを本当に議論しなきゃいけない状況になってきているということですね。
●西川 もんじゅ事態はもう使えないんですかね?
●竹田 ですからその、もんじゅそのものを考えるときに二つに分けなきゃいけないんですよ。もんじゅの研究そのものがなかなか進んでいないということと、もう一つは今大きな問題になっているのは、もんじゅの運営団体、日本原子力研究機構(のちに訂正:原子力研究開発機構)だっけ、あの団体が今それを担当しているんですけど、そこの運営が危ないので、任せてられないので他の運営団体を決めてくださいというふうに規制委員会が文部科学省に求めているんですね。それが期限半年かけて選んでください、考えてくださいって言ってたけど、期限すぎても全然その答えが、ちゃんとした答えが返ってこないということが今一番大きな問題になっているんですね。で、もんじゅがナトリウム事故を起こしたということが、でそれが計画が不透明だということが原因として紹介されていましたけど、問題は事故を起こしたことだけじゃないんです。事故を起こしたあと、事故のときの動画データを撮っておきながらそれを隠したんですよ。メディアにいったんそれを見せたんですけど、それは編集をしていて、本当に事故直後の大量のナトリウムが漏れて飛び散っている一番重要な部分をカットまでしている。
●西川 その問題は日本における原子力の信頼感の問題にもつながっているんですね。
●武田 そのあとも大量の点検漏れ
●西川 ただそのね、サイクルの中ではプルトニウムをどうするか?今後再処理されて出てくる、これをどうするかということで、もんじゅにまぁ、それ解決しようとしてた
●島田 そこでね、そこの方法はまぁ、私はもう結論から言うと、高速増殖炉の事業は、これはもうやめるべきだと。
私はかつて若い頃青森で原子力船「むつ」というのを取材してたんですけど、あの船は実験航海に出ようとして、原子炉の遮蔽が不十分で放射線が外に漏れる。そのためにずっと船が港に係留され続けた。そういう歴史をたどったんですね。で、最後実験航海で一定のデータはとったんだけれども、「もうこれは将来性がない」ということで潔く止めたんですよ。もんじゅも潔く判断をする時期にきていると思う。一方で、プルトニウムをどうやって減らすかということになると、青森にある六ヶ所村の、あの核燃料サイクル。あれを縮小しながら、とにかくプルトニウムを減らすための知恵を全力で見つけていく。ここにやっぱり力点を置くべきだと思いますね。
●西川 もんじゅを使わない方法もある
●板垣 ようするにこれは「増殖炉」というところが問題なんですよ。これはプルトニウムを増やしてしまうわけですよね。だから今「高速炉」という第4世代の原発があるんですね。ただこれも安全性がどうだという問題はあるんですが、つまりプルトニウムを、例えば10万年の半減期だとしても、それを300年に縮めるだとか、いろんな技術がある。ただ、それが確立はしていませんけれども、そういうものなら理解できる。だからもんじゅ自体はあきらめたほうがいいと私なんかは思うわけです。
●西川 他にもやり方があるということで。ちょっとアメリカの話を聞いてみましょうか。
●高橋 アメリカというか、日本は「利用目的のないプルトニウムは持たない」ということを内外に言っていますよね。これはいわゆる国際公約ですよね。にもかかわらず、さっき水野さんが解説したように、高速増殖炉は実現しない。プルサーマルも進展しない。その現状でもし再処理に踏み切ったとしたら、これはどんどんどんどんプルトニウムを溜め込み続けることになりますよね。これが国際社会からどう見られるか?と。これ、今すでに日本が持っている分離プルトニウムだけで48トンですよね。48トンということは核爆弾に換算したらこれは6000発に相当しますよねこれがどう見られるかという視点はやっぱり大事なんじゃないですか。
