[2018_09_07_28]北海道震度7 震度2で「非常時」に 北電・泊原発 外部電源喪失 安全の「とりで」不安抱える(東奥日報2018年9月7日)
 北海道を襲った6日の地震で、北海道電力泊原発は停電によって外部電源を約9時間半失った。震源から遠く離れ、原発周辺は震度2程度の揺れだったにもかかわらず、一気に「非常時」態勢に陥った形だ。外部電源損失の直後に非常用電源が起動しており、政府や北海道電は安全性を強調するが、原発の思わぬもろさが露呈した。

 「事態が悪化しなければいいが」6日朝、泊原発の外部電源喪失の一方を受けた北海道電関係者の頭に、7年半前の東京電力福島第一原発事故がよぎった。
 原発は、核燃料が熱で溶け落ちる事故を避けるために原子炉や燃料を貯蔵するプールの冷却を続けなければならない。福島第1原発事故では外部電源に加えて非常用電源も使えず炉心溶融を起こし、大量の放射性物質をまき散らした。
 別の発電所でつくった電気を原発に供給する外部電源は、深刻な事故を防ぐ「最初のとりで」だ。
 しかし泊原発では、午前3時半ごろから午後1時まで、このとりでが崩れる状態となった。運転停止中だが、計1527体の使用済み燃料などをプールで貯蔵している。即座に敷地内の非常用発電機6台が起動し、燃料の冷却を続け、悪夢の再来は避けられた。
 泊原発は3系統の送電線で外部から電力を受けており、一つの送電線でトラブルが起きても、残りの送電線で電力供給を続けられるように安全対策を「多重化」している。
 しかし今回の地震では、100`以上離れた火力発電所が停止し全系統が使えなくなった。「安全性は確保されている」。経済産業省担当者はこう強調するが、ある政府関係者は「外部電源喪失が長期にわたる場合は怖い」と吐露した。
 原子力規制庁内部では「電力の安定供給は経産省の所管だ。今回の停電は原発の問題の域を超えている」との声が聞こえ、対応の難しさをうかがわせた。
 原子力資料情報室の上沢千尋研究員は「通常ではない状態だ。北海道電も規制庁も想定していなかったのではないか。別の地震の発生など悪条件が重なればどうなったか」と述べ、政府や北海道電の見通しの甘さを指摘する。
 北海道電は「北海道本州間連系設備」を増強し、本州の電力会社との間で電力を融通し合う能力を高める計画だが、今回の地震発生時には機能せず、結果的に道内全戸の停電という極めて異常な事態を招いた。
 福島第1原発事故当時は、周波数の異なる東日本と西日本で電力のやりとりがうまくいかず、首都圏で大規模な停電が起きた。
 ある北海道電関係者は「電力融通の対応をしっかりしていれば、停電は防げた可能性がある」と話し、教訓を生かし切れず、備えが不十分だったとの思いをにじませた。
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