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島崎前原子力規制委員会委員長代理との面会について


資料3

島崎前原子力規制委員会委員長代理との面会について

平成28年7月20日
原 子 力 規 制庁

 以下のとおり、島崎前原子力規制委員会委員長代理と田中委員長、石渡委員ほかとの面会を行った。その速記録(未定稿)は別紙のとおり。
 日時:平成28年7月19日(火)15:00〜
 日時:平成28年7月19日(火)15:00〜
 先方:島崎前原子力規制委員会委員長代理
 当方:田中委員長、石渡委員、櫻田原子力規制部長、小林長官官房耐震等規制総括官、小林安全技術管理官(地震・津波担当)付企画官

別紙

前原子力規制委員会委員長代理との面会速記録(未定稿)

○田中委員長 始めてよろしいですか。
○島崎前委員長代理  すみません。遅くなりまして、失礼しました。
○田中委員長 本日は、暑い中、御足労いただきましてありがとうございます。
 早速ですけれども、先日、ここの場において島崎さんの方からいろいろ御懸念の点をお聞きして、通常はそういう対応はしないと思いますけれども、島崎先生はここに2年間おられて、自ら審査された大飯原発についての御懸念だということで、我々としてはできるだけ誠意を持って対応しようということを翌日の委員会で諮りまして、そういうことで事務方に一応の評価をしていただいた。それを先日御説明したところ、その後、いろいろいきさつといいますか、理解の違いがあったようです。それで、そのことを放置しておくのは余り双方にとってもよくないということを思いまして、本日この場を設けさせていただきました。
 そこで先日、うちの事務方から説明をさせていただいた、まず資料の意味について、少し詳細に説明させていただき、その後、島崎先生の方からいろいろ御意見を伺うということで進めたいと思うのですが、よろしいですか。
○島崎前委員長代理 はい。ありがとうございます。
 本日はお招きいただきまして、まことにありがとうございます。
 また、小生の提案に対して迅速に対応していただいて、結果を出していただき、さらに説明を、ほとんど発表直後という感じで御説明いただいた点、大変ありがたく思っております。どうもありがとうございます。
○田中委員長 それでは、初めに先日の資料について、少し事務方の方から説明をしてください。
○櫻田規制部長 規制部長の櫻田でございます。
 今回の作業は、原子力規制部と、技術基盤グループ、双方で行いましたが、事務方を代表した形でお話しさせていただきたいと思います。試算の結果については、もう御説明したものでありますので、それをもう一度ということではなくて、その試算において、我々どういうことを考えて、どんな工夫なりをしたかということをもう少しきちんとお話しすべきであったところをできていない部分があると思いますので、その辺をお話しさせていただければということでございます。
 まず、今回の試算でございますけれども、いただいた御指摘を私どもなりに理解したところを申し上げると、入倉式と武村式という、あるいはほかにも地震モーメントを算出する式がございますけれども、入倉式を別の式に置きかえて、あとは関西電力と同じやり方で地震動を計算してみたらどうかということだと理解をしました。
 それから、武村式以外の式もあり得るとは思うのですけれども、先生の最初の御説明の中でも武村式というお話がございましたので、私どもは武村式を用いて計算をさせてだいたということでございます。
 ところが、地震モーメント算出式を置きかえて、あとは関西電力と同じやり方ということなのですけれども、この関西電力のやり方というのは、御存じのように、釈迦に説法でございますが、レシピ、強震動予測手法に基づくものでありまして、このレシピというものはそもそも断層が均質ではなくて、アスペリティという強い震動を生成する、断層の中の一部領域があって、そこから強い震動が生成されるという特性化震源モデルを前提に体系化されているということがございます。
 それから、その上で入倉式などで計算をした地震モーメントから、アスペリティの面積とか、そこの応力降下量を求めて、さらに計算を進めて、地震動まで求めるという全体の体系が構築されているというものであります。
 関西電力はこれを使ったということでありますが、一方、武村式で地震モーメントを計算して、そこからアスペリティの面積とか応力降下量を求めるという方法は、このレシピの中にはないのです。したがって、関西電力と同じやり方で地震モーメントを求めるところだけを入れかえるという置き方は、そもそも実現することがとても難しいという課題であったということがまずございます。
 そこのところを、難しいのだろうけれども、いろいろ工夫もできるかもしれないということで、若干、無理を承知で試算をしていったわけでありますが、やはり心配していたような矛盾が幾つか生じたということがございました。
 幾つか御紹介いたしますと、お手元にレシピのフロー図、右肩に別紙1と書いた資料がございます。この図を使って少し説明させていただきたいのですけれども、まず赤い丸で囲ったところが地震モーメントを求めるという部分でありまして、ここに左上の方に経験的関係という箱があって、下に(2)(3)(4)というものがありますが、このレシピの中では(3)というものが入倉式であるということで、地震モーメントを算出する式です。
 ここで地震モーメントが算出されるところを武村式に置きかえるわけなのですけれども、この地震モーメントをM0から右の方の箱に入っていって、まず矢印が伸びているのですけれども、(13)式というものを使って、アスペリティの総面積を求めるというのが第1段階でございます。この第1段階のところで、まず困難に直面したというのが1つありました。具体的に申し上げますと、その武村式で求めた地震モーメントM0から、この式でアスペリティの総面積を計算すると、その結果1,840平方キロメートルという数字になりまして、これは関西電力が設定していた対象断層の断層面積951平方キロメートルの倍近くという値になってきたということで、そもそも入り口のところでつまずいてしまったというのがまず1点ございます。
 それから、これはアスペリティというものは当然、断層より小さいということが普通なのですけれども、そういう結果が出てしまったので、では、断層より大きいアスペリティを置くというのはもともとおかしいので、では、どんなアスペリティを置けばいいかというところが2点目の悩ましさでありました。例えば断層の全体をアスペリティにするという考え方もあろうかと思いますが、実は、これも釈迦に説法ですけれども、同じ地震モーメントでアスペリティの大きさが大きいとエネルギー密度が小さくなるので、結果として出てくる地震動が小さくなってしまう。こういうことがあるので、断層全体がアスペリティという置き方をすると地震動の評価結果が小さくなるということになりそうだったので、そうではなくて、なるべく大きな地震動が出るように置くにはどうしたらいいかということに悩んで、結局、関電と同じ大きさのアスペリティを置きましょう。そういうことにしたわけであります。そうすると、地震動が少し大きくなるという形の結果が出るはずだということであります。ここが2点目でありました。
 右側のフローの中で、アスペリティの総面積は、したがって、関電と同じものを置いて、そこから下に矢印が伸びていて、アスペリティの応力降下量というΔσaというものがありますけれども、これを普通のやり方で求めようとすると、やはりそもそものアスペリティの総面積の求め方がおかしい形になっているので、うまくいかないわけなのです。
 そこで、レシピに従って、このΔσaを求めることができないので、短周期レベル、M0の少し下に破線で囲われたM0というものがあって、そこから短周期レベルAというところにつながっているところがありますけれども、短周期レベルというものはエネルギーと関係するパラメーターでございますので、これを使ってアスペリティの応力降下量を求めるという、短周期レベルと矛盾しないものを算出するというやり方を何とか見出しまして、計算をしてみると22.3メガパスカルという値が出てきて、こうしましょうということで置きましたが、それだと地震モーメント全体はもっと大きなものなので、断層全体の地震モーメントが足りないという形になりましたので、その不足したところをアスペリティではない背景領域、2ページ目に図がありますけれども、断層の中で赤いところがアスペリティで、それ以外のところは背景領域と言われていますけれども、赤いところが抱えるというか、負担できるエネルギーがそこまで大きくなり切らないので、足りない部分を白いところでも負担する。こういうことを置かざるを得なくなったということでありまして、そうすると、当然のことながら、ふだん普通に理解されている背景領域の応力降下量の3倍ぐらい持たないと全体の地震モーメントと整合しないということになったので、ここも矛盾といえば矛盾であった。こういった矛盾が生じたのですけれども、そこを気にせずに何とか計算しようということで進めた結果でありました。
 その結果は、前回、先週御説明したとおりなのですけれども、そこでもう一点、武村式を使った計算結果ではなくて、入倉式の基本ケースの計算結果と、関電が行っていた基本ケースとの違いがあるのではないかという話が出てきました。ここが本来、そこまで含めて御説明すべきであったところをできなかったのは手落ちだったと思っておりまして、おわびしたいと思いますけれども、この差がどこから出てくるかという、これはまだ私どもも定かにはわかっていません。ただ、想像できるところはありまして、レシピでずっと計算をしていって、最後に地震動を計算していく過程で統計的グリーン関数法という手法で地震動を求めるわけですけれども、そのときに統計処理を行う過程で、最後の細かな計算のところでいろいろな自由度があるようでありまして、例えば要素地震波を人工的に作成するときの乱数の出し方、とり方とか、数とか、出てきたものの処理の仕方とか、これは横ずれ断層なのですけれども、横ずれ断層の地震動の出方、放射特性と言っているようですが、そこをどのように捉えるか。東西方向、南北方向きちんと分別して関西電力はどうもやっているようなのですけれども、そこまで我々は時間の関係もあって、行わずに等方的な放射を考えたとか、そういう違いがあるので、関電の基本ケースと入倉式を使った我々の試算結果が異なった形になったということのようであります。
 これは以上のような考え方で我々が設定したものなので、先生は、我々がなるべく小さくなるような計算をしたのではないかということはお考えではないと思いますけれども、そのようなことではないので、もし、誤解があれば解消したいと思って、お話しさせていただきました。
 最後、少し長くなったので、もう終わりますけれども、こういった無理を重ねた形で計算をしたものですから、やってみて、そもそもの目的であったところ、すなわち地震モーメントの算出を入倉式から武村式に置きかえて、あとは関電と同じやり方で計算するというのは、やはり無理だったということがやってみて確認できたということかなと思います。
 一方、基準地震動そのものは、これも先生御存じのように、これも釈迦に説法で恐縮なのですけれども、一般的に広く用いられているいわゆるレシピを用いて地震動を計算した上に、さらに原子力発電所の審査ですので、地震動が小さくなるようなことにならないように、なるべく大きくしようということで、不確かさも考慮して上乗せをして決定しているということでありますので、今回、先ほど申し上げたように、小さくならないように、大きめの値が出るように武村式の結果を計算していったつもりなのですけれども、その結果そのものと、ある種確立したやり方で求めてきている基準地震動の値というのを比較する、これも厳密に何倍になるのかというようなことをやるような比較に耐えられる精度があるものとは考えられないのではないかというのが我々の今の感じであります。比較をしてみて総合的にレベル的に大きな違いがあるのかないのかといったところの評価をするのがせいぜいのところではないかと考えているところでございます。
 きちんと御説明できていなかったところ、今日はせっかくの機会ですので、御説明させていただいたということでございます。
 とりあえず委員長にマイクをお返しします。
○田中委員長 まず、今の説明についていろいろ御意見があるかと思いますので、御質問がありましたら、どうぞ。
○島崎前委員長代理 とてもいい計算をされていると思います。
 そもそも断層面積が同じ状況でモーメントが3倍になるということは、ずれの量が3倍になるということですので、応力降下量、これが大きくなるのは当然なのです。
 ですから、今、御判断されたやり方というのは、まさに私がこうやったらどうだろうということをそのままやっていただいたので、そこの判断は非常にすばらしいと思います。ですから、私には矛盾というものはない。要するに、これまでのイメージに対して違っている。それは確かに違います。そもそもモーメントが3倍になってしまうので、ずれの量も3倍になるし、応力降下量も大きくなる。そういう意味で、これまでのイメージで本当にこれとひょっとしたら思われるかもしれない。でも、それは矛盾ではなくて、最初の式を変えた結果そのものであって、かつ、非常にきちんとパラメーターを選んでいただいている、まさにもう一回お願いしたことをやっていただいていると私は思っています。
○田中委員長 どうも私が聞いている限りでは、ちょっと理解が違っているような気がする。
 繰り返しになってしまいますけれども、私ども、島崎先生からの御依頼だったものですから、我々も悪戦苦闘しながらレシピの中に無理やり武村式を押し込んだような形なのです。
 というのは、例えば今、お手元にある別紙3のアスペリティモデルがあるのですけれども、武村式を使うと、全面が真っ赤になってしまうのです。真っ赤というよりピンクと言うのがいいと思います。応力降下量が下がりますから、そういったモデルが使えないものですから、もう一度入倉式に戻して計算するとか、そういう非常に無理をやっているのです。
 無理をやった結果、精緻に欠けるような最終的な地震動評価になってしまっているというのが我々の相場観といいますか、私どもも島崎先生の御要望だったものですから、相場観をつかんでもらうためにああいったスペクトルを出してこの程度のものですよというのを示させていただいたので、その点は御理解いただきたいと思います。
○島崎前委員長代理 私は非常に適切に処理をしていただいていると思っています。
 実際にこれまでの入倉・三宅式でずっとなれてきた地震像とは当然違うわけで、それは矛盾でも何でもない。式を変えればそうなるわけですから、背景領域が残るのも当然ですし、私としてはお願いしたほとんどそのとおりにやっていただいていると思います。
○櫻田規制部長 よろしゅうございますか。
 規制庁の櫻田でございます。
 言葉を返すようですが、やはり理解していただいていないと思います。どこが理解していただいていないかというと、御指摘は関西電力がやったやり方で、地震モーメントを出すところだけ入れかえるということだったと理解していまして、それをやると関西電力が用いたいわゆるレシピに当てはめると、例えばアスペリティの総面積が断層面積よりも大きくなって。
○島崎前委員長代理 それは要するに応力降下量をどうとるかということで、非常に適切に応力降下量をとっていただいたので、その矛盾がなくなったわけで、それはまさに私がお願いしたとおりのことをやっていただいた。
○櫻田規制部長 それはレシピのとおりにやったわけではないわけです。
○島崎前委員長代理 レシピのとおりというか、最初を変えればある程度手直しが必要なところが出てきますので、まさにお願いしたとおりにやっていただいたと私は思います。
○櫻田規制部長 私が申し上げたいのは、まず、関西電力が行ったことを最初の入り口だけ入れかえるということはできないということなのです。そこはお認めいただけますね。
○島崎前委員長代理 それはそうではなくて、この場合は武村式を使っていますので、かなり値が大きくなりますけれども、武村式を使わなくても特性化震源をしている例が幾つもあるわけで、一つは中央防災会議が中京圏、近畿圏の活断層に対する地震動を計算した場合は、まさに特性化震源を使って、かつ、式は入倉・三宅式ではない式を使っています。
○櫻田規制部長 そういうやり方があることは存じていますけれども、それは関西電力が用いた方法ではありません。
○島崎前委員長代理 もちろんそうではありませんけれども、別に入倉・三宅式以外の式を使ったからといって、できないという話ではなくて、既にそういうものがあるのです。
○櫻田規制部長 そういうことはまだ申し上げていません。関西電力が行ったやり方で、地震モーメントの求め方だけを入れかえることはできない。
○島崎前委員長代理 それは全体的に総合的にやらないといけない。それはそうです。
○櫻田規制部長 だから、まずそこはお認めいただきたいと思います。
○島崎前委員長代理 わかりました。
○櫻田規制部長 その上で、入倉式以外のものを使って地震モーメントを出して、そこから地震動を評価するというやり方については、いくつかやった例はあるのだと思いますけれども、それを私どもは今まで使ったことはありませんというのが事実。
 それから、そういったことを、例えば、事業者に対してこういうことでやりなさいということを規制側が申し上げるためには、そこはそれなりのある種確立したやり方であるのかどうかとか、そういうことを私どもも判断しなければいけないところがあるので、そこのところを、それを用いる人がどのような目的で行ったのかということもあるでしょうし、事業者がそれを考えるかどうかということもあるでしょうし、今は一概には言えない問題だと思っていまして、そこはまた別の議論だと思っています。
○島崎前委員長代理 それは規制庁の御判断のところで、私が何か言っても、それは一応別の話ですね。そのとおりです。
 先ほどの問題ですけれども、入倉・三宅式にこだわる必要がないことは言えたと私は思っているのですけれども、それに関しては、ある手続が必要だというのがお答えかと思います。
 違いますか。確立するだとか、そういったものがなければいけない。あるいは、どう使ったとか、いろいろと調べてからしか使えないというお話ですね。
○櫻田規制部長 使えないという言い方ではないのですけれども。
○島崎前委員長代理 使う前にはそういうことをしないといけない。
○櫻田規制部長 私どもが、ある種の標準的な手法のような形でこういったものを使要があるということを言うためには、それなりのプロセスが必要だと思いますし、そういう意味で、今、世の中で例えば武村式を使って地震動まで持っていくというやり方の中で使えるものが存在するのであれば、それは考慮することもあり得るのかもしれませんけれども、なかなかそこまでは至っているものはないのではないかと私は考えております。
○田中委員長 ちょっといいですか。基本的に今、お二人の議論を聴いていて私が思うには、地震モーメントから強震動の計算をするのは、地震モーメントのところだけただ値を変えればいいのだということではないのだということを櫻田は説明しているのだと思うのです。
○島崎前委員長代理 それは了解しております。
○田中委員長 それはいいのですか。
○島崎前委員長代理 理解しております。
○田中委員長 そうすると、全体的にそのレシピが変わるということ。
○島崎前委員長代理 整合がつかないといけませんので。
○田中委員長 そして、そのレシピについて、ところが武村式のレシピがないのでどうしようかというのでいろいろとうちの連中が工夫したのだけれども、どうもやはり矛盾だらけで。
○島崎前委員長代理 矛盾ではなくて、それがまさに私がお願いしたことをきちんとやっていただいたと思います。
 要するに、アスペリティの応力降下量を短周期レベルのある経験式から持っていって、そこで決められたわけです。そのことによって、物すごい面積をとるだとか、そういった矛盾といえば矛盾なのですけれども、そんなことをせずに済んでしまったわけで、それはまさにすばらしいことをやっていただいて、私がお願いしたことをまさにアスペリティの応力降下量自体が変わるわけですから、ちゃんと変えていただいたわけで、それはそのとおりだと思っています。
○田中委員長 よくわかりませんけれども、何かここに面積も関電のやったやつと倍ぐらい違ってくると、応力降下量も従来から言われている値よりも3倍ぐらい違うということが、それがリーズナブルだとおっしゃるのですか。
○島崎前委員長代理 はい。要するに、入倉・三宅式では、地震モーメントが3分の1、4分の1になっているということは、断層面積が同じであれば、応力降下量が3分の1、4分の1になっているということなのです。ですから、3倍、4倍にすればいい。まさにそれをしていただいたので。
○小林総括官 すみません。総括官の小林でございますけれども、先生は実際にこの地震動を求める後段の部分は、多分、大変失礼ながら、余り御承知されていないのではないですか。これは後段の部分ですね。いわゆる最初の取っかかりの地震モーメントが、まさに入倉と武村でやった場合は非常に過小評価になるという理屈はわかるのですけれども、その後のプロセスをしっかりと我々は不確かさで確認しているわけですから、そこの部分評価していただきたい。
○島崎前委員長代理 もちろん評価しておりますよ。きちんとやられていると思います。
 ずれの量が大きくなるということは、面積を変えないということは、応力降下量が大きくなるということなのです。ですから、それだけ強い波が出るのは、ある意味当然なのです。しかし、いろいろ手続上、小林さんが言われたとおりに精緻な計算をされる手続の間で、実際にその効果がどのくらい効くのかということはやはり計算しないとわからないので、やっていただけるといいなと思ったところをきちんとやっていただいたので、本当にありがたいと思っています。
○石渡委員 そうすると、今回の結果につきましては、我々としては、一応委員会の判断としては、出てきた結果が関電が不確実さを考慮して計算したものの中に入るということで我々としては評価したわけですけれども、そこについては同意されないということですね。
○島崎前委員長代理 そのとおりです。
○石渡委員 それについては、今の計算については了解したということとの関係というのは。
○島崎前委員長代理 非常にいい計算をしていただいたと思っています。
 そこのところを御説明してよろしいでしょうか。後からお送りした図がございますが、これは入倉先生たちの論文の図をそのまま貸していただいております。
 横軸が地震モーメント、いわゆる震源の大きさの対数になっていまして、縦軸が断層の長さということです。
 上の方に書いてある式が入倉・三宅式で、下の方にちょっと短いものがありますけれども、これが武村式になります。
 ちょっと拡大するとこのような形になるのですけれども、色を変えてしまうとどこが何色だかわからなくなってしまうので矢印にしましたが、熊本地震が大体この位置に来ます。こうやって見ているとよくわからないのですけれども、縦軸が断層の長さで横軸が地震モーメントなのですが、これは実際の作業としては断層の長さなり断層の面積がわかって、それから地震モーメントを求めるわけなのです。ですから、横軸と縦軸の関係が実は反対といいましょうか、回転していただくとよろしいのですけれども、本来はこの横軸の方が対数スケールです。横軸の方が断層の長さであって、縦軸の方が地震モーメント、横軸を求めて縦軸を推定するという結果になる。
 そうしますと、この青いものが入倉・三宅式で、直線が武村式なわけです。ですから、この差はやはり非常にもともと大きくて、今回の熊本地震をプロットすると、むしろやはり武村式の方に近い関係にあります。
 多少、断層のパラメーター等は人によって違いますけれども、今、31キロメートルとしていますが、これを35キロメートルとしても余り結果としては変わりありません。こうやって見ているのではなくて、こう見ないといけない。非常に差が大きいということを、やはり対数ですからちょっとわかりにくいところもありますけれども、4倍程度違う。差が大きい。ここに赤いものがだいだい色の近くに3つほど集中しています。これが指摘している北伊豆地震だとか、鳥取地震だとか、北丹後地震のデータになります。
 当時は細かいデータがなかったので決定的なことは言えないのですけれども、今度の熊本地震もやはり同じようなところへ来ていて、断層の長さをあらかじめ大きくとるということは考えにくい、かつ今度は火山地域ですから地震発生層が厚いはずはないので、どちらかというと地震発生層が薄くなるような地域で発生していますから、断層の幅が20キロメートルだとか、そういった幅ではない。私は16キロメートルをとりましたけれども、20キロメートルとかそれを超えるようなものでは到底そういった地震をあらかじめ想定するということはあり得ません。
 というわけで、これは前に申し上げたことの復習みたいなのですけれども、この入倉・三宅式の問題というのは断層が垂直だとか、垂直に近い場合に震源の大きさ、地震モーメントが過小評価になる、これが問題で、西日本には垂直あるいは垂直に近い断層が多いわけです。ただ、入倉・三宅式が一般的かというと必ずしもそうではなくて、先ほどちょっと申し上げましたけれども、それ以外の式に基づいて震源の大きさを推定してやはり同じような特性化震源を用いて地震動を求めることが地震本部や中央防災会議で行われているわけです。
 ただ、ちょっと説明が必要になります。地震本部の場合は、入倉・三宅式が補助的に使われているのです。それでどうなっているかというと、まず入倉・三宅式ではない式で震源の大きさを決めます。その大きさを決めた後で断層面積を入倉・三宅式を使って決める。逆をやっているのです。そうすると、断層の大きさがここにありますけれども、実際の断層よりも面積が大きいですから、かなり広い面積になってしまいます。これは合わないので、深いところを削ったりだとか、そういう調整をわざわざやっているわけです。その後で特性化震源を使っているわけですけれども、これから見ても入倉・三宅式というものは断層の面積を大きくし過ぎているということがわかると思います。
 これは資料にございませんけれども、先ほど申し上げた中央防災会議が中部圏、近畿圏の活断層の地震動を計算したもので、その中を見ますとアスペリティだとか地震モーメントだとか、応力パラメーターだとか、細かい説明があって、まさに特性化震源で計算をしております。ですから、入倉・三宅式では計算していませんけれども、入倉・三宅式だけが地震動の計算に用いられているわけではありません。
 まずそれを申し上げて、次に結果についてどう感じたかを申し上げます。
 これがいただいた計算結果をわかりやすく比較したもので、全部東西だけのレベルになっていますけれども、これがいわゆる基準地震動の856ガルで、これは入倉・三宅式に基づいて関西電力が基本ケースということで計算し、さらに短周期レベル1.5倍という不確かさを加えたものです。
 それとは別に規制庁では武村式を用いて計算をしていただいて、それからそれの比較といいましょうか、武村式ではなくて入倉・三宅式を使った場合、これはどちらも基本ケースに当たるわけですけれども、それを計算していただいて、数字は資料にはなかったですが、後で広報担当からこういう数字であると伝えられたと伺っています。
 356ガルが644ガルになるということで、影響はないわけではないのです。影響があることは私は間違いないと思います。この644ガルは856よりも小さいからということで大丈夫だということなのですけれども、本来はこれを1.5倍した値ですので、その前のものがどうなっているのか、御説明をいただいたときはそこがよくわからなくて非常に混乱したのですが、審査資料にはもちろん同じケースが出ています。その資料によると、1.5倍をとると596ガルという結果が東西方向に出ています。
 関西電力といろいろ仕様が違うので結果として違うわけですけれども、これとこれは本来同じ設定で同じ値が出る、同じではなくてもいいですが、大体同じレベルになるべきものであると思いますので、これはここのレベルまで上げないといけない、何らかの補正が必要になると思います。
 というわけで、本当はきちんと計算をしないといけないのですけれども、1.7倍するだとか、ここは掛け算ですが、足し算で240ガル足すだとかしないとそのレベル、実際の基準地震動あるいはそれに関連するものと対比することができませんので、そのように行いますと、この武村式の結果についてもそういったことが必要になります。
 その結果の数字はともかくとしても、一応参考程度に括弧の中に入れて書いてありますけれども、かなり強い揺れが出てくることは間違いないです。これは実は1.5倍が入っていないので、もともとの比較では基準地震動に対して小さいから大丈夫だという話で、この1.5倍がない場合を今、やったわけですけれども、これにさらに1.5倍がここに加わるとするとどうなるかというと、掛け算でも足し算でもやりますと、大変強い揺れがここで出てきてしまう。ここに参考までに数字は書きましたけれども、数字は余り意味がない。非常に大きいというだけで十分だと思います。
 ですから、先ほど規制委員会では比較をして問題ないといったことに関しては私はそう簡単にはそのとおりだと言うわけにはいかない。ただ、どういう不確定性を入れるかということがあると思います。これは短周期レベル1.5倍の不確かさですけれども、これは実際には先生方に言っても御存じのことだと思いますが、2007年の中越沖地震のときの反省で、要するに震源の特性が十分に捉えられていなかったから1.5倍短周期レベルをするのだということで、断層がどう傾いているのかとか、どこで起きたとか、そういうことにかかわらず1.5倍を加えているということです。
 これとその入倉・三宅式の問題というのが絡むのではないかということなのですけれども、実は入倉・三宅式の問題というのは非常に限られた問題です。入倉・三宅式の問題が全国全部あるのではなくて、この西日本の垂直な断層だけに限られた問題なのです。ところが、この1.5倍の方は全国の断層に対して適用されていて、もともとの地震は中越沖地震で、中越沖地震は東日本の傾いた断層であって入倉・三宅式は全然問題がないわけです。ですから、この両者はかぶっているわけではない、全然無関係の問題であります。
 以上のことから、結論は垂直または垂直に近い断層に対して入倉・三宅式をすると、津波は過小評価になると申し上げましたけれども、津波だけではなくて、強震動も過小評価になるということが言えると思います。もちろんそれをどう判断されてどうされるのかというのは規制庁のマターなので、私はこれまで遠慮してそういうことに関しては一切申し上げなかったのですけれども、そのことがかえってまた誤解を生むということが起こりましたので、非常に口幅ったいですけれども、提案をさせていただこうと思っています。
 まずは、過小評価のおそれがあることが明らかになっている入倉・三宅式は使わなくてもいいのではないか。それ以外の式でも計算がされているわけですから、そちらを使われたらいかがでしょうかということです。
 次に、これまであちこちで強震動が観測されています。震源に近い例もあるし、遠い例もありますけれども、大きな地震も今回の熊本地震が加わって非常に例が増えているわけですから、これを利活用すべきではないかということです。私が在職中以降、何もその点では進展がない。でも、地震の記録はどんどん増えていて、これは理論だとか何とかいうことではなくて、実際に起きたことそのものですから、もちろん地盤が違う。補正は必要ですけれども、それを利活用するということは非常に重要だと思います。
 ですから、これまでは活断層が特定できないというような条件で、小さい地震に対してのみ扱っていましたけれども、むしろ強震動の計算自身に問題があるのであれば、実際に観測した実地のものをより大きく扱うべきだと思います。
 それから、強震動の専門家がいろいろ提案をされています。それらについて検討されて、もっともだと思われるものを採用していく、これをお願いしたいと思います。
 それから、計算の方ですけれども、関西電力と違った結果になって、結果の違いに関してはある程度説明がつくかと思うのですけれども、何かそれで不安になる方もいらっしゃるかと思います。複数機関で、例えばA何とか研究所だとか、B何とか社だとか、そういうところで公表されている限りのパラメーター、細かいパラメーター抜きにして計算を依頼する。その結果が規制庁の計算と全て一致すれば、これは非常に信頼度が高い。やはり同じだということになりますし、もしそれが違えば、今度はパラメーターの違いをお互いで比較して、どこを変えればどう変わるのだということもわかります。
 そこで、関西電力としてどういうことをやられているのかわかりませんけれども、これまでの計算と関西電力の計算の違いに関しては、さらに理解ができるのではないかと、このように考えております。
 以上です。どうもありがとうございました。
○田中委員長 詳しいというか、私宛ての文章の中を絵にしていただいたのが半分ぐらいだったと思いますけれども、今、私がお聞きしている限りでは、地震モーメントの評価のところでは、おっしゃるとおりかもしれないし、ここはよくわかりません。この絵も、熊本がここに来るというのは確実に確かめられたのですか。
○島崎前委員長代理 少なくともそれを40キロ、50キロとすることは到底できません。それは地殻変動といって、実際の地表の変形が観測されていますので、それに合わせるようにすると、そんなに長くは到底いきません。
 それから、地震発生層の厚さも火山地域ですので、むやみと増やして断層面積を大きくしてつじつまを合わせることもできません。
○田中委員長 だから、私は素人ですけれども、地震モーメントから、先ほど来の議論だと、例えばSsという基準地震動に持っていくときには、その途中にいろいろなレシピがあって、そこにいろいろなパラメーターが入るわけですね。だから、そういうことを含めて確認されたのでしょうか。
○島崎前委員長代理 確認というのはどういう意味でしょうか。
○田中委員長 熊本地震は非常にいいデータだとおっしゃっているのだけれども、そこはやられたのですか。
○島崎前委員長代理 熊本地震に関しては、私が申し上げているのは、断層の面積を入倉式に合うように大きくとることができません。それは強震動を計算されている方で、地面の動きも合うように計算されている方と、強震動だけを計算されている方がいらして、強震動だけを計算している方は、断層の長さを長くしたり、幅を深くしたりして、入倉式に合うような結果を出すことができますけれども、しかし、その結果は、地面の動きが説明できないわけです。
○田中委員長 よくわかりませんけれども、今の御説明を聞いていると、そういう意味では、熊本地震については、まだ評価が固まっていないと理解していいのですか。
○島崎前委員長代理 今、評価が固まりつつあるということです。
○田中委員長 固まりつつあるけれども、まだ固まっていないということですね。
○島崎前委員長代理 固まりつつあるということですね。
○田中委員長 どうぞ。
○石渡委員 先生のお話は承ったのですけれども、いくつか教えてほしいことがあるのですが、まず、今回のお話では、ある意味、認識論的なといいますか、武村式、入倉式というものがあって、武村式の方が同じ断層長さに対して大きなモーメントで、武村論文というのは1998年に出た論文ですね。入倉・三宅式が最初に出た入倉・三宅論文は2001年、3年後です。入倉・三宅論文には、当然、武村論文が引用してあります。そこでは、断層面積が与えられたときに、武村(1998)の式による地震モーメントは、ほかの関係式に比べて約2倍程度大きく推定されるという、2倍がいいかどうかは別として、そういうことをはっきり書いてございます。
○島崎前委員長代理 それは入倉先生の御意見です。
○石渡委員 しかし、先生が判断されても、やはり武村式の方が大きく出るということは誰が見ても多分明らかだと思います。
○島崎前委員長代理 上下関係はそのとおりです。
○石渡委員 これは、先生が審査されているときに、それについては御存じだったわけですね。
○島崎前委員長代理 細かい数値までは存じ上げておりませんでした。
○石渡委員 細かい数値というのは。
○島崎前委員長代理 要するに、武村式の方が大きく出ることはわかっていましたけれども、何倍になるということまでは自分でしっかり把握しておりませんでした。
○島崎前委員長代理 要するに、武村式の方が大きく出ることはわかっていましたけれども、何倍になるということまでは自分でしっかり把握しておりませんでした。
○島崎前委員長代理 そうですね。
○石渡委員 先ほどから先生がおっしゃっているように、評価式にはいろいろあるわけですね。
○島崎前委員長代理 ございます。
○石渡委員 ですから、やはり一応レシピとしては入倉式を使うというのが広く使われているわけですけれども、それ以外の式を使った場合、どの程度の差が出るものかというのは、武村式の方が古いわけですし、その前には先生御自身がそういう関係を出していらっしゃるわけですね。ですから、そういうことは当然、先生のなさった御評価には含まれているのではないかと私は思うのですけれども、そこはどうなのでしょうか。
○島崎前委員長代理 入倉先生のレシピというのが出てきたのは、強震動観測が盛んになって、観測ができるようになって、それでそれを誰が決めても同じような値になるということを目指して作られたわけですね。最初にそれで私がどこでどういう地震が起こるかということの方を担当して、入倉先生の方が、その地震が起きたらどのくらいの揺れになるかと。そういう形で両方で進んでいたので、入倉先生はお互いに信頼し合って進んでおりましたから、入倉先生の式が具体的にどのくらいの大きさになるかというのは、上下関係はわかっていましたけれども、特に今、問題になっているのは、垂直にした場合に4倍、武村式と違ってくる。これは自分自身、それほどはっきり思っていたわけではありません。4倍というのは非常に大きいので、その入倉先生の論文では2倍ぐらいだろうと書いてありますね。大した差はないのだろうと思っていた。どちらが大きいかというのは、もちろん存じ上げていましたが。
○石渡委員 そうすると、そういうお考えになったのは、御退任された後だということですか。
○島崎前委員長代理 そういうことです。
○石渡委員 あと、武村論文というのは使っているデータが80年代以前のデータですね。例えば先生が、阪神大震災を起こした野島断層から神戸の方へ行く、あの断層ですね。あれの地震の評価をしなさいというようなことを言われた場合に、あれは何キロぐらいの断層として評価されますか。
○島崎前委員長代理 それは去年、おととし、実際にそういう計算をいたしております。まとめております。非常に難しいですね。要するに、どこで切るかという問題があって、それによって変わってきます。それでやりますと、武村式では大き過ぎるという結果になります。
 ただ、あの地震はご存じのように、神戸側では上まで破壊が達していなくて、下だけで破壊が起きているという、ある意味、特殊な地震です。
○石渡委員 武村式は大部分のデータを80年代以前のものを使っているのですけれども、98年に出たということで、兵庫県南部地震のデータを特別に1つだけ入れてやっていますね。その断層の長さの評価が25キロになっています。これについては先生はどう思われますか。
○島崎前委員長代理 恐らく、それは神戸側では破壊が中央まで及んでいないということを考慮されたのだと思います。ですから、そこをどうとるかというのがまさに地震学者の間でもかなり異論があって、難しいものだと思います。実際に40キロだとかそのように入れてしまえば、明らかに武村式は大きな欠陥、地震モーメントになります。そのとおりです。
○田中委員長 たしか先生の思想だと、要するに表面に出たものだけで地震が起こるのではなくて、中が見えていないところが動くのだということをずっとおっしゃっていたと思うのです。今の石渡さんの、神戸側では地表に出ていないということとは、何かよく理解できないのですけれども、どういう意味ですか。
○島崎前委員長代理 今、扱っている地震は、いわゆる地震発生層という地震を起こす層がありますけれども、その上から下までが関与しているような、その大きさの地震を式であらわしたらどうなるかということで議論をしているわけです。だから、その意味では神戸の地震は確かに大災害になりましたけれども、神戸側で地表まで割れずに地下だけでずれているというやや特殊な地震で、今、論じているような地震の一つとして同じ式に乗せていいのかどうかということは問題があるかもしれなくて、武村さんは恐らくそのことを考慮されて、25キロという数字を使うよりも短い断層長さが入っているのだと考慮します。
○石渡委員 ただ、我々が審査する場合は、もちろん地表に出ている断層というものを一番重視してやるわけですね。
○島崎前委員長代理 そのとおりです。
○石渡委員 ただ、それだけではなくて、特に先生もなさった、すぐ近くに別の断層があって連動するかもしれないという場合は、それも含めてやるという評価をしているわけですね。ですからそういう意味では、単純に短い断層をそれだけとしてやるという評価はしていないと思うのです。
○島崎前委員長代理 そのとおりです。
○石渡委員 もう一つお伺いしたいのは、今のと関係するのですけれども、モデル計算についてはもちろんモデルそのもの、パラメーター、プログラム、いろいろなものに依存て、かなり大きく値は変わります。
 ですから、その値について余り細かな議論をしてもしようがないように思うのです。
○島崎前委員長代理 それは賛成です。そのとおりです。
○石渡委員 ある値、当然、計算をすれば値が出てくるわけですから、我々はその値を使って一応最終的な評価とするわけですけれども、それはしかし、そういうものだという理解があった上でのことだと思うのです。そのように考えますと、やはりその値がほかのいろいろな点、例えば実際に起こった地震の地震動とか、そういう経験的な我々が知っているデータと比較して妥当であるか、それとも過小評価か、あるいは過大評価か、その辺の判断をしなければいけないのだと思うのです。それについては、先生はいかがですか。
○島崎前委員長代理 それをずっとしてきて、入倉・三宅式だと4分の1というのは言い過ぎかもしれないので、3分の1から4分の1程度、特に垂直な場合には過小になる。
○石渡委員 そうすると例えば今、大飯の例についてということでやっているわけですけれども、先ほどおっしゃった1,500ガルはもちろん基準地震動としてということですね。
○島崎前委員長代理 そういう数字というよりかはかなり大きくなると私は申し上げました。かなりではないです。大変大きくなると証言をしましたけれども、数字にこだわるつもりは全然ございませんで、大変大きくなる可能性が今回の計算で示されたというのが私の理解です。
○石渡委員 そうですか。数字にはこだわらないということですね。
○島崎前委員長代理 はい。
○石渡委員 わかりました。これは先生の前で申し上げてもしようがないことですけれども、ガル数というのは原子力の方では一応、周期0.02秒という非常に短周期のところでの、そういう波のガル数を使っているわけですけれども、一般の地震防災では家屋に対する影響ということで1秒ぐらいのものを使っているわけですね。その点でも大分、差が出てきます。
 それから、基準地震動ということで非常に固い岩盤での地震動ですけれども、一般の地震計というのは浅いところにというか、地表に置いてある場合が多いわけですから、その点でも大分そういう点で、同じガル数といっても相当差があるということは気をつけておく必要があると思います。
○島崎前委員長代理 それは多分、一般の方は余りご存じなくて、数字を単に比較するようなときに地盤を考えていないということは私もこれは問題であると思っていまして、当然のことながら、私がご提案した観測波形を使えという場合でも当然、観測した場所の地盤をとって、原子力発電所の地盤に置きかえて使う必要があります。
○石渡委員 先生、最後におっしゃいましたけれども、熊本地震の新知見について、これを取り入れていく、あるいはそれを基準に生かしていく、規制に生かしていくということについては、もちろん我々としては、それは我々の使命であるとは思っております。実際、4月の委員会で規制庁の方に調査を指示しておりまして、そういう点については今後、討結果が出てくると思っておりますので、その点は御了承ください。
○島崎前委員長代理 それは期待というか、当然なさることですし、規制庁に限らず、いろいろなところが今度の地震で新知見が出てきて、それを利用する、採用していくというのはまさに時の流れだと思っています。それは規制庁でもやっていただけるというのは非常に心強いと思います。
○田中委員長 後ろの方からもあったらどうぞ。
○櫻田規制部長 櫻田でございます。ありがとうございます。今までのお話を伺っていて、やはりちょっと気になるところが2つありまして、1つは先ほど田中委員長もお話しされましたが、先生がおっしゃっているところのポイントは、やはり地震モーメントの評価においてこういう結果が出てくるということをおっしゃっているように聞こえるのですけれども、地震動の評価というものが我々の目的なので、その地震動の評価に対してどういうアプローチがあるかというところについてのお話と、入倉式ではなくて武村式とか、ほかのものを使ったときにどうなるかということについてのお話は残念ながら余り詳しくお聞かせいただいていないなというのが1点です。
 それから、先ほどその流れの中で内閣府でしたか。中央防災会議でのほかの式、入倉式以外の式を使った地震動の話が出てきて、確かにそういうものがあるかもしれないと思いますけれども、これも釈迦に説法で恐縮なのですが、原子力発電所の安全対策の中で基準地震動を求める際には、やはり応答スペクトル、各周期ごとというか、固有振動数ごとというか、それごとの速度とか加速度とか、そういう応答スペクトルを作る必要があるのです。
 そういうものができるかどうかというのは、やはり最終的に使えるか使えないかというところになってきまして、そういう最終目標に使えるような、かつ地震本部のレシピ以外で持ち合えるものが今あるのかというところについては、正直申し上げて私どもは承知していないとしか言いようがないのです。
 そこを考えて今回は、それでも何とかやってみましょうということでやったので、冒頭申し上げたように、結果は出しましたけれども、あらゆるところで私どもの目から見ると矛盾というか食い違いというか無理が生じていて、したがって、この結果をそういう意味で今まで作ってきた基準地震動と同レベルに扱うところまでは、とてもでなければできないというのが正直な感想なのです。
 今回の島崎先生のお話を伺っていると、私どもが今回、やったようなやり方も妥当なのだとおっしゃったように聞こえるのですが、そこは全く見解を異にしているということになってしまっていると思います。
 私どもは先ほど申し上げましたような意味です。
○島崎前委員長代理 わかりました。
 見解が違うということはよくわかりました。
○櫻田規制部長 先ほど申し上げたような意味で、レシピに従ってやらざるを得なかったのでやったのだけれども、やはりレシピの範囲というか想定範囲を超えた形になっていて、いろいろな恣意的なパラメーターづくりをしなければいけないし、結果についても先ほど申し上げた応力降下量、アスペリティのところとその背景領域のところが違うということに最終的になってしまっているということがあって、この結果を科学的に解釈するのは、果たして妥当なのかというところに疑問がある。
 こういうことであるので、そこは御理解いただけないのは大変残念であると思っています。
○島崎前委員長代理 それは見解が分かれるところですね。
 武村式のケースが出てきましたので、話がどうしても武村式に偏ってしまいますけれども、武村式がいいからこれを使えだとか、そんなことを申し上げているのではなくて、ポイントは地震モーメントを変えてレシピどおりにいかないとおっしゃるわけですが、全体的な統合性を考えて、当然のことながら、応力降下量が増えるということをそこに持ってきて、そのことによって、全体として一応整合性のあるモデルを作られたわけで、それはまさに私がお願いしたとおりのことをやっていただいたので、大変ありがたいと思っています。
 ポイントはどこかというと、これまでは津波の問題でお話ししてきて、地震動に関して私は精緻なことは計算できませんのでお願いしたところ、地震動でも影響があるということがわかった。
 その影響を何倍とかどのくらい見るかということは、1回の計算ですし、細かいことまで、何ガルになるだとか、そんなことは置いておいても、やはり地震モーメントが正しく推定できていないと過小評価になる。これは非常に明らかになったと私は思っています。 そこが多分、櫻田さんと私の見解の違いかと思っています。
○櫻田規制部長 おっしゃるとおりで、レシピに従った地震モーメントの求め方をして、その結果が異なるのであれば、それは後段にもかかわってきますけれども、違うやり方をして地震モーメントを求めた上でレシピを用いると、それは無理が生じるという主張です。
 逆に言えば、違うやり方でモーメントを求めて、そこから地震動を持ってくるというやり方がちゃんとