【記事85150】東海第二発電所の震災時の状況(日本原子力発電株式会社2019年7月27日)
 
参照元
東海第二発電所の震災時の状況

2011年3月11日
  大地震の発生 (東海村震度6弱) 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生しました。
  原子炉が自動停止 …      地震により原子炉が自動停止しました。
  バックアップ電源の起動 …   地震の影響により外部電源を受電できなくなりましたが、
                   非常用ディーゼル発電機3台が自動起動し、
発電所で必要な電源を確保しました。
原子炉の冷却を開始 … 緊急時の冷却用機器により原子炉の冷却を開始しました。

津波の襲来

津波の影響を受け、非常用ディーゼル発電機の海水ポンプ3台のうち1台は防水対策工事終了直前であったので使用できなくなりましたが、残る2台の非常用ディーゼル発電機により安全に原子炉の冷却を行いました。

-------------------------------------------------------
Q1:津波による影響で、非常用ディーゼル発電機1台が停止しました。
原子炉の冷却に必要な電源を確保することはできたのですが?
-------------------------------------------------------
残る2台の非常用ディーゼル発電機で原子炉の冷却に必要な電源は確保できていました。

 東海第二発電所では、茨城県の津波評価※1を参考に、震災前から津波対策の強化として非常用ディーゼル発電機の冷却に必要な海水ポンプを設置しているエリアに防護壁(標高6.11m)を2010年9月に設置し、引き続き防水工事を行っていました。
 地震後、約5.4mの津波が襲来しましたが、一部防水工事が終了直前であったため、海水ポンプ3台のうち北側の1台は海水に浸かり使用不能となりました。しかしながら工事が終了していた南側の2台の海水ポンプを使って非常用ディーゼル発電機2台を運転し、安定した冷却を継続しました。
 このように非常用電源を確保できたのは、津波対策の強化として高い防護壁を設置した対策が功を奏したものと考えています。

「仮に津波があと70cm高ければ、全電源が喪失して、原子炉の冷却ができなかった」と一部で指摘されていますが、電源は複数確保されており、冷却できる状態でした。

 原子炉の冷却に必要な設備(電気室電源盤、蓄電池など)は、標高8mにある原子炉建屋および原子炉複合建屋内に配置しています。また、免震構造の緊急時対策室建屋の屋上(標高約22m)に緊急用自家発電機(500kVA)が設置済であり、電気室電源盤までのケーブルも敷設されていました。
 したがって、仮に津波があと70cm※2高く、非常用ディーゼル発電機を冷却する海水ポンプ3台がすべて使用不能になったとしても、原子炉および使用済燃料プールへの注水に必要な電源(430.6kVA)を有していました。
 加えて、3月12日午前には電源車も到着し、最終的には3台の電源車が待機していました。

このようにバックアップとして複数の非常用電源を確保しており、原子炉の冷却が十分可能な状況にあったと考えています。

※1 茨城県2007年10月に公表した「本県沿岸における津波浸水想定区域図等」の想定最高潮位(標高5.72m)
※2 津波の高さ(約5.4m)と防護壁の高さ(6.11m)の差

震災時の非常用電源確保イメージ
http://www.japc.co.jp/tohoku/tokai/images/tsunami_photo4.jpg

-------------------------------------------------------
Q2:冷温停止まで通常より長く時間がかかりましたが、安全に操作が行われたのでしょうか?
-------------------------------------------------------
冷温停止に向けて安定状態を保っていたため、現状の冷却方法を継続した方がより適切であると判断して慎重に操作しました。

 外部電源が受電できなくなった後、非常用ディーゼル発電機が直ちに自動起動し、原子炉を緊急時に冷却する機器※1により原子炉の冷却を開始しました。
 その後、津波の影響で非常用ディーゼル発電機1台が停止したことにより、原子炉を冷却する機器のうちの一部※2が停止しましたが、残り2台の非常用ディーゼル発電機で十分冷却を行うことができたので、確実に冷温停止(原子炉温度100℃未満)までの操作ができると判断しました。

非常用ディーゼル発電機2台による冷却操作は、設計上の前提であり、運転手順書に従って行ったものです。

【詳しい説明】
原子炉を冷温停止するためには、停止した原子炉を緊急時に冷却する機器に非常用ディーゼル発電機の電源を融通し、冷却をこの冷却機器に切り替えればより早く冷温停止することもできました。しかしながら、次の状況を考慮し、切り替えない方がより適切であると判断して、切り替えせずに冷却を継続しました。

3月13日、稼働中の原子炉を冷却する機器は、安定状態で冷却を継続していました。
原子炉温度も冷温停止直前(110℃程度)でした。
3月14日には、外部電源を受電できる見通しが立っていました。
冷却する機器を切り替える作業などにおける二次トラブル発生のリスクを回避しました。

 原子炉は、通常自動停止後1〜1.5日でほぼ冷温停止となりますが、このように慎重のうえにも慎重を期した操作を行ったため、通常より時間がかかりましたが、何の不安もなく安定的に冷温停止しました。

このように、一部で報道された「綱渡りの3日半」のような危険な状態では全くありませんでした。

※1 原子炉隔離時冷却系、高圧炉心スプレイ系および残留熱除去系
※2 残留熱除去系2系統のうち1系統

非常用ディーゼル発電機1台が停止してから外部電源が復旧するまでの原子炉の冷却イメージ図
http://www.japc.co.jp/tohoku/tokai/images/tsunami_photo5b.jpg

-------------------------------------------------------
2011年3月13日 19時37分 外部電源の復旧 … 外部電源が復旧しました。

2011年3月15日 0時40分 原子炉の冷温停止 … 原子炉は冷温停止しました。( 原子炉温度:100℃未満 )

KEY_WORD::TOUKAI_GEN2_:HIGASHINIHON_: