【記事45400】平成28年度原子力規制委員会第22回会議議事録_議題3_島崎前原子力規制委員会委員長代理との面会について(原子力規制委員会2016年7月20日)
 
参照元
平成28年度原子力規制委員会第22回会議議事録_議題3_島崎前原子力規制委員会委員長代理との面会について

(前略)
○田中委員長
 どうもありがとうございました。
 最後の議題は、急遽、昨日の夕方、加わったものですけれども、昨日、島崎前原子力規制委員会委員長代理と面会したというか、いろいろな意見を交わしました。その結果について、その内容について、私と石渡委員はそこに出たわけですけれども、ほかの委員の方々にも全体的な内容を報告していただいて、今後の対応について、少し議論をしたいと思います。
 まず、昨日の内容について、櫻田原子力規制部長から説明をお願いします。
○櫻田原子力規制部長
 原子力規制部長の櫻田でございます。
 資料3を用いて御説明いたします。
 この資料は、一枚紙がありますが、その後ろに別紙という形で、昨日の面会の速記録、これはまだきちんと精査できておりませんので、誤字脱字とか、少しあるかもしれませんが、そこを御容赦いただければと思いますが、それを用意しました。大部でありますので、ポイントを御紹介、これからいたしますが、説明の工夫上、ここを御覧いただきたいというところを下線を引くという形にしてございます。
 まず、最初の部分、1ページ目の下から始まっていますけれども、先日、原子力規制委員会に御紹介した試算結果について、その試算の前提とか、プロセスにおいて、いろいろな課題がありました。本来、そこのところをきちんと御説明をすべきだったところ、できていなかったところがありますので、まず、そのあたりも含めて島崎前委員長代理に説明させていただきました。この話は、本来であれば、原子力規制委員会の先生方に御説明をしておくべきことだったと思いますが、そういう意味で、外部の方への説明と順番が前後してしまった形になっております。おわび申し上げたいと思います。
 中身を御紹介しますが、1ページ目の下のところからですけれども、今回の試算というのは、入倉式を別の式に置きかえて、あとは関西電力と同じやり方で地震動を計算してみたらどうかと、こういう命題であったと理解をしております。そして、関西電力のやり方というのは、いわゆるレシピ、地震本部が作成した強震動予測手法に基づくものでありまして、また、このレシピというのは、断層全体が均質なものということではなくて、アスペリティという強い震動を作り出す一部の領域がある、特性化震源モデルと言われていますけれども、こういったモデルを前提に体系化されているものである。
 それから、このレシピの中では、入倉式などで計算をした地震モーメントから、最終的には地震動まで求めるという全体の体系が構築されたものである。こういうものを関西電力が使ったということなのですけれども、一方、今回やろうとしたような、武村式で地震モーメントを求めた上で、そこからアスペリティの面積、応力降下量を求めるという方法は、このレシピの中にないということがありますので、関西電力と全く同じやり方で、地震モーメントの計算のところだけを入れかえるということは、そもそも難しかったと、こ
ういうことがありました。難しいということは、予想しながら試算をしていったわけですけれども、やはりいくつか矛盾が生じていたことがあったということであります。それを3点御紹介しております。
 1点目は、2ページ目の下の方に線を引っ張っておりますが、まず、武村式で求めた地震モーメントでアスペリティの総面積を計算するというやり方がありますけれども、それをレシピのやり方でやると、1,840平方キロメートルという数字になりますが、そもそもの断層の面積は951平方キロメートルなので、これよりも倍近い、大きなアスペリティがあるという変な話になってしまった。これが入り口のところなので、そこでそもそもつまずいてしまったということがありました。
 2点目は、そういう結果が出てしまったので、普通であれば、アスペリティの面積がそこで求まって、その面積のアスペリティをどこに置くかという話になっていくのですけれども、そもそも、どんな面積のアスペリティを置けばいいのかというところからして、レシピに従った形ではできなくなってしまったので、では、どんな大きさのアスペリティを置こうかということを考えたときに、3ページ目の5行目ぐらいのところにありますけれども、なるべく大きな地震動が出るようにするには、アスペリティを小さくした方が出ると、こういう関係にありますので、断層全体がアスペリティという形ではなくて、むしろ関西電力と同じ大きさの小さなアスペリティを置きましょうと、そういう形にしたというのが2点目であります。ここで1つ、レシピとは違うやり方をとったということです。
 それから、アスペリティの応力降下量、Δσaというパラメータがありますが、これもやはりレシピに従って求めることができないので、短周期レベルという別のパラメータがありますが、これは地震モーメントから直接出てくるものですけれども、これと矛盾しないものを算出するというやり方を何とか見出して、それで計算をすると、22.3メガパスカルという値が出てきて、これを使いましょうという形にしました。
 ところが、断層全体の地震モーメントが武村式で計算すると、とても大きなものになっていて、アスペリティ以外の領域を背景領域と言いますけれども、そこの応力降下量を少し大きくしないと、断層全体の応力降下量、地震モーメントが再現できないといいますか、整合がとれないという形になるので、背景領域の応力降下量を大きくせざるを得なくなった。そうすると、普段、普通に理解されている背景領域の応力降下量の3倍ぐらいを持たないといけない、こういう形になって、矛盾なのですけれども、そこは気にせずに何とか計算しようということで先に進めたというのが背景にあったということであります。したがって、申し上げたかったのは、こういう無理があったということであります。
 もう一点、これも原子力規制委員会に計算結果をお示しするときに、ここまで含めてお示ししておけばよかったのかもしれないのですけれども、できていなかった話として、入倉式の基本ケースの計算をこの前、お示ししました。それと関西電力が基本ケースで行っていた計算の値とが違っていて、関西電力の計算結果の方が大きくなっていた。逆に言うと、原子力規制庁が入倉式の基本ケースの計算結果を出したものが小さく出ていた、こういう話がございました。
 ここに数字が出てきていないので、1例申し上げますと、関西電力の基本ケースでは、東西方向の0.02秒の周期のところの加速度が596ガルという数字になりますが、原子力規制庁の計算では356ガルという話になっていて、単純に割り算をすると、1.7倍ぐらいの差がある、こういうことがありました。
 これはどうしてそうなるのかということなのですけれども、実は、地震動を計算していく過程で、統計的グリーン関数法という手法で最終的に地震動を求めていくのですけれども、そこの計算の過程で、関西電力が具体的にどうやったのかというところがきちんとわかっていないところがありましたが、我々の中では、ある種の合理的な考えで、こういうふうに置きましょうということでやった結果でありまして、多分、そこが違うのではないかと想像しています。
 例えば、要素地震波を人工的に作成するというプロセスを経ますけれども、そのときに乱数を使うわけですが、その乱数の出し方とか、結果のとり方とか、いくつ乱数を出すとか、そういう処理の話。それから、これは横ずれ断層ですけれども、地震動の出方、放射特性というのがありますが、これを関西電力は東西南北、分別してやっているのに対して、原子力規制庁では等方の放射を考えたと、こういう違いがある。これらが関西電力の基本ケースと入倉式を使った我々の計算結果の違いになったのではないかと考えているところであります。
 以上のようなことを申し上げまして、地震モーメントの算出を入倉から武村に置きかえて、あとは関西電力と同じやり方というのは、やはり難しかったというのが正直な感想だということを申し上げました。
 では、その結果をどのように使えばよろしいかというところになってくるわけですけれども、基準地震動はある種、確立したやり方で求めてきているので、そういったものとの比較ということで考えれば、厳密に何倍になるのかということをやるような比較に耐えられる精度があるとは考えられないのではないかというのが私どもの感覚であるということをお伝えしたところであります。
 これに対して、島崎前委員長代理は、我々がやった計算はとてもいい計算だと、そういうコメントをされました。5ページ目の上の方に線を引っ張っていますが、地震モーメントそのものが3倍になってしまうので、ずれの量も、応力降下量も大きくなるのは当然のことであって、それは矛盾ではなくて、最初の式を変えた結果そのものであって、かつ、その後の、我々としてはえいやっと無理をしたと申し上げてありますし、考えておりますが、先生から御覧になると、きちんとパラメータを選んでいただいたと、そういう評価をしておられました。
 それで、いろいろとやりとりがあるのですけれども、少し長くなるので飛ばしていきまして、島崎先生が資料を用いて御説明されたところを少し御紹介いたします。8ページの下の方ですけれども、熊本地震の知見を、断層の長さと地震モーメントの関係をプロットしたグラフを用いて説明しておられまして、今回の熊本地震をそういうグラフにプロットすると、入倉式よりも武村式の方に近い関係にあることを紹介されました。
 それから、9ページの中ほど以降ですけれども、地震動を求めるときに、地震モーメント、入倉・三宅式を使うことが一般的かというと、必ずしもそうではないということをお話しされていました。それ以外の式に基づいて震源の大きさを推定して、同じような特性化震源モデルを用いて地震動を求めるということが、地震本部や中央防災会議で行われている。
 地震本部の場合は入倉・三宅式が補助的に使われているのだけれども、そのまま扱うと、なかなか合わなくなるので、調整をわざわざやっているということがあって、そういったことを見ても、入倉・三宅式は断層の面積を大きくし過ぎるようなものになっていることがわかるということをお話しされていました。
 それから、我々の試算結果についてどう感じたかということをお話しされていました。これもポイントだけ申し上げますが、先ほど御紹介した、入倉式を用いたときの基本ケースに関する我々の試算結果と、関西電力の計算の違いについて、まず、お話しされていまして、関西電力といろいろ仕様が違うので結果が違うということだけれども、これは本来、同じ設定で同じレベルになるべきものであるということなので、解釈するときには何らか補正が必要になる。同じような補正は武村式の結果についても当てはめる必要がある。そうすると、かなり強い揺れが得られる。我々が示した数字よりもっと大きなものになることは間違いない。
 さらに、ここに1.5倍とありますけれども、これは短周期レベルの不確かさで1.5倍をしてみる、こういうことを我々はやっていますけれども、こういったことを武村式による計算結果に対しても行うべきであって、それもやっていくと、大変強い揺れが出てきてしまう、そういうことではないかと考えると、そういうお話であります。
 11ページの上の方ですけれども、入倉・三宅式は、津波だけではなくて地震動も過小評価になることは、今回、これで言えたのではないかと。そこで提案をさせていただきたいという話になっておりまして、1点目は、過小評価のおそれがある入倉・三宅式は使わなくてもいいのではないか、それ以外の式を使ったらどうかというのが1点。
 それから、2点目は、観測されている強震動がいろいろと増えてきているので、そういったものをそのまま利活用するべきではないかということでありました。
 3点目は、強震動の専門家がいろいろな提案をされているので、それを聞いて、検討して、もっともだと思われるものを採用していくということをやってはどうか。
 4点目は、試算の結果の関西電力との違いについてでありますが、ここの違いがあることによって信頼性がなくなっているということがあるのだとすれば、A社とか、研究所とか、そういうところで公表されている限りのパラメータを使った計算を依頼してやってもらって比較すると、そういうことをやってはどうかと、こういう御提案をいただきました。
 その後、やりとりがずっとありまして、長いので、いくつか御紹介をすることで終わたいと思いますが、14ページの上の方で石渡委員の御発言がありまして、兵庫県南部地震のデータ、武村式のデータの中に入っているものについて、その断層長さが25キロメートルになっていることについて、島崎先生に御見解を伺っています。
 島崎先生のお話は、まさにそこが地震学者の間でも議論があって難しいと。実際に40キロとか、そういうように入れてしまえば、明らかに武村式は大きな地震モーメントが出てくる。一方で、その少し下の方ですけれども、神戸の地震は、神戸側で地表まで割れずに地下だけでずれているという、やや特殊な地震であるということもあるので、おそらくそのことを武村さんは考慮されて25キロという数字を使うような形になったのではないかと、そういうことをお話しされていました。
 ただ、石渡先生は、我々の審査では、もちろん地表に出ている断層を一応、重視してやっている。すぐ近くに別の断層があって連動するという場合には、それも含めてやるということで、単純に短い断層をそれだけ取り出した評価というのはしていないということをお話しされて、そこはそのとおりですというお答えが島崎先生からはありました。
 それから、もう一度、今回の計算について、16ページの下以降でやりとりをしています。今回はレシピに従ってやらざるを得なかったのだけれども、レシピの想定範囲を超えた形になっているので、結果について、なかなか科学的に解釈するのが難しいようなものが出てきているという私からのコメントに対して、先生は、そこは見解が分かれるところですねとおっしゃって、地震モーメントを変えて、レシピどおりにいかないということなのだけれども、全体的な統合性を考えて、当然、応力降下量は増えるということをそこに持ってきて、全体として整合性のあるモデルを作られたということが今回のやったことだと思うので、先生御自身は大変評価していると、改めて同じコメントでありました。
 それから、19ページの下の方で、短周期レベル1.5倍の不確かさの重ね合わせの話がありました。この点については、島崎先生のお話ですけれども、中越沖地震のときにそういう話になったと。これは、今、議論の対象になっている入倉・三宅式が過小になるという話とは別の問題であるということでありまして、少しやりとりがあって、飛ばしますけれども、21ページの上から5行目ぐらいのところにありますが、1.5倍と武村式をバーターという言い方をされていますけれども、これは独立で別々にやるべきだという話ではなくて、そこは両方合わせてやるべきだと、こういうことをおっしゃっていました。
 その不確かさの重ね合わせについて、22ページで少し御紹介していますが、私から、武村式を使って地震動評価するときに、どういう不確かさを重ね合わせることが妥当なのかということについては、これまで実績もないので、特に審査の中ではやっていないので、見解はないということなのではないでしょうかと。そこについて、先生がそういうことをすべきだと主張されているように思われるのですがというやりとりを少ししたのですけれども、先生のお話は、比較をして影響があることがわかったので、入倉・三宅式は使わない方がいいと、そういうことを言ったということであります。
 少し飛ばします。23ページの10行目ぐらいのところの島崎先生のお話で、本来やるべきではないことをやったということなのだけれども、自分としては、やってほしいことをまさにやってもらったということで、そこがまるっきり違った見解なので、そこから先の結論も当然違ってくると、そういうことではないかとされています。
 すみません、もう少し線を引くべきところを、今、気がついて、引いていないのですけれども、御紹介させてください。23ページの下の方の石渡先生のコメントです。これは石渡先生がお話しされたことで、今回のこちらが計算させていただいたところは、やはり非常に無理があるということ。それから、下から7〜8行目のところですけれども、今回の1例の計算結果だけではなくて、今まで審査を積み重ねてきた中での判断というものを重視せざるを得ないのではないか。下から2行目ぐらいのところですけれども、今すぐに武村式を取り入れて判断するというのはなかなか無理があるのではないかというふうに思うという、そういう御発言をされています。
 これに対して島崎先生は、24ページの2行目からですけれども、やはり計算をどう評価するかというところで違っているので、自分としてはいい計算をしたというふうに思っているので、そこは違いますねということです。
 田中委員長のコメントとして、田中委員長のコメントは3行目ぐらいのところからですけれども、事務局はちょっと無理にやったのだということなので、本当にきちんと計算できるような状況にあればやるべきだと思うけれども、どうもできないことをベースに議論をしていてもしようがないという感じが若干していると。それを前の原子力規制委員会でこれでいいのだろうということを申し上げましたけれども、そこも含めて少し議論をする必要があるかなというふうに思っているという御発言をされています。
 計算結果をめぐるやり取りは以上でありまして、最後に、25ページの下の方ですけれども、田中委員長のコメントとして、島崎先生の主張は入倉・三宅式はやめなさいという結論だと思いますけれども、すぐに残念ながらやめるというほどの手だてを我々は持っていないと。むしろ島崎先生の分野の世界ではっきり結論ができるだけ早く出るということを期待したいという御発言がありました。
 更にもう少し突っ込んで、26ページの真ん中下あたりですけれども、この問題は原子力だけではない。世の中にあるほかのいろいろな建造物、構築物、そういったものに対しても影響がある。非常に大きな社会的なインパクトを持つものなので、そういうことを踏まえて、その分野の方は、こういうものがスタンダードだというそのときの最善のレシピを是非出していただきたいというお願いがあるということで、それを御発言されました。
 ちょっと長くなりましたけれども、ざっと御紹介するとこのようなやり取りであったということであります。
○田中委員長
 ありがとうございました。
 昨日、私と石渡委員は直接そこで議論に参加させていただきました。私の印象では、私の印象というか、私の理解では、原子力規制庁に今回行ってもらった計算というのは、私自身の反省でもあるのですけれども、島崎先生というかつて大飯の審査の責任を果たしていただいた方の御指摘だということがあって、できるだけその疑問を払拭できればということで、無理な計算をお願いしたなという感じがしています。つまり、やれないことをお願いしてしまったなというのが私の理解です。
 そのことについては、残念ながら、島崎先生とはその意見が一致することはなかったということです。
 櫻田部長の方からどういうところが、先ほどもありましたけれども、面積とか応力降下量とか、そういうところ、あり得ないような状況が生まれてしまっているというようなことがありました。
 そういうことについて、では、そういうことが本当に起こるのか、島崎さんはそれでいいのだと言っていたのですけれども、そういうことが起こり得るのかどうかということが、必ずしもお言葉だけで、実際にこれまでの起こっている地震のデータから示すというようなことはなかったように、そういうデータの提示はなかったと思っています。
 そういうことで、非常に私自身もこの扱いに正直言って今困っていますが、ただ、このままにはしておけないので、まず、原子力規制庁から説明のあった計算結果の位置付けについて、もう一度櫻田部長の方から確認をさせていただけませんでしょうか。要するに率直に、ちょっと無理をし過ぎましたということであれば、そのことをもう一回確認させていただけますか。
○櫻田原子力規制部長
 規制部長の櫻田でございます。
 まず、今回のこの試算を、前回、原子力規制委員会に御説明したときに、こういう課題があるということをきちんと御説明しておりませんでした。それは率直に手落ちだったと思いますし、おわび申し上げなければいけないと思います。
 さはさりながら計算の過程で直面した課題は事実でありまして、それを計算した基盤グループも含めて、私どもとしてどう考えるかということについての今お尋ねだと思うのですけれども、先ほど、昨日の説明の中にどのように申し上げたかということを書いているので、そこを御覧いただければというふうに思いますが、私どもとしては、そういうある種、無理くりというのがとても雑駁な言い方ですけれども、レシピを使うという前提で武村式を地震モーメントに使う式として採用すると、そのレシピどおりになかなかできないということになるところを、いろいろな工夫をして最後の地震動にまで行き着くようにしたと、そういうことであって、応力降下量、特に背景領域のところが大きくなってしまうとかということが残った形になっている。
 ほかにもちょっと残っているところはあるのかもしれませんが、そういうある種、自然現象として我々が知っている範囲を超えるようなことが残った形で出してしまったものでありますので、あの数字自身は、そういう意味では、この中にも書いてありますけれども、何かその値を使ってほかの基準地震動ときちんと比較をして、大きいからどうの、小さいからどうのと、そういうようなことを議論できるような精度ではない。
 もっと言うと、信頼性のそんなに高いものではない。せいぜいレベル感といいますか、どのぐらいの違いがあるのかということを、本当にこれも口語的な表現で申し訳ありませんけれども、ざっくりとした見方をするというようなことぐらいにしか使えないものなのかなというふうには思います。
○田中委員長
 そういう御説明がありました。それで、石渡委員からは、どうも武村式で今回やったのは、木に竹を接ぐようなとおっしゃっていたように思うのですけれども、その辺について少し石渡委員の昨日の議論も踏まえて、どんな感想を持ったかちょっと紹介いただけますでしょうか。
○石渡委員
 今回、非常に詳しくかなり内容に、計算の過程に踏み込んだ説明をしていただいて、ありがとうございました。ただ、この説明は、本来、前回の原子力規制委員会でやるべきだったというふうに思います。
 前回はそういう特に基本式で計算したものが、関西電力のものと原子力規制庁のものがレベルとしてかなり違っていたと。レベルというのは地震動の強さですね。加速度あるいは速度、そういったものの上でかなり違っていたということをきちんと言ってくださらなかったので、そういう点でちょっと判断に問題があったように思います。
 これはちょっとはっきりここでさせていただきたいのですけれども、原子力規制庁の方はこの計算結果は撤回するのか、それとも要するに入倉式と武村式で出てくる地震モーメントですね、それを使って計算した場合、この程度の差が出ますよということでは大体これでいいと考えるのか、どちらなのですか。
○櫻田原子力規制部長
 規制部長、櫻田でございます。
 私どもは、お言葉を返すようで恐縮なのですけれども、武村式と入倉式を置きかえて地震動を計算してほしいと、こういう御指示があったので、なるべく御指示に沿うようなことを工夫して計算したということであります。その結果が、これではやはり意味がないというふうに御判断されるかどうかというところは置いておいて、我々としては御指示に従った計算をできる限り一生懸命やらせていただいたというものなので、できませんというお答えをしてもよろしいのであれば、それはそういう道もあるかもしれませんが、そうではなくて、計算をしてみたのでお出ししたということなので、我々が撤回するというのは多分ないというふうに考えております。
 一方で、この数字の見方については、先ほど御紹介したような考え方でおりますので、精度が高いとは到底考えられないのですけれども、それなりの比較ですね、さっきも申し上げました、ざっくりとしたレベル感とか言いましたけれども、そういうことを目的として使うということには、もしかすると使えるのかもしれないとは思いますし、前回はそういうことを考えて、Ss(基準地震動)と比較するとこのぐらいのレベルになるということをお話しさせていただいたということであります。
○石渡委員
 分かりました。
 そうすると、やはり出てきた値の絶対値といいますかね、それが正しいかどうかということについては、かなり無理な計算をしているので、その辺については余り自信がないということですね。そう理解してよろしいですね。
○櫻田原子力規制部長
 はい。絶対値というのはその数字ということだと思いますけれども、そこはそう捉えていただいて結構かと思います。
○石渡委員
 そうすると、前回、私の判断としては、関西電力が計算した不確かさを考慮した地震動ですね、これの範囲の中に武村式で計算した値が大体入っているということで、余り問題はないのではないかという評価をしたと思うのですけれども、それについては、そこまで今回の値と関西電力が計算した不確かさを考慮した値というものを比較するような精度は余りないというふうに考えていいということですか。
○櫻田原子力規制部長
 すみません、ちょっと今、御発言のところをつかまえそこなったのですけれども、同じことを別な言い方で言われたのかなというふうに思ったのですが、そうではないのでしょうか。
○石渡委員
 そういうことですね。同じことを実例に当てはめて言っただけです。ということで、やはりそこのところは、事前にそういう計算のディテールを御説明いただかなかったということで、前回の原子力規制委員会でした判断については、私としてはその件については保留ということで、もう少し検討が必要ではないかなというふうに考えます。
 以上です。
○田中委員長
 ありがとうございました。
 もう少し私の方から、3ページの上の方に、地震モーメントでアスペリティの大きさが大きいとエネルギー密度が小さくなるので、結果として出てくる地震動が小さくなってしまうと。要するに、まさに武村式についての地震モーメントから強振動の計算をするレシピというのは、何とでも扱えると。下手すると小さくなるというようなことも言っているような気がするのです。
 その下の方に、結局、面積と応力降下量というところで、どうもおかしいとつまずいてしまっているというのを無理やり計算してしまったというところがあるように理解しているのですが、それでよろしいですか。
○櫻田原子力規制部長
 はい。3ページの上の方で説明させていただいたことは、今、田中委員長がお話しされたことであります。アスペリティの面積というのをレシピに従って計算すると、断層面積よりも大きな形になってしまうというところが入り口でつまずいたところでありますので、それではアスペリティの大きさは一体どうすればいいのだと。断層より大きなアスペリティを置くということは、その先に進めませんので、断層全体がアスペリティというふうに置くのが最大ですけれども、そういうふうにすると、今、田中委員長からお話しされたように、結果として出てくる地震動はおそらく小さなものになってしまう。
 そういう計算をするのは余り意味がないだろうというふうに我々の中では考えたということでありまして、それでは関西電力が作っているアスペリティの面積とか大きさとかがありますので、それと同じような形に設定をするという判断をさせていただいたということで、おっしゃるように、そこをレシピに従ったやり方がとれなくなったので、要は、計算する者がどういうふうに置くかということの恣意性がここに入ったということではあります。
○田中委員長
 更田委員。
○更田委員長代理
 私もやはり、先ほど田中委員長が少し言及をされましたけれども、加えて、もう少しどのような計算をしたのかという説明を聞かなければいけないと思っています。
 実験が可能な工学分野ですら、異なる実験式というか、経験式を比較するときには非常に注意深い配慮が必要であって、その実験式というか、この場合は経験式ですけれども、その経験式が組まれたときの経緯だとか、どういう配慮・考慮が、特に限界にかかわる考慮がなされてその経験式が作られたというところに立ち返ってみないと、言葉は悪いですけれども、ある経験式を無理くり使ってみたところで、荒唐無稽な結果を与えることすらある。
 そういった意味では、今回対象となった入倉式、武村式それぞれについて、それが組まれたときの配慮・考慮について、少し説明の際にそういったものを加えてほしいと思っています。
 特に気になっているのは、実験式の場合はなるべくこういうことが起きないようにはしているのだけれども、それでもまだ少し残っているのは、同じ名称で呼ばれているパラメータであっても、一方の式で使うときには、少し長めにとか、多めにとか、高めに考慮した方がいい。もう一方の経験式を使うときには、同じ温度でも少し違う値を入れた方がいい。特にこれは物理的な寸法のときによく起きることで、直径だとか、物のときには、経験式を使うときにそれなりのテクニックが、古いものの場合にはあった。
 特にこれは実験が可能ではない地震の世界なんていう話だと、例えば同じ名称で呼ばれているパラメータに関しても、それぞれの式について同じ値を使うということが本当に正しいのかどうか。例えば「断層の長さ」と言うけれども、武村式を使うときに、断層の長さというのは、入倉式のときに考慮しなければならない、考慮するべき値と同じものを用いるべきなのか、それとも経験式が作られたときの配慮に立ち返れば、それは考慮が必要なものなのか。
 必ずしも真正の値をどうだというふうに言ってもらう必要はないですけれども、考慮の余地があるのか、それとも物理的に同じ値を使うのが当たり前なのだというような説明というのは、次回といいますか、経緯について説明されるときに、そういった説明を加えてもらえればと思っています。
○田中委員長
 田中知委員、お願いします。
○田中知委員
 何回か前にも発言したかと思いますけれども、こういうふうな式、パラメータを使うときには、それがどこまで使えるのか、どこまでだと使えないのかという範囲・限界を分かることが非常に重要でございますが、今回では、レシピの中の震源断層面積から地震モーメントを使うところに武村式を使ったらどうなるかというふうなことで、本来、このレシピはこれにふさわしくないかも分からないのだけれども、先ほどの話だったら、かなり専門的な様々な工夫等があって、こういう結果が出たと。その専門的な工夫というのは、中身は余りよく分からないですけれども、これはかなり専門的な工夫があったかと思うのですね。
 でも、そういうふうな式の限界、パラメータの限界等を考えるときに、それでやられた結果からどこまでだったら言える、ここまでは余り自信がないから言えないとか、その辺のところをもうちょっと明確に示していただければ、我々としても、私としても、もう一歩前に出た考えといいましょうか、判断ができるかと思いました。
○田中委員長
 伴委員。
○伴委員
 私も昨日ビデオで見ておりましたけれども、やはりその中で一番ショックだったのは、今回の計算がいろいろ問題をはらんでいるというところがそこで表明されたことです。お話を伺う限りでは、結局、無理に合わせるために、そのパラメータの設定において科学を逸脱してしまっているということであろうと私は理解しましたけれども、そうだとすると、本当に何をやっているのか分からなくなると。
 やはりこれは前回の原子力規制委員会のときに提示していただかなければならなかったと思っています。我々委員の任務というのは判断をすることですけれども、その判断のインプットとして、やはり事務局の情報というのは基本的な情報になります。特に直接専門としていない分野に関しては、まさに事務局の情報が全てになりますので、そこのところで十分な情報提供がなされなかったというのは大いに問題であると思っています。
 それから、基本ケースの計算結果について関西電力の結果と違うということに関しても、島崎先生から指摘されて初めてそのように、それについての理由を答えるというのは、やはりこれもよろしくなかっただろうと思います。もしその点について気がついていなかったのであれば、それは論外ですし、気がついていたのであれば、やはりそれも前回の原子力規制委員会のときに出していただきたかったと思っています。
 つまるところ、関西電力のレシピで武村式を使うということ自体がそもそも無理なのだというふうに理解をしましたけれども、そうだとすれば、その前提を崩してこのレシピにはよらない方法で武村式を使うことがそもそも可能なのかというのが、今、私が抱いている疑問です。
 昨日、島崎先生も、入倉式を使わなくても、ほかにいろいろな方法がありますよというふうにおっしゃっていましたけれども、本当にそういうことが可能なのかどうか。それはそれぞれの方法にメリットがあり、デメリットがあるのだと思いますけれども、ここまで問題が大きくなってしまったので、事務局に負担はかけますけれども、やはり現状のそういった様々なアプローチというものはどういうものがあって、どういう問題がある、どういう限界があるのかというのを一通り見せていただかないと、なかなかこちらとしても判断がつきにくいかなというふうに思います。
○田中委員長
 更田委員、どうぞ。
○更田委員長代理
 ちょっと補足というか、付け加えで、もし伴委員の意向と違えば言っていただきたいと思うのですが、こういった手法が可能、どういった手法が可能と、可能はあると思うのだけれども、それと確立された手法であるということは大きな違いなので、説明の際には確立された手法、これもなかなか難しい話ではあるけれども、可能という観点からいえば物すごいバラエティーが生まれるだろうと思うけれども、それに関する一定の見解といったものを添えて説明してほしいと思います。
 それから、先ほど伺ったのでちょっと具体的な質問を1つさせてほしいのは、大飯に関して言うと、FO-A〜FO-B〜熊川と3連動を考慮してというのがあるのだけれども、こういった考慮というのは武村式の場合も同じということになるのですか。
○小林長官官房耐震等規制総括官
 総括官の小林でございます。
 同じというのは、どういう観点での同じということですか。
○更田委員長代理
 要するに3連動を考慮したというのも、あくまで入倉式を使った全体の考慮の中で、3連動を考慮する必要があるという判断があったのだろうと思いますけれども、そもそも武村式でモーメントを計算するという背景があったとしたらば、その3連動を考慮するという判断に対して影響が出るものなのか、出ないものなのかというのが質問です。
○小林長官官房耐震等規制総括官
 総括官の小林でございます。 元々武村式というのは、先ほどいろいろ議論になりましたけれども、あくまでも地表面での断層を念頭に置きながら作られた式でございまして、例えば武村式の場合ですと、今回は一連の連続性でありましたけれども、本来であれば、FO-A〜FO-Bだけと、それから、あと、熊川だけというような評価をした上で地震動を計算するというようなことになると思います。ただ、今回はレシピを使ったものですから、一連の構造としてそれを評価しておりますので、これはちょっとまた武村式のそもそもの考え方と違ったような評価を今回してしまったということでございます。
○更田委員長代理
 そこにも、そういった意味では、大きな無理というか、飛躍が今回の場合はあったと。同じレシピを使ったから、経験式は変えたけれども、そもそも入倉式を使うことの前提での背景とした判断のもとで計算をしたけれども、今、小林さんの説明では、武村式を使うのだったらば、FO-A〜FO-Bと、それから熊川と、それぞれでやってという方向が武村式のときのレシピというか、やり方という形になるのだとしたらば、そこにも今回紹介されたものの無理があったのではないかと思うのですけれども、そういったあたりも含めて、次回、詳しく説明してもらえればと思います。
○田中委員長
 伴委員。
○伴委員
 今、更田委員から補っていただいたとおりで、私の趣旨としては、何か一研究者の仮説といったものを全て拾い上げろということではなくて、ある程度確立されたものとしてどういうアプローチがあるのかということと、そのメリット、デメリットというのは、適用できる範囲に当然限界があるはずですから、それがどういうところに限界があるのかということと、そして、不確かさの解析というのが非常に重要になると思うのですが、やはり不確かさを扱えるモデルであるかどうかというところも重要なポイントであると思いますので、そういったところを含めた情報を提供していただきたいということです。
○田中委員長
 石渡委員は付け加えることはありませんか。
 ちょっと昨日聞いていて分からなかったのは、兵庫県南部沖地震のときの御質問をされましたですね、長さ25キロ。それについてどう思うのか。私がつけ焼刃的に勉強したところによると、実際には60キロぐらい、50から60キロ動いているのではないですかね。
○石渡委員
 それは研究者によって大分長さが違うのですけれども、常識的というか、一般的な値としては40キロから50キロぐらいの間ではないかと思います。ただ、余震域全部をとるということになると60キロぐらいになります。
 ただ、我々が審査する場合は、あらかじめ調査して分かった地表の活断層の長さで評価します。そういう意味で、兵庫県南部地震が起きる前に書かれていた断層の長さですね、あれはやはりどこからどこまでとるかにもよりますけれども、全体としては神戸の方も含めると50キロぐらいの長さがあの地域には書いてあります。
 だから、その辺、我々が評価する場合はもう地表の断層の露頭の長さでもって判断しますから、多分そういう評価になるのではないかとは思うのですね。25キロというのは、おそらく淡路島区間ですね、あそこのところの長さなのではないかなと思うのですね。その辺、ちょっと私はよく分かりませんが、実際にどこからどこまでを25キロとしたのかというのはですね。
 以上です。
○田中委員長
 実は14ページに島崎先生の発言があって、どこまで及んでいるかという。「そこをどうとるかというのがまさに地震学者の間でもかなり異論があって、難しいものだと思います。実際に40キロだとかそのように入れてしまえば、明らかに武村式は大きな欠陥、地震モーメントになります。そのとおりです」とお答えしているので、どうもこの辺が非常に私みたいな専門外の者では分かりにくいのですよね。理解できないのですね。
 だから、武村式が金科玉条のように正しいということではどうもなさそうだなという、そういう印象を持ったのです。私は専門ではないから余りそこは議論できませんでしたけれども、そういうふうに思ったというところがあります。
 そういう話はここで余りやっていてもしようがないのかもしれないのですが、今日いろいろ委員から要望、指摘がありました。それで、櫻田部長からも説明がありましたように、今回の計算を実施する上で行われた過程の意味とか、そこにどんな飛躍と言ったらいいのでしょうかね、物理的に先ほど面積の問題とか、応力降下量の問題とか、そういうことがあったと思うのですが、その辺について、もう少しきちんとしたデータをそろえて、もう一度説明をお願いしたいのですよ。その上でこの問題についての判断を原子力規制委員会で再度議論をさせていただければと思うのですが、いかがでしょうかね。ほかの委員、石渡委員、それでいいですか。
○石渡委員
 結構です。
○田中委員長
 それでは、また宿題みたいになって大変ですけれども、是非そういうことを、ここまで来ましたので中途半端な決着はできないと思いますので、そういうふうな方向でお願いしたいと思います。本件については、また改めて議論をするということにさせていただきたいと思います。

(後略)

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