●西川 その点はあとできちんとやりましょう。
●竹田 さっきのね、もんじゅの研究開発機構の名前、「原子力研究開発機構」というのが正式の名称で、ここが運営のあり方が問われているんです、すみません。
●西川 もんじゅ以外の方法について詳しい人
●関口 もんじゅの、板垣さんがおっしゃったのは大事なポイントの一つで、要するに高速炉の技術を今すぐ手放すということを決断しなくてもいいんですよ。ただもんじゅについては、もうこれだけ成果が上がらないままになってきているから、このまま色々お金をかけても結局もう過去のものになってしまうので、その次の今の原型炉から実証炉というのに本当だったら進むんだけど、その段階の後のロードマップはどうするんですか?これは議論しなければならないんで、それはある意味では高速炉、高速増殖炉っていうのは廃棄物の有害度を下げるとかね、あるいは容量を少なくするとか、という意味合いもあるので、それはこの先も使うんですか、どうするんですか?っていう議論はしなければいけないけれども、もんじゅについてはいったん区切りというのはありうる選択だと思う。
●水野 いや、すぐにやめたいと思っている関係者は結構いるんですけれど、これはやっぱり日本特有の官僚機構というのがあってですね、やめた場合に、じゃあやめちゃうの?誰の責任なの?と今までやってきたのどうするの?で、1兆円かかってた。そのコストは一体どうなるの?とか、もんじゅをやめるんだったら使用済み燃料を今まで資源だとか言ってきていたのに、それがゴミになっちゃうの?とかですね、もういろんな矛盾が出てくるんですよね。でもここはそれを話す、議論するいい機会になると思うんですけれど、そういった責任論とか色々出てくるので、なかなか日本の官僚機構の中でこれを「やめる」とか、言い出せない状況がずーっと続いていて、矛盾がどんどんどんどん蓄積しているっていう状況かな、って思うんですよね、
●西川 もんじゅの運営主体の話も難航しているというのは、期限が来ても出てこないというのはその延長線上でのこと?
●水野 そう。もう9ヶ月近く経ちますもんね。
●関口 それとね、もんじゅの問題、じゃあどうする?っていうふうに委員長から問いかけがあったけど、そうなるとさっき説明があったように、結局やっぱりプルサーマルになりますよね。結局だから商業用の一般の原子炉でプルトニウムを混ぜた燃料を燃やすプルサーマルに重点を置くということになります。それで実際にこれで一つの試算として考えてみたときに、再処理工場で処理できる能力をフルに生かしてやるとですね、大体年間4トンぐらいの再生燃料ができると言われていますけれども、それを燃やすのにバランスの取れるプルサーマルの炉は16基から18基ぐらいいると言われているんですよ。だから本当にそんなにプルサーマルができるんですか?という問題もある。それが要するに、ちゃんと回収して再利用するプルトニウムとそれを燃やす炉の量とバランスが合わなければ、それこそ先ほどから議論が出ているように、利用目的のないプルトニウムということになってしまう。だからプルサーマル中心にしても、現実的などういう使い方をするか?本当にそれだけの炉の再稼働ができるのかどうか?ということも議論しなければいけない。
●島田 確かに技術的にもね、このプルサーマルのときに使うMOX燃料、プルトニウムとウランの混合燃料、その燃料体というのは制御棒の効きがウランを燃料にした原発よりも、なかなか効かないんだと。この物質の性質上そういう面があるっていうことを、水野さん、これは技術的に克服されていないんでしょ?
●水野 やや効きが悪くなるんですけれども、ただ原子力規制委員会によると「全炉心の3分の1までだったら安全性は確保される」と。「それ以上使うと大変だ」と。
●島田 ああ、MOX燃料の占める割合
●水野 はい。で、青森県に建設中の大間原発だけはちょっと構造を変えてですね、全部MOX燃料にしても安全性は保たれるという考え方を示しています。
●島田 新型の設計ですからね。
●西川 まぁそのサイクルの中ではもんじゅに頼らない方向もあると。むしろそれを見つけないと、プルトニウムが溜まる一方だということで、この核燃料サイクルのあり方をちょっともんじゅを外して考えることも必要だということが見えてきたと言っていいでしょうね。でもう一つはプルトニウムがどんどんどんどん出てくるということになれば、日本に厳しい目が注がれそうだということだったんですが、
●高橋 むしろ核燃料サイクルにおける議論は必要なんですけど、それはどれくらいの時間が許されるかということなんですけど、今、世界の核保有国以外で正式に再処理を認められているというのは日本だけですよね。それを支えているのは1988年に発行した、いわゆる日米原子力協定。これは有効期限は30年。これは30年の期限というのは2018年7月に切れるわけです。これは、自動更新という条項もあるんですけれども、基本的には日米いずれかが文書で通告すれば、6ヶ月後には失効するんですよ。つまり、再処理を支えている基本的な協定というのは、アメリカともう一度交渉しなければいけないということになるのは必至で、そこまでに日本できちんと核燃料サイクルというのはどういうふうに考えて進めていくのかという考え方をまとめない限り、これは交渉にもならないわけですよね。
●島田 西川さんね、今の2018年の7月、それはどういう時期かというと、今の安倍さんの自民党総裁期限が切れるのが2018年9月なんですよ、その直前なんです。ですから政治的に安倍総理、安倍総裁にとってもですね、これは大きなテーマとしてこれから先の検討の中に横たわっているんじゃないかと。
●高橋 相手側の政権もわかりませんしね。
●島田 アメリカの政府がどういうふうに判断するか?大統領選挙の結果を見なきゃわからない。これは非常に扱いにくい問題になりつつあるんですね。
●高橋 ただ、党派を問わず、アメリカは基本的に厳しい姿勢で臨んでくるというのは間違いなくて、今の原子力協定のポイントというのは事前に、包括的事前同意制度といって、これは事前に、ケースバイケースじゃなくて、事前に一括して再処理を日本に認めましょうっていう条項がこれ、ポイントなんですよね。そこについて非常にスパンを短くしようとしている傾向があるんですね。去年、韓国とアメリカと原子力協定を改定しましたけれども、有効期限というのを半分にしちゃったんですよね。それで、日本も30年そのまま更新できるか?というと、もうそれほど甘くはないというふうには考えたほうがいいと思います。
●高橋 ただ、党派を問わず、アメリカは基本的に厳しい姿勢で臨んでくるというのは間違いなくて、今の原子力協定のポイントというのは事前に、包括的事前同意制度といって、これは事前に、ケースバイケースじゃなくて、事前に一括して再処理を日本に認めましょうっていう条項がこれ、ポイントなんですよね。そこについて非常にスパンを短くしようとしている傾向があるんですね。去年、韓国とアメリカと原子力協定を改定しましたけれども、有効期限というのを半分にしちゃったんですよね。それで、日本も30年そのまま更新できるか?というと、もうそれほど甘くはないというふうには考えたほうがいいと思います。
●板垣 ありますね。例えば軍の関係だとか、軍事関係だとか、政府内でも「プルトニウムを日本が持っている」ということは潜在的な抑止力になる。どういう意味かというと、ま、すぐにでも原爆を作れるんではないか。たとえば北朝鮮向けに対する威嚇。そういう効果があるというんですが、実体的には日本は日米の間の安全条約で核の傘の下にいるわけですから、そこまでやる必要は全くなくて、そういう考え方自体が時代遅れだと。
●西川 結論としてどうなんですか?
●高橋 現実的に、だって、非核三原則を捨てて、憲法9条も改正をして、日米安全条約も破棄して、おまけに、NPT核拡散防止条約も日本が脱退して、つまり、国際社会から完全に孤立して、今ん北朝鮮みたいになって生き残っていけるとは誰も思っていないですよね。そういう日現実的な議論こそが、原子力行政の将来のあり方というか、考え方を議論するときの、一種の多少歪める要素になっているんじゃないかって思います。
●西川 ま、安全保障の議論の面から見てもちょっとあてにできる議論ではないという感じはしますね。
●関口 少なくても国民はそういう理解をしていないというのも大事ですよね。やっぱり、エネルギー戦略のためにこの核燃料サイクルの議論をしているわけで、そこに変な発想を持ち込むということは国民の理解はないと思います。
●板垣 理解が非常にしにくくなる問題なので、私もその問題はね、ま、そういうふうに考える人もいるんだろうけど、ほとんど無視したほうがいいという感じです。むしろ我々がやらなければならないのは、プルトニウムという非常に有害性のあるものをいかに減らしていくかと、エネルギーを使う過程でですね。だけれども、商業用の原子炉でガンガンやれるほど簡単に扱えるものでもないので、先ほど関口さんも言ったけれども、第4世代の高速炉という形で、やっぱり半減期を短くする、容積を小さくする、有害性を取り除く、そういうことが重要なんだと思うんですよ。
●西川 まぁいろんな、国際的な課題も抱えた問題であるという側面であったというのが最後の議論だったと思います。こうした問題を抱える核燃料サイクルについても視聴者の皆さんからいろんなご意見を頂戴しているようなので、小林さん、紹介してください。
●西川 はい、最後になってきました。議論、4点について議論してきたんですけれども、日本の原子力政策についてのみなさんの提言、考えをお聞かせください。
●板垣 わたしはですね、原発は10年程度でやめるべきだと。今の原発ですよ。新しい原発は別にして。ただ、再生可能エネルギーとか、水素エネルギーの革命はやっぱり、エネルギー革命を起こすべきだと思ってます。わたしはそれを10年程度でできるという感覚を持っていますけれど、すでにあの災害から5年経ってて、5年を無駄にしました。ですから、もう今すぐにでもいいですからこれを取り組む必要があると思います。
●島田 先ほど安全保障に関してのね、議論もありました。その安全保障ということを言いますとね、一番重要なのは抑止力の問題じゃなくて、核兵器の原材料となるものをテロリストに奪われるようなことがあってはいけない。ここが一番大事ですよね。そういったポイントも含めてですね、やはり国民的な議論。これはやっぱり国会が率先してやらなきゃいけない。原子力施設をどう守るか。プルトニウムをどうやって自分たちのもとで正当に管理するか。これがやっぱり大前提だと思うんですね。
●水野 わたしもですね、やっぱりこれはオープンに議論して国民に考える材料をちゃんと提供して欲しいと思いますね。今このもんじゅにしましても、文部科学省の検討会でオープンでやられてきたんですけれども、最近それが終わってですね、今、誰がどこでどう考えているのかが、一切何も情報が伝わってこない状況になっているんですね。先ほど議論したように核燃料サイクルは非常に重要なのにそれがオープンになっていない、これが問題です。
●関口 わたしはやっぱり資源小国の日本ということからすると、エネルギー政策の基本は常に幅広く、選択肢は持っておくということだと思うんですね。そういう意味では今日議論に出たいろんな技術の要素もありますけれども、ある意味ではのちの世代に選択肢を残しておくという意味で、我々だけが全部を決めるというものでもないというふうに考えています。
●竹田 原子力政策、特に原発は国策民営って今まで言ってきたんですね。だったら責任をもって、国策をもっとはっきりさせなきゃいけない。政府が責任を持たなきゃいけない。原発の運営、それから防災、すべてにわたって総合的に責任を持つ、例えばもっときちっとした司令塔のような組織を、きちっと政府が作るべきだと思いますね。
●西川 時間が迫ってきています。今日、こういう原発政策を見てきたわけですけれども、福島原発の事故では、未だに9万人近い方々が避難生活を強いられています。安全神話は完全に否定されて、原発が事故を起こすといかに手に負えないかということを知ることになりました。原子力発電と核燃料サイクルをどうするのか?高レベルの放射性廃棄物をどうするのか?他のエネルギーとの関連の中で総合的な原子力政策、長期的な展望を持って考えていかなくちゃいけないんじゃないかというふうなことが今日分かったと思います。番組をご覧の皆さんとそうした取り組みを考えていきたいと思いますが、やはり信頼感も不可欠だというふうに思います。それでは今日はここらへんで失礼いたします。
ーおわりー

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