[2012_02_26_02]巨大津波警戒の報告書 電力側「ご配慮を」 貞観地震に神経とがらせ 異常で信じられない 地震調査委員会・長期評価部会の島崎邦彦部会長東京大名誉教授(東奥日報2012年2月26日)
 

※以下は上記本文中から重要と思われるヶ所を抜粋し、テキスト化したものである

 東京電力など3社が出席し、非公式に開かれた昨年3月3日の情報交換会。共同通信が文部科学省への情報公開請求で入手した資料からは、電力会社側が「(平安時代の)貞観地震の波源域(震源域)が分かっていない書きぶりにしてほしい」「ご配慮いただきたい」などと赤裸々に訴えた様子が分かる。貞観地震の取り扱いに神経をとがらせ、地震の長期評価の具体的な表現にまで踏み込んだ要求をしていた。
 情報交換会では、まず地震調査委員会事務局が長期評価案について説明。盛り込まれたのは、これまでになかった貞観地震の研究結果で、宮城県から福島県沿岸で津波の跡が発見されたとする内容だった。しかし電力会社側は「貞観地震以外の津波がどこから来たのかは分かっていない」と、同じ震源域の地震が繰り返していると取られないように表現の変更を求めた。
 電力会社側は「(長期評価案での)科学的根拠を否定するものではない」としながらも「世間には一部の文言のみを過大に受け取る方もいる」などと発言。文章の書き方について「ご配慮いただきたい」と言い、変更にこだわった様子がうかがえる。
 求めに対して事務局は「分かるようにしたい」などと答え、実際に修正案ではより慎重な言い回しが加わることになったとされる。しかしこの修正は東日本大農災の発生で全くの無意味になった。昨年11月公表の長期評価では、同様の情撃交換会は開かれなかったという。
 地震調査委員会・長期評価部会の島崎邦彦部会長(東京大名誉教授)の話
 電力会社との情報交換会については何も知らされていなかった。事務局の説明によれば、電力会社の意見を受けた上で長期評価を修正したが、根幹部分の変更ではなく、結果的には問題は生じていない。だが電力会社が長期評価の書き換えを堂々と要求することは異常で、信じられない。確定前の長期評価であり、事務局の対応に瑕疵(かし)はあったかもしれない。

KEY_WORD:JOUGAN_:東京電力:情報交換会:貞観地震:文部科学省:情報公開請求:地震調査委員会・長期評価部会の島崎邦彦部会長東京大名誉教授: