[2024_07_24_06]6/26東電株主総会に向けて事前質問で何を聞き、東電はどう答えたのか (上) (2回の連載) 東電は地元合意なしに柏崎刈羽原発の使用前検査を開始し 核燃料を圧力容器に入れた…これはなし崩しの再稼働 汚染水が減らなければ海洋放出も止まらない 汚染水対策について8点を質問したが見事に無回答 山崎久隆(脱原発東電株主運動)(たんぽぽ2024年7月24日)
 
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6/26東電株主総会に向けて事前質問で何を聞き、東電はどう答えたのか 東電は地元合意なしに柏崎刈羽原発の使用前検査を開始し 核燃料を圧力容器に入れた…これはなし崩しの再稼働 汚染水が減らなければ海洋放出も止まらない 汚染水対策について8点を質問したが見事に無回答 山崎久隆(脱原発東電株主運動)

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◎質問に答えなくなった株主総会
 第100回株主総会で私は、次の点について文書で事前の文書質問をした。
(1)柏崎刈羽原発の再稼働について、
(2)敷地内の汚染水対策について、
(3)使用済燃料のRFSへの輸送について、
(4)能登半島地震後のリスクと対策について、の合計25問だ。

 私を含め事前の文書質問は11名、106問だという。今まで以上に少なかった印象だ。その説明には、わずか10分しかかけなかった。
 そのため、回答は表面的で、誰にでも言えるようなつまらないものだった。回答を改めて解説する価値すら少ないが、せっかくなので私の質問の意図と回答を概説する。

(1)柏崎刈羽原発の再稼働について

◇ 昨年末の12月27日に核燃料移送禁止命令が解除されたことで、東電は前のめりに再稼働への準備を始めた。
 しかし新潟県などの地元合意は存在せず、その合意プロセスさえ明らかにされない。
 東電に問うても、「地元の皆さんのご理解が重要と考えており、引き続き皆様の懸念に寄り添って誠実に対応を進めてまいります。」との回答しかなかった。
 東電は、地元自治体の「理解と合意」をいかなるものと考えているのか。
 一方的な「説明会」と称する場では理解など得られるはずもない。合意形成に関する具体的な方針すら示すことはなかった。

◇ 立地自治体以外での説明会も各地で開催されている。
 しかし長岡市の説明会に登壇したのは国(資源エネルギー庁)であり、東電ではない。
 参加者からは「何で東電や柏崎刈羽原発のために、県民が避難など大変な思いをしなくてはいけないのか」「原発再稼働が前提の説明に聞こえる」との感想が聞かれたという。(『新潟日報』7月15日付)。
 文章及び総会の会場質問では、「東電体質」としていくつか問題点を問いただした。東電が既成事実を積み上げながら「対話」と称する「説明」を繰り返す姿勢や、汚染水放出や福島第一原発の賠償の現場でも見られる、極めて攻撃的で対話を拒絶する姿勢だ。

◇ 東電との賠償訴訟の場でも「被害者たちを辱める言動を繰り返していること」と紹介された、東電側代理人の言動も、東電体質が体現されていた。
 こうした姿勢を改めない限り、誰も東電を信用しない。
 巨額の資金と政治力を背景に、強引に事業を進める姿勢を転換することから始めるべきだ。

◇ これに対する東電の回答は「第三者の評価が重要であると考えて、(柏崎刈羽原発について)国際原子力機関によるエキスパートミッションを要請し、当社の改善措置が事案の根本原因に対処しているとの評価を受けている。」と、新たにIAEAという「権威筋」を動員したことを誇る。

◇ さらに「地元の皆様から新規制基準による発電所の安全性が格段に向上していることや、本年1月に発生した能登半島地震について避難計画の実効性を高めることについて説明してほしいとのご意見をいただいてございます。」と、能登半島地震後の対応強化ではなく、既に対策済みの避難計画の実効性について説明しているという。

◇ 柏崎刈羽原発の再稼働は極めて危険な事態を招く。
 地震多発地帯でもある日本海沿岸域は、能登半島地震の影響で近年ますます、地震発生の可能性が高まっている。
 株主総会では、こうした事情も考慮して、再稼働は断念することを強く求める意見を述べたが、逆に「推進すべき」と叫ぶ(文字通り論旨もなく叫んでいるだけの者もいた)発言もあった。

 東電は地元合意もないままに使用前検査を開始し、核燃料を圧力容器に入れた。これはなし崩しの再稼働である。
 これも地元の人々に対して重圧を加える行為であり、精神的苦痛を与える場合もある。そうした指摘についても、何の回答も得られなかった。

(2)敷地内の汚染水対策について

◇ 汚染水対策は、ALPS処理水の海洋放出と極めて密接な関係がある。
 汚染水が減らなければ海洋放出も止まることがはない。
 その汚染水対策について8点を質問したが、見事に無回答だった。
 答えられない、うまくいっていないことについては、だんまりを決め込んだ。

◇ その代わり答えたのは、「ロードマップに定める目標を約2年前倒しして達成いたしました。」との自慢だ。
 いや、驚くほかはなかった。何のことか一瞬分からなかったが、後に調べてみたら、2025年に1日あたりの汚染水発生量を2025年に100トン以下にするという目標を、2023年度末段階で達成できたとしていることを指していた。
 しかしこれは、たまたま雨量が平均的に少なかったことに起因したものであり、大雨が続いた場合は日量100トンを超える汚染水が発生する可能性は東電も否定していない。

◇ また、地下の汚染度が高止まりしている具体的な地点についても質問したが、回答は得られなかった。
 汚染水の発生とともに、汚染水流出対策も必須だが、建屋周辺の土壌には多くの汚染源が存在する。
 これらを取り除くには、掘削して汚染土壌をなくすことが一番だが、こうした対策は計画すら存在しない。

(3)使用済燃料のRFSへの輸送について

◇ 7月から9月にかけて実施すると発表された使用済燃料の搬出。
 東電の発表では、輸送キャスク1基を青森県むつ市の「リサイクル燃料貯蔵」(RFS)が建設した中間貯蔵施設に運ぶとしている。
 その目的は「RFSの運用準備」、つまり東電側の事情ではない。
 RFSは東電と日本原電が出資した子会社だが、柏崎刈羽原発の再稼働は依然として未定。使用済燃料プールから搬出しなければ運転出来できないというような事情はない。

◇ 能登半島地震の影響で、柏崎刈羽原発の沖合でマグニチュード7クラスの地震が起こる危険性が高まっていることはを、地震学者からが繰り返し警告されしている。
 そんなさなかに輸送する必要はないのでは、と質問をしたが、輸送を強行する理由は明らかにされなかった。

◇ 津波により輸送船が危険にさらされる可能性については「津波警報等が発令された場合には、輸送船は緊急離岸等の対応を行うことを基本としております。仮に緊急離岸ができない場合でも、岸壁に係留されていることや、津波と吃水との高さの関係から岸壁を超えないこと、十分な船体強度を有していることなどから、方向不能となる可能性は非常に低いものと考えてございます。」との回答。

 「想定外を想定せよ」とする「新規制基準」の考え方には合致していない。

◇ RFSでの貯蔵は「50年」とする協定が存在する。
 50年たったら搬出しなければならない。その搬出先はどこなのか。
 そして判断する時期は、誰がいつ判断するのか。
 こうした質問に回答はなかった。
 使用済燃料輸送に関しては、輸送ルートにかかる自治体への説明、防災計画、避難計画等について質問したが無回答。
 責任を負うのは東電だが、具体的な責任体制を構築しているとは到底いえない。それでも輸送を強行する。

◇ このRFSについては、会場では次のように答えていた。
 「中間貯蔵につきましては、サイクル全体の柔軟性を高め、長期的なエネルギー安全保障に必須という観点から重要で有効な手段と位置付づけております。」

 中間貯蔵とは、使用済燃料をどこに置くかという問題であり、回答のような位置づけではない。
 柔軟性というのならば原発敷地内でも同じだし、エネルギー安全保障、この場合は資源として核燃料物質を国内に確保しておくという意味だと捉えても、中間貯蔵のあるなしは関係なく、MOX燃料の加工と導入が緊急時に増産可能か(もちろん不可能だが)という問題だ。
 いすれもRFSの説明としては意味をなしていない。

(4)能登半島地震後のリスクと対策について

◇ 能登半島地震は、柏崎刈羽原発の真向かいで起きた。距離は118キロだったが、周辺地域では震度5強の揺れを観測している。これは驚異的な値である。
 北陸電力の想定を大きく超え、約150キロにわたり断層がいくつも連動して起きた地震。その想定外は東電の地震想定にも大きな課題を突きつけた。

◇ 柏崎刈羽原発に最も大きな影響を与える断層は、目の前にある佐渡海盆東縁断層帯である。この一部が動いて中越沖地震を引き起こし、柏崎刈羽原発に甚大な被害をもたらしたと考える地震学者もいる。
 原発直下に伸びる断層面は再度活動した場合、原発が建つ地盤を破壊する危険性がある。それを踏まえて会場で質問したが、その回答は次の通り。

◇ 「今まで基準地震動の設定に当たりましては、陸域では長岡平野西縁断層帯から十日町断層帯との連動、それから、海域では佐渡島南方断層から魚津断層帯、これ約全長156kmになりますけども、この連動を考慮して保守的に実施してございます。佐渡海盆東縁断層でございますが、ここにつきましては海上超音波探査で評価検討の結果、断層構造は確認をされておりません。」

◇ 佐渡海盆東縁断層帯とそれにつながるF−B断層と長岡平野西縁断層帯との連動は、原発を挟む断層系の連動であり、極めて危険な事態を招く。
 しかしこれを想定したら柏崎刈羽原発は再稼働できないから、存在を認めたくないのである。

◇ 最も影響が大きい断層帯を避け、大きな影響はないと考える断層で評価している。これでは安全側に立ったとは言えない。
 なお、超音波探査は海中を越えて地層を探査するため、明確に断層が見えれば確実に存在すると言えるが、見えないからといって断層が存在しないと断定はできない。

(5)株主総会での質問趣旨と東電の回答を紹介したが、なんともかみ合わない議論だった。
 再処理事業は東電も積極的に進めるつもりがない。そもそもプルサーマルをおこなう原発を東電は有していない。
 福島第一3号機は既に廃炉。柏崎刈羽3号機は再稼働申請である「新規制基準適合性審査」を受けてもいない。つまりやる気はない。

 既に再稼働をしている中でプルサーマルを実施している電力会社に売り渡すとしても、それは英仏にあるプルトニウムのことであり、これから実施する計画の国内再処理ではない。
 東電の使用済核燃料を青森県に運び出し、再稼働時にプールを空ける。東電が行いたいのはそれだけのことだ。
 しかし、そのために大変なリスクを冒そうとしている。
 各地の運動と連携して止める必要がある。
       (「脱原発東電株主運動ニュース」No329 2024年7月
                    21日より了承を得て転載)
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