【記事17790】「おとなしかった」昔の地震波(日経BP社2006年12月6日)
 
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「おとなしかった」昔の地震波

 阪神・淡路大震災以前は、超高層建築の構造計算では、次の三つの観測波が使われることが多かった。

 ▲エルセントロNS波(1940年、米国、NSは南北を意味)
  最大加速度342ガル(cm/sec2)
  最大速度33カイン(cm/sec)
  継続時間54秒
  卓越周期0.6秒、1.0秒、2.4秒など

 ▲タフトEW波(1952年、米国、EWは東西を意味)
  最大加速度176ガル(cm/sec2)
  最大速度18カイン(cm/sec)
  継続時間54秒
  卓越周期0.44秒、0.84秒、1.64秒など

 ▲八戸EW波(1968年)
  最大加速度230ガル(cm/sec2)
  最大速度34カイン(cm/sec)
  継続時間51秒
  卓越周期2.6秒

 卓越周期とは地震波のうち最も大きな振動を示す波の周期。この卓越周期と建物の固有周期が一致すると、共振して大きな被害を出すことがある。
 50階建て、階高 3.5 mの超高層建築の場合、固有周期は鉄筋コンクリート造だと 3.5 秒、鉄骨造だと 5.3 秒になる。三つの地震の卓越周期は 1.6〜2.6 秒なので、50 階建ての超高層と共振する可能性は少ない。
 三つの地震波の特徴は最大加速度 342 ガル以下、最大速度 34 カイン以下、継続時間 50 秒台であること。阪神・淡路大震災以降の地震波と比較して「おとなしい」のが特徴だ。こういった数字を参考にして、超高層の構造計算では速度として 40〜50 カイン(加速度 400〜500 ガルに相当)を採用。三つの地震波を速度 40〜50 カインを基準にした加工波に変換し、その加工波で揺さぶられても建物が安全かどうかをチェックしていた。

※引用者注:本文に図はないが、Wikipediaから、エル・セントロ波(インペリアル谷地震の地震波形)を以下に補足した。

KEY_WORD:HANSHIN_:基準地震動: