【記事63230】道東沖でM9級 可能性最大40% 地震調査委、今後30年間(東京新聞2017年12月19日)
 
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道東沖でM9級 可能性最大40% 地震調査委、今後30年間

 政府の地震調査委員会(委員長・平田直(なおし)東京大教授)は十九日、北海道東部沖の太平洋で、大津波を伴うマグニチュード(M)9級の超巨大地震の発生が「切迫している可能性が高い」との予測(長期評価)を公表した。道東沖では三百四十〜三百八十年間隔と考えられる超巨大地震が約四百年前に発生。北海道大の研究では、この時の津波は海抜二十メートルを超え、沿岸から四キロ内陸まで浸水したと推定されている。
 同時に四国地域にある主な活断層の長期評価も公表。近畿から西に延びる「中央構造線断層帯」は四国を横切り、大分県に及ぶと評価を改めた。断層帯の長さは三百六十キロから四百四十四キロになった。
 道東沖で調査委は、四百年前のような超巨大地震が今後三十年間に起きる確率を、複数のシナリオに応じて7〜40%と推計。震源域が青森県沖などに広がり、より巨大化する恐れもあるという。
 青森県の太平洋岸には東北電力東通原発など原子力関連施設が多いが、超巨大地震による津波の高さや沿岸地域での揺れの強さは、調査委や内閣府で今後評価する。
 道南東沖から北東に延びるプレート境界「千島海溝」沿いに三つの震源域を想定。震源域をまたいで発生する形も考えた。ただ発生確率を絞り込む情報が少ないとして、7〜40%と幅を持たせた。
 一回り小さなM8・0〜8・6程度の巨大地震が今後三十年間に起きる確率は、三震源域のうち十勝沖で7%、根室沖が70%程度、色丹島沖・択捉島沖で60%程度とした。
 北海道は既に独自の大津波想定をまとめており、「今後の国の評価を待ちたい」としている。
 中央構造線断層帯の見直しは海底地下の構造が新たに判明し、断層は四国電力伊方原発(愛媛県)北の伊予灘から大分県の別府湾に抜け、内陸に続くと分かったため。
 四国内陸部で活断層によるM6・8以上の地震が起きる確率は、今後三十年間で9〜15%とした。
 千島海溝の地震長期評価は二〇〇四年以来、中央構造線断層帯は〇三年以来の見直し。

◆伊方原発 厳しい立地

 中央構造線断層帯は、四国電力伊方原発(愛媛県)の北約八キロを東西に走る。原子力規制委員会の再稼働審査では、この断層帯の地震想定が大きな論点に。規制委は「断層帯が四百四十四キロまで延びても、審査ではより保守的に確認しており、影響は出ない」としているが、火山噴火の影響を理由とする広島高裁の運転差し止め決定が出るなど、厳しい立地条件にある。
 四国電は二〇一三年、規制委に伊方3号機の審査を申請。当初、審査で難関とされる基準地震動(耐震設計で目安とする揺れ)について、中央構造線断層帯のうち、敷地に近い長さ約五十四キロが震源になると想定した。だが規制委は「根拠となるデータが不十分」などと指摘、大分県側の別府−万年山(はねやま)断層帯とともに計四百八十キロにわたり連動するとの想定に見直し、最大加速度を五七〇ガルから六五〇ガルに引き上げた。
 一六年四月の熊本地震では、震源域の延長線上にある中央構造線断層帯が活発化することへの懸念が高まり、伊方原発がある佐田岬半島が細長いため、事故時の住民避難に不安の声が上がった。
 3号機は同八月に再稼働し、定期検査で今年十月に停止。今月十三日には広島高裁が、約百三十キロ離れた熊本県の阿蘇カルデラで巨大噴火が起これば、同原発に火砕流や火山灰による危険性があるとして運転差し止めを決定、地震に加え火山のリスクも顕在化した。

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