戻る <<前 【記事65340】阿蘇噴火 規制区域外にも噴石 住民「もし昼間なら」(西日本新聞2016年10月9日) 戻る
KEY_WORD:_
 
参照元
阿蘇噴火 規制区域外にも噴石 住民「もし昼間なら」

2016年10月9日 2時4分
 熊本県阿蘇山の爆発的噴火は、観光客のいない8日未明に発生した。噴煙の高さは観測史上初めて1万メートルを超え、立ち入り規制が敷かれていた火口から1キロ圏を超えて噴石が飛んだ。住民らは「観光客の多い日中の噴火なら大惨事だったのでは」と防災態勢を不安視している。
 「これが昼間だったらと思うとぞっとする」。阿蘇市職員は、大人の拳より大きい噴石を手にして顔をこわばらせた。今回の噴火によるものかは調査中だが、火口1キロ地点で採取した噴石は直径15センチ、重さ1・3キロ。「直撃していたらひとたまりもない」と続けた。
 火口から4キロ離れた国立阿蘇青少年交流の家では噴石で窓ガラスが破損、7キロ離れた坂梨保育園でも直径3センチの噴石を採取。8キロ離れた小中学校の校庭にも小石交じりの灰が降った。
 気象庁は昨年11月、阿蘇山の噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に下げ、立ち入り規制は火口から1キロに緩和。熊本地震後は登山道の通行止めが続いたが、9月16日に一部通行可能になり、火口1キロまで再び観光客が立ち入れるようになっていた。気象庁が警戒レベルを3に戻したのは、今回の噴火の発生後だった。
 福岡管区気象台によると、9月27日に調査した1日当たりの火山ガスの放出量は2千トンだったが、今月7日の日中に行った調査では1万5千トンに急増。同日午後10時ごろには、火山性微動の観測データでも噴火の兆候がみられた。同気象台は「噴火の前兆はつかめていたが、どれほどの規模かは判断できなかった」。
 今回の噴火はマグマの熱が地下水に伝わって起こる「水蒸気噴火」か「マグマ水蒸気噴火」とみられる。長野・岐阜県の御嶽山では2014年、噴火警戒レベル1のまま水蒸気噴火が起き、死者・行方不明者63人に上った。気象庁は予測が困難とされる水蒸気噴火の前兆がつかめるように、観測態勢強化を進めている。
 須藤靖明・阿蘇火山博物館学術顧問(火山物理学)は「噴火警戒レベルの引き上げは観光産業に影響を与える。熊本地震から復興へ向かっている時期でもあり、気象庁は難しい判断を迫られたと思う」と語った。

戻る <<前 【記事65340】阿蘇噴火 規制区域外にも噴石 住民「もし昼間なら」(西日本新聞2016年10月9日) 戻る