【記事18420】揺らぐ安全神話 柏崎刈羽原発 はがれたベール 検証・設置審査 <4> 初歩的ミス 地形学の常識を無視 国の専門家人選に偏り 解読力に懸念 不勉強を露呈(新潟日報2008年1月5日)
 

※以下は上記本文中から重要と思われるヶ所を抜粋し、テキスト化したものである

 ■解読力に疑念
 
 原発の安全規制を担う経済産業省原子力安全・保安院長の薦田康久(五四)は今も「その時々で最新の知見を踏まえてやってきた」と強調する。だが、岡田は審査の実力自体に強い疑念を向ける。
 柏崎刈羽2号機以降の審査メンバーの名簿を見て、「この中に活断層をちゃんと見られる人はいない」と確信したからだ。審査で海底音波探査データを確認した複数の学者も「十分見る力がなかった」と吐露した。
 活断層研究のけん引役を果たしてきたのは、地形を見て地殻変動などを読み解く地形学者たちだ。七五年に設立された「活断層研究会」のメンバーの大部分を占め、八〇、九一年に日本の活断層の研究成果を刊行してきた。
 だが、柏崎刈羽原発の安全審査に連なる名簿には地形学者は見当たらない。背景には、当時の断層評価は、地下の構造から地殻変動などを分析する地質学が主流だったという学界の事情がある。
 現在、活断層研究会会長を務め、地形学にも理解が深かった松田時彦(七六)は「九〇年ごろまでは、地形から活断層を見つけても、地質屋さんは『地形に出ているだけで実証はされていない』と言うような時代だった」と振り返る。
 
 ■不勉強を露呈
 
 東電の設置許可申請書も国の安全審査も、こうした学界の空気を反映。地表面に明確な断層がなくても、たわんだような「摺曲」と呼ばれる地層の下には断層が存荏するという地形学の常識を無視してきた。
 ところが東電は〇三年、活断層ではないとしていた設置申請当時の断層評価を覆した。その根拠になったのは二〇〇〇年に産総研の岡村が発表した論文。「摺曲の下に断層がある」などの考え方を示していた。
 しかし、岡村は「論文は別に、新しいことを書いたものではない」と説明する。実際、七〇年代後半には、同様の考え方を基にした複数の論文が既に発表されていた。東洋大教授の渡辺満久(五一)は「地形学を知らなかったのは電力会社の不勉強に尽きる」と批判する。′「偏ったメンバーで審査されてきたことが問題」。岡田が指摘する安全審査の欠陥からは、設置許可を前提にしたかのような国の姿勢が見え隠れする。
 (文中敬称略)

KEY_WORD:KASHIWA_:正断層:東京電力柏崎刈羽原発:日本活断層学会会長で立命館大教授の岡田篤正:新潟地震:日本海中部地震:独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)活断層研究センター副センター長の岡村行信:逆断層:土木技術グループマネージャーの酒井俊朗:経済産業省原子力安全・保安院:院長の薦田康久:柏崎刈羽原発:活断層研究会会長・松田時彦:褶曲:産総研の岡村:東洋大教授の渡辺満久:CHUETSUOKI: