[1970_06_07_01]陸奥湾・小川原湖 巨大開発の最適地 豊かな水 広い土地 産構審一行が太鼓判 公害、町づくりに配慮を 記者団記者会見(東奥日報1970年6月7日)
 
 通産大臣の諮問機関である産業構造審議会産業立地部会大規模工業基地委員会の土屋清委員長ら一行10人は6日朝、三沢駅着「ゆうづる2号」で来県、超大規模工業大型コンビナートとして取り上げられている陸奥湾・小川原湖地区の工場、港湾適地を視察した。土屋委員長らは広大な土地、豊富な水資源に感嘆の声をあげ、全国の最有力候補であるとの印象を語っていた。

 来県したのは士屋委員長のほか向坂正男エネルギー経済研究所長、原文兵術公害防止事業団理事長、秋山竜日本空港ビルディング会長、大和勝出光興産専務、柴崎芳三通産省立地公害部長ら10人。
 三沢到着後、駅前のホテル「祭魚洞」で北村副知事、今野県開発室長らから概況説明を受けたあと、三沢米軍基地内から小川原湖を展望、琳代平−むつ市近川ー東通村前坂平ー六ケ所村尾鮫のコースで開発予定地を視察した。
 この日は好天に恵まれ、三沢基地と三沢市八幡神社からながめた小川原湖の豊かな水量に驚きの声をあげるとともに、湖畔に沿って広がる水田、原野を前に土屋委員長は「これだけでも茨城県の鹿島に匹敵する。土地が無計画に売買されなければよいが…」と気をもんでいた。
 一行は馬門温泉で昼食後、原子力発電所建設定地の前坂平に向かったが、穏やかな陸奥湾や田植えの進む水田、乳牛の遊ぶ開拓地に地図と首っ引きで目を向け、一様に「処女地でありながらこの大きな計画をはめ込める地域は、日本中どこを捜しても存在しない。よそのところは後背地が狭くて埋め立てしないとダメだ」と、陸奥湾・小川原湖地区のスケールの大きさをほめちぎっていた。
 開発予定地にはこれまで多くの企業グループの視察が相次いでいるが、産業構造審一行の関心は群を抜いており、質問も気象条件から農業の生産性まで広範囲にわたった。特に小川原湖の淡水化については「思い切って水を入れ替えることも考えてはどうか」など、具体的な面にも触れていた。
 一行は6日夜はホテル青森に一泊、県側と開発構想について討議し、きょう7日午前10時半、青森空港発国内航空機で帰京する。

 公害 町作りに配慮を
 視察団記者会見

 六日、陸奥湾・小川原湖地区を視察した産業構造審議会大規模工業基地委員会の土屋清委員長、向坂正男(エネルギー経済研究所長)原文兵衛(公害防止事業団理事長)柴崎芳三(通産省立地公害部長)の各委員は、視察後の記者会見で「大規模工業基地候補地の中で陸奥湾・小川原地区が最有力だとの印象を受けた」と次のように述べた。

 一、現在、候補地に陸奥湾・小川原湖、周防灘(山口、福岡、大分)志布志湾(鹿児島)の三カ所があげられているが、陸奥湾・小川原湖地区は(1)開発面積が圧倒的に広い(2)小川原湖の水資源に恵まれている(3)労働力が得やすいーなどの点から最有力だと思う。

 一、一番問題となる公害防止と自然保護については、地域全体として十分な配慮をすれば心配ない。ただ、冬季と夏季の風向きを考えた場合、ニュータウンをどこに配置するかが最大の課題となろう。これはエ場の配置と密接な関連を持ってくるので慎重に配慮すベきだ。

 一、原子力製鉄は技術的にまだ先の話になろうが、原子力発電基地になる可能性は十分だ。CTSを含めてエネルギー基地としての立地を求める場合、陸奥湾と太平洋にそれぞれどのような産業を配置するかを港湾づくりや運河構想とも関連させ、体系的に検討する必要がある。

 一、産業構造審議会としては今度の視察結果をもとに開発方式、用地買収などついて一応の考え方を八月上旬までにまとめ、中間報告を出すつもりだ。これだけ大規模な開発になるので、画期的な開発方式を打ち出すことになろう。しかし、内容はいまいえない。具体的なマスタープランについては、企画庁と総合調整したうえで来年中には出したい。

KEY_WORD:ROK_KIROKU_:通産大臣_:産業構造審議会産業立地部会大規模工業基地委員会_:土屋清委員_:向坂正男エネルギー経済研究所_:原文兵衛公害防止事業団理事長_:秋山竜日本空港ビルディング会長_:大和勝出光興産専務_:柴崎芳三通産省立地公害部長_:今野青森県開発室長_:原子力製鉄_:CTS_:むつ小川原湖開発_:北村正哉青森県副知事_: