【記事66705】原発避難訴訟 東京地裁も国と東電に賠償命令 国は4例目(毎日新聞2018年3月16日)
 
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原発避難訴訟 東京地裁も国と東電に賠償命令 国は4例目

原告42人に計5900万円支払い命令

 東京電力福島第1原発事故で福島県から東京都などに避難している17世帯47人が、国と東電に計約6億3500万円の賠償を求めた集団訴訟の判決で、東京地裁(水野有子裁判長)は16日、両者の責任を認め、17世帯42人に計約5900万円を支払うよう命じた。同種訴訟で国の責任を認めたのは4件目で、国側敗訴の判断が続いている。
 約30件ある同種訴訟のうち、地裁判決は6件目。国が被告とされた訴訟の判決は5件目で、これまでに前橋、福島、京都の3地裁が国の責任を認め、千葉地裁だけが否定していた。
 今回の原告の大半は福島市やいわき市、田村市などに住み、事故で県外に避難した。46人は自主避難者らで、残る1人は国が避難を指示した「緊急時避難準備区域」からの避難者。
 判決は、政府の地震調査研究推進本部が2002年に公表した、福島沖でマグニチュード8の地震が起こりうるとした「長期評価」に基づき、国と東電は同年末までに、10メートル超の津波が第1原発を襲う可能性を予見できたと指摘。「国は06年末までに東電に津波対策を命じるべきで、東電も対策に着手すべきだったのに怠った」とした。
 さらに、避難者は憲法が保障する居住・移転の自由に基づく居住地決定権を侵害されたと指摘。自主避難者も「事故直後に健康被害の有無を判断するのは不可能だった」とし、11年12月までの避難は合理性があったとした。18歳未満や妊婦、その家族は12年8月までの避難の合理性を認めた。

 その上で、避難による生活費増を1人当たり月1万円、家財道具購入費を5万〜10万円などと算出。自主避難の41人について1人当たり308万〜42万円、避難を指示された1人に406万円の支払いを命じた。事故当時、生まれていなかった原告や他の賠償を既に得ている計5人の請求は棄却した。【近松仁太郎】

対処方針を検討

 原子力規制庁の話 国の主張について裁判所の十分な理解が得られなかった。関係省庁とともに判決内容を検討の上、対処方針を検討していく。

原発事故避難者訴訟東京地裁判決骨子

・東京電力は2002年中には10メートルを超える津波が第1原発を襲う可能性を予見でき、06年末までに対策に着手する義務があった
・国も東電と同様、02年中に10メートル超の津波を予見でき、06年末までに規制権限を行使する義務があった
・事故直後に健康被害の有無を判断することは不可能で、原則11年末までの自主避難には合理性があった

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