私の公開質問状ーその七 拝啓 東京電力社長殿 前和光大学教授・「開発と公害」編集代表 生越忠 【Page 69】(月刊経営塾11月号(1988)1988年11月1日)
 
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私の公開質問状 その七

拝啓 東京電力社長殿

 地震国日本に、はたして原発は似合うのでしょうか。日本の原発は、まだ歴史が浅いことや、日本は現在、地震活動の静穏期に入っていることから、日本の原発が強い地震に直撃された例はありませんが、日本が地震活動の旺盛期に入っても、原発は安全たりうるでしょうか。

      前和光大学教授・「開発と公害」編集代表 生越忠

那須翔様

 前略 ご免下さい。

 このたび『月刊経営塾』からの依頼により、失礼をもかえりみず、原発の安全性に関する公開質問状を貴下に差し出すことに相成りました。
 これから私が質問いたします事柄については、多くの人びとも疑問に思っているのではないかと存じますので、ぜひともご回答を賜りたく、ここにお願いいたす次第であります。
 さて、具体的な質問に入ります前に、原発の安全性に関する私の基本的な考え方を申し述べます。
 私は、地質学の一研究者として、以前から「地震国日本に原発は似合わない」と考え、その旨を繰り返して主張してまいりました。そして、いくつかの原発について、原子炉建屋の基礎岩盤の性質や、原発立地点の周辺地域の地震活動などに関する資料を検討しましたが、検討すればするほど、さまざまな疑問にぶつかりました。
 しかし、万が一にも地質や地震の問題が原因となって、原発の大事故が起これば、大変悲惨な結果になることは火を見るよりも明らかだと思います。そこで、ここでは、複雑多岐にわたる原発の安全性に関する問題のうち、地震時における原発の安全性の問題に限って質問いたします。

−、原子炉建屋の基礎岩盤の性質に問題はないのでしょうか。

 原発が強い地震に襲われても安全たりうるためには、まずなによりも、原子炉建屋などの重要構造物が強固な岩盤に支持されていることが必要不可欠であります。
 しかし、原発の立地点を見ると、とりわけ岬あり、湾ありといった複雑な地形を呈する海岸に立地している場合、原子炉建屋は、例外なく岬と岬とに固まれた湾の奥の低地部に設置されています。中には、巨大構造物である原子炉建屋の設置に必要な広い敷地を確保することができないわけであります。
 ところが、湾奥部は、岬部に比べて、岩質が脆(軟)弱・劣悪ということに「相場」が決まっています。それは、岩質が相対的に堅硬な部分が浸食によく耐えて岬になり、岩質が相対的に脆(軟)弱な部分が侵蝕に坑し切れすに湾になるからでありますが、げんに原子炉建屋の基礎岩盤は、破砕帯の顕著な発達などのために、周辺地域の岩盤に比べて弾性波速度などが小さな値になっているといった例も、少なくありません。
 いずれにしても、原子炉建屋は、巨大構造物ゆえに、岩質が相対的に脆(軟)弱な海岸の低地部に設置せざるをえないという宿命を背負っていると思うのですが、こうした考え方は誤っているのでしょうか。

 二、原子炉建屋の基礎岩盤の岩石試験値を、なぜ平均値およびその標準偏差だけで示すのですか。

 さて、原子炉建屋の基礎岩盤は、たんに強固というだけでなく、均質性が高いことを必要とします。岩質が不均質であると、地震時に複雑に