【記事92260】女川2号機「適合」 新規制基準 被災原発2基目(東京新聞2019年11月27日)
 
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女川2号機「適合」 新規制基準 被災原発2基目

 原子力規制委員会は二十七日の定例会合で、東北電力女川(おながわ)原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に必要な安全対策をまとめた審査書案を了承した。これにより事実上、審査に適合したこととなり、東日本大震災の被災原発としては日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)に続き二基目。津波対策として国内の原発で最も高い防潮堤(海からの高さ二十九メートル、総延長八百メートル)を建設している。二〇一三年十二月の申請以来、審査には約六年を要し、今後の意見公募などを経て正式に適合する見通し。
 実際の再稼働は、安全対策工事が終了する予定の二〇年度より後を見込むが、想定通りに進むかどうかは不透明だ。ただ正式適合後、再稼働に必要な「立地自治体の同意」が早期に得られれば、東京電力福島第一原発と同じ「沸騰水型」原発としては再稼働一例目になる可能性もある。
 沸騰水型では東京電力柏崎刈羽6、7号機(新潟県)と東海第二が正式適合済みだが、再稼働に慎重な関係自治体の同意が得られていない。
 安全対策費は当初の想定を超える三千四百億円程度に膨らんだ。
 会合で規制委の山中伸介委員は「東北地方にある原発で、過去に大きな地震を経験しているので、構造物の耐震設計は慎重に審査してきた」と述べた。
 女川原発は三基のうち、1号機は廃炉が決まり、3号機は審査の申請を検討中。
 女川原発は大震災の震源に最も近く、約一三メートルの津波が押し寄せた。一三年十二月、被災原発では初めて審査を申請。津波対策の前提となる基準津波は二三・一メートルと想定した。審査の中で防潮堤の地盤沈下対策を求められ、先月から地盤改良工事中。
 一七年一月の審査では、原子炉建屋の壁千百三十カ所に幅一ミリ未満のひびが見つかったと東北電が報告。大震災の揺れとコンクリートの乾燥収縮が原因とみられ、建屋上部では、変形しにくさを示す剛性が約七割低下していた。建屋の機能に影響はないが、ひびを補修するなどとする計画を示し、規制委は妥当と判断した。
 大震災では全三基が自動停止。津波の影響で2号機の原子炉建屋地下が浸水した。外部電源は五回線のうち四回線が停止したが、残った電源で冷却を維持し、三基を冷温停止させた。

<女川原発> 宮城県女川町、石巻市に立地する東北電力の原発。全3基は沸騰水型軽水炉。出力は1号機52万4000キロワット、2、3号機は各82万5000キロワットで、1984年、95年、2002年に営業運転を始めた。東日本大震災では地盤が約1メートル沈下し敷地の高さは約13・8メートルになった。最大約13メートルの津波が襲来し、敷地には達しなかったが、取水路側から海水が流入して2号機原子炉建屋地下が浸水した。2号機が審査に正式適合すれば新規制基準に適合した原発では9原発16基目。3号機は審査の申請を検討中。1号機は18年に廃炉が決まり、53年度の廃炉完了を目指す。

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