【記事84250】原発より一般住宅の方が安全 電力会社が最も国民に知られたくない情報 多くの原発が家や会社のビルよりも弱い 樋口英明元裁判官の講演を聴きました 増尾 誠 (京都市在住)(たんぽぽ舎2019年6月7日)
 
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原発より一般住宅の方が安全 電力会社が最も国民に知られたくない情報 多くの原発が家や会社のビルよりも弱い 樋口英明元裁判官の講演を聴きました 増尾 誠 (京都市在住)

◎ 大飯原発再稼働差止め判決を出した樋口元裁判官が、6月1日(土)に京都地裁大飯原発差止訴訟第7回原告団総会で「原発裁判と裁判官の責任」の題で講演されました。
 会場のハートピア京都の大会議室(定員200席)は補助いすが出るほどの超満員でした。大変良い講演でしたので少し紹介します。
◎ 原発差止訴訟で地震を理由として差し止めを認めたのは、樋口裁判長と大津の山本義彦裁判長の二人だけで、止めなかったのは15人にもなるが、この違いは原発の怖さを心底知っていたかどうかだと云ってました。
 樋口さんは、温厚な語り口で、伊方のように高度な専門技術訴訟としてのつじつま合わせの先例に習う必要はなく、社会通念としてのものの道理にかなっているかで判断されるべきだと語っています。
 この判決が圧力に屈することなく特別に勇気あるものなどという評は全くの見当違いで、いかに「当たり前」の結論であるかを平易に説明してくれました。
◎ 原発の耐震強度は大飯の設計基準では建設当初は405ガル(稼働中の現在でも856ガルにすぎない)でしたが、実際に観測された我が国の記録では4022ガル(宮城内陸地震2008)を最高に、1000ガルを超えるものも多数あります。
 東日本大震災では宮城県で2933ガルの観測されていますが、震源地から離れている福島第一原発では600―700ガルでそれほど揺れていないのに、この大参事です。
◎ ところで、三井ホームの耐震基準は5115ガル、住友林業は3406ガルだそうです。それに、住宅メーカーは何十回となく実験をしており、机上の空論でコンピューターに数字を入れているのと違います。
 だから原発より一般住宅の方が安全です。原発容認派の理論の強振動予測理論などによる「大飯には700ガル以上は来ません」などというのは全くの仮説にすぎず、考慮するに値しない。
◎ 裁判官の伝統に反して、高裁で破られた自分の判決の中味について裁判官を辞めた後で話をするのは、これが普通の事件でなく、国の存続の問題であり、その危険性を知ってしまった以上はそれをしゃべるのが私の責任だと云ってました。
 その他、最高裁の裁判官になる人かどうかは経歴を見ればわかる(定年までの40年ほどのうち、裁判官としては20年以内だけで、法務省などに出向した人)などなど盛り沢山でした。
◎ この論旨は、岩波の「世界」2018.10月号(p.58-69)に載っていますが、その中の一文「多くの原発が自分が住んでいる家や自分の勤めている会社のビルよりも弱いということ、そしてその根拠が不可能とされる地震予知に基づくものであることは、間違いなく電力会社が最も国民に知られたくない情報である」はなかなか説得力あります。

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