【記事54040】原子力安全・保安院も原子力安全委員会も原子力規制委員会もいい加減な耐震規制 耐震規制の「落としどころ」をにぎっていた電力会社 原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!その133 木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)(たんぽぽ舎メルマガ2017年4月21日)
 
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原子力安全・保安院も原子力安全委員会も原子力規制委員会もいい加減な耐震規制 耐震規制の「落としどころ」をにぎっていた電力会社 原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!その133 木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)

 岩波「科学4月号」の特集「検証なき原子力政策」には沢山の興味深い論文がある。ここでは、添田孝史さんの<耐震規制の「落としどころ」をにぎっていた電力会社−東電事故につながるバックチェック先延ばしを開示文書から探る>を紹介する。
 今の「新規制基準」の耐震規制が全く信用できないことは以前に何度も言及し
てきたが、添田さんは、原子力規制委員会が昨年9月と11月に開示した文書から、3.11前の東電事故につながるバックチェック先延ばしの規制行政を次のように明らかにした。


○当時の原子力安全委員会(原案委)が「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(2006年)の策定において、おもての審議会とは別に、原案委が原子力安全・保安院(保安院)や電力会社と裏交渉していた。本来科技庁安調室が主体となって検討すべきとしつつも、電力は全面的にバックアップすることになり、原案委が正式に耐震指針検討分科会を立ち上げる前に、非公開の検討会をなんと9回も開いたのだ。
○例えば、安全信頼性の向上を検討した内容には「直下地震、考慮すべき活断層、地震動評価法、上下動評価法、津波など世間の注目を浴びている項目の検討指針が性能規定化されれば、最悪の場合、既設プラントの運転継続に多大な影響がある。関係者の最大の関心事であり、現段階ではほぼ落としどころが詰められている」とある。
○現実に、既設炉の対応「速やかに既設炉について指針本文「4」、耐震設計の安全性に係る評価を行い…」から「速やかに」が削除され、バックチェックも指針本体に盛り込まれなかった。
○指針策定の過程で、耐震指針検討分科会基本WGグループリーダーだった近藤駿介氏(当時東京大学教授、2004年から原子力委員長、現在原子力発電環境整備機構NUMO理事長)の影響が大きかった。近藤駿介氏の「まさか分科会やWGの意見をとりまとめて指針ができるとお考えではないのでしょうが。…、それでは時間がかかり過ぎるでしょうから、電力や原子力発電技術機構NUPECで行われてきた作業結果を踏まえての原案作りをどこかに投げ、その成果を議論することにしないことにはまとまりようがないと思っています。」なるコメントが残っている。
○こうして、電力会社など利害関係者が、透明性のない形で指針策定作業に関わるようになり、東電は作業だけでなく指針案そのものに口を挟むようになっていった。
○一方、今回原子力規制委員会が開示したのは2004年8月までの文書であり、指針が実際に改訂された2006年8月までの2年分と、それ以降にバックチェックをどう進めるかを打ち合わせた文書は「持っていない」と原子力規制委員会が通知してきた(規制委:行政文書不開示決定通知書)。より新しい文書がないというのは腑に落ちない。


 電力会社の補正書を白枠黒塗りで公開したり不開示決定通知を出す原子力規制委員会は、不存在・後に発見・黒塗り開示が流行っている安倍政権と同じだ。
 それにしても、過去の規制行政を担っていた原子力安全委員会も原子力安全・保安院も、はたまた現在の規制行政を担っている原子力規制委員会も、常に原子力マフィアの方を向いて規制行政をしていたことを、この添田さんの文章が改めて明らかにしてくれた。原子力規制委員会はやはり信用できない。

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