[2021_02_18_07]検証 東日本大震災10年 5 原子力規制 規制委 「技術的観点で」が信条 専門家5人 高い独立性(東奥日報2021年2月18日)
 2012年9月に発足した原子力規制委員会。核燃料や地震などを専門とする委員5人が、旧規制機関の原子力安全・保安院と原子力安全委員会などを統合した事務局の原子力規制庁を率いる。国家行政組織法3条に基づく「三条委員会」で独立性は高く、政治や経済的な事情にとらわれずに科学的、技術的観点からの規制を信条とする。
 原発再稼働に必要な審査では厳格な姿勢を崩さず、これまで27基の申請に対し16基が合格、うち9基が再稼働した。思うように再稼働が進まない電力業界などから繰り返し批判を浴びてきた。
 初代委員長の田中俊一(76)は新規制基準施行後の13年7月、審査にかかる時間を「1基につき半年から1年」と見通した。
 しかし、最も早く再稼働した九州電力川内(鹿児島県)で1年2カ月かかり、北海道電力泊は、申請から8年近くたった今も審査が続いている。
 「審査がきびしすぎる」「電力需給や地元経済も考えて」。しびれを切らした経済団体や立地自治体から、こうした声が寄せられる一方、反対派の有識者や市民団体からは「規制基準や審査が不十分だ」「再び事故を招く再稼働をなぜ認めるのかとの抗議も来る。
 規制庁幹部は「右からも左からも石が飛んでくる」とこぼすが、「それが、われわれの業務が偏っていない指標になる。片方からしか飛んでこなくなると危ない」とも話す。
 ある規制庁職員は保安院時代、保安院としてまとめる原発の審査書類を持ってくるよう部下に指示すると、「電力が持っています」と平然と断られたことがある。重要書類の作成まで電力側に委ねるもたれ合いの構図だ。
 規制委の審査会合は、こうした悪弊を絶つため公開が原則だ。担当の委員も出席し、「その地震設定は大いに疑問だ」「事故の反省を踏まえるべきだ」と厳しい指摘が飛ぶことも珍しくない。
 職員と電力の事前の打ち合わせで、指摘を聞き入れない電力側に激高した職員が机上のぺットボトルを設げつけ、配置換えとなるトラブルもあつた。電力関係者は「(保安院時代と)力関係は変わった」と漏らす。
 経営や電力需給の観点から再稼働を進めたい電力測と、技術的観点に絞る規制委の議論はかみ合わない。
 両者は定期的に公開の場で意見交換を重ねているが、表面的なやりとりに終始している。
 昨年以降、テロ対策施設の設置が期限に間に合わず各地の原発が停止しているが、電力側はぎりきりまで規制委に実情を打ち明けなかった。
 現委員長の更田豊志(63)は「新しいことを言うと何を言われるか分からないと思っているのだろう。規制委が信頼されていないということだ」と、いらだちを隠さない。
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