[2013_07_31_01]泊審査申請 最大津波7.3メートル想定 北電「南西沖並み」前提 専門家、評価過少の声 堆積物「データない」(北海道新聞2013年7月31日)
 北海道電力が原子力規制委員会に出した泊原発(後志管内泊村)の安全審査の申請書で想定している最大津波高「海技7・3メートル」は、1993年の北海道南西沖地震と同規模の地震を前提に算出されていたことが分かった。専門家の中には、北海道の日本海側で過去に南西沖地震より大きな地震があった可能性は否定できないとし、北電の津波評価を過少と批判する声もある。

 申請書によると、北電は過去の文献から北海道西岸に影響を及ぼした津波を抽出、記録が残る中では南西沖地震による津波が最も高いとした。このため、津波高の算出では、前提条件となる地震規模「モーメントマグニチュード(Mw)」を、南西沖地震を再現した7・84を下回らないよう7・85と設定し、泊原発敷地前面部で海抜7・3メートルの津波が予想されるとした。
 北電は地震規模を南西沖地震並みとした根拠の一つに、道の防災会議地震専門委員会が3月にまとめた報告書を挙げ、申請書で「(道の調査では)明瞭な津波堆積物のデータは得られておらず、南西沖地震津波が最も高い津波高とされている」と記述している。
 これに対し北大大学院の西村裕一助教(古津波学)は、同じ道の専門委が北海道の日本海側で調査した223地点のうち、32地点で津波堆積物があった可能性があると明記している点を重視。「津波堆積物は研究途上であり、現時点で明瞭なデータが得られていないことをもって、過去に南西沖を超える津波がなかったとは断定できない」と指摘する。
 実際、道の専門委は昨年度から日本海沿岸の津波想定の見直しを検討していたが、今年3月の報告書に盛り込むことを見送った。科学的根拠に基づき津波高を見直すには「広域かつ長期間にわたる地質学的記録が必要」との理由であり、南西沖地震を超す超巨大津波が日本海側を襲った可能性は排除できないと考えているためとみられる。
 道の専門委の委員を務めた北大の平川一臣名誉教授(自然地理学)は「北電のMw7・85という想定は妥当だが、安全性を考慮すれば8・0程度の想定も必要かもしれない。超巨大津波はたとえ一地点でも襲えば、周辺に広く津波が到達したと考えられる。北電は津波堆積物のあるかもしれない32地点を十分に検討する必要がある」.と話す。
 泊原発の敷地は海抜10メートルにあり、津波想定の高さによっては防潮堤の完成が再稼働の必須条件となる。

 モーメントマグニチュード(Mw)

 断層の大きさと滑り量から求める地震の大きさ。気象庁が通常、地震計で観測した短周期の地震波振幅に基づいて発表している気象庁マグニチュード(Mj)よりも、地震のエネルギーを正確に反映する特徴があり、国際的に広く使われている。
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