[2020_12_04_12]「市民や環境を守るための警告だ」 大飯原発訴訟 原告住民ら判決に拍手(毎日新聞2020年12月4日)
 
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「市民や環境を守るための警告だ」 大飯原発訴訟 原告住民ら判決に拍手

 「判決は市民や環境を守るための警告だ」。大飯原発3、4号機(福井県おおい町)に対する国の設置許可を取り消した4日の大阪地裁判決を受け、原告の住民らは一斉に声を上げた。大津波に襲われた原発のもろさを露呈した東京電力福島第1原発事故以降、原発の危険性と安全規制の不十分さを繰り返し訴えてきた住民らは、「もう原発を動かすな」と改めて国に求めた。
 大阪地裁202号法廷。森鍵一裁判長が「許可を取り消す」と主文を言い渡すと、傍聴席はどよめいて拍手がわき起こった。原告2人が、約100人が集まった地裁正門前で「勝ったぞー」と叫び、「勝訴 設置許可取り消しを命ずる」と記された旗を掲げた。原告や支援者らは「全国の原発に影響を与えるすばらしい判決だ」「国は全ての原発の設置許可を取り消せ」と訴えた。
 判決後、大阪市内で開かれた記者会見。原告団の共同代表、小山英之さん(80)が「みなさん、勝利しました。8年にわたって闘ってきた成果で、画期的な判決だ」と喜んだ。
 この日の判決は、想定される地震の最大の揺れを示す「基準地震動」の算定について、「看過しがたい過誤、欠落がある」と厳しく指摘。基準地震動は原発の耐震性判断の要となる重要な指標となるため、同じ算定方法に基づいて建てられた全国の原発にも影響する可能性がある。小山さんは「原子力規制委員会には判決の指摘をきちんと受け止めるよう申し入れたい」と語った。
 もう一人の共同代表、アイリーン・美緒子・スミスさん(70)も「国は原発を動かそうとしている。国側は控訴すべきではない」と強い口調で訴えた。

 弁護団長を務めた冠木克彦弁護士は「大きな地震が来た時にどうするのかと裁判で説明を求めてきたが、論理的な証拠が全く出てこなかった」と振り返った。判決については「大きな影響力がある。全ての原発で地震想定を見直すための議論が始まるだろう」と強調した。【伊藤遥、山本康介】

 ◇妥当で極めて重要

 長沢啓行・大阪府立大名誉教授(生産管理システム工学)の話 現行の基準地震動は過去の地震で観測されたデータの平均値を基本にしているので、平均から外れた地震のばらつきを考慮しないと、他の原発も含めて基準地震動を過小評価する可能性がある。電力会社や原子力規制委員会は余裕を持った耐震設計だとするが、ばらつきを考慮すべきだと安全審査の不備を明確に指摘した判決は妥当で、極めて重要だ。

 ◇やや強引な印象

 升田純・中央大法科大学院教授(民事法)の話 高度な科学的専門性が問われる原発訴訟では、裁判所は専門家の判断を一定程度尊重した上で、設置許可を出した原子力規制委員会の手続きに明らかな過誤がないかを中心に判断することが役割と言える。今回、裁判所は国の主張に説得力が欠けている部分を突いたのだろうが、専門家が議論を尽くした内容を裁判官の判断だけで覆すのはやや強引な印象がある。
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