[2022_04_18_01]<社説>北電泊停止10年 原発担える組織なのか(北海道新聞2022年4月18日)
 
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<社説>北電泊停止10年 原発担える組織なのか

 北海道電力泊原発が全基停止してから来月5日で10年になる。
 この間、北電は2度の大幅値上げを行い、道民は全国一高い水準の電気料金に苦しんできた。
 再稼働後に値下げを目指すと言うが、原子力規制委員会の審査は異例の9年近くも続く。
 慎重に審査するのは悪いことではない。とはいえ、規制委は北電の安全意識の低さが原因として企業体質改善まで求めている。
 経営判断の遅さを批判された藤井裕社長は先週、規制委に「猛省している」と落ち度を認めた。
 東京電力柏崎刈羽原発では合格後に核防護不備が発覚し、審査制度自体の信頼性も揺らいでいる。
 それなのに審査対応すらできぬ北電に原発が担えるのか。猛省するなら廃炉も検討し、身の丈に合った経営を目指すべきだ。
 新規制基準の審査では2013年7月に第1陣で再稼働を申請した5原発のうち、泊以外は4年以内にすべて合格している。
 泊は焦点だった敷地内の活断層否定に8年間を費やした。北電のデータが不備続きだったためだ。
 ところが昨年10月に5年8カ月ぶりで再開した火山対策審査でも資料を古いまま提出した。この間の新たな火山学の知見は全く反映されず、規制委は「安全性追求の姿勢に欠ける」と反発している。
 規制庁幹部は今年1月の会合で個人の感想としながらも「いたずらに審査を長引かせたいのか」と述べた。極めて重い発言だ。
 北電は先週に「社内でのコミュニケーション・情報共有が十分でなかった」と反省の意を示した。
 4年前の全域停電時や、過去に再生可能エネルギーを「空き容量がない」と接続拒否した際に道民に見せた尊大さとは大違いだ。
 説明完了は予定より1年近く遅れ、早くても来夏まで続く。
 再稼働しない間も毎年度100億円以上ともされる価値の核燃料調達は続くとみられる。電気料金へのつけ回しは許されない。
 規制委が問題視するのは、火山・津波解析などを外部や出向者に「丸投げ」する北電の体質だ。常に受け身で専門的な議論が深まらず、意思決定も迅速にできない。
 泊の非常用電源が9年間接続不良だった問題でもメーカー任せの運用が露呈した。電力地域独占体制の時の感覚のままで、自ら安全を担う意識が薄いのではないか。
 ロシアのウクライナ侵攻で原発攻撃の危険性は増した。緊急時に北電では不安だ。国は安全保障面からも厳格に判断してほしい。
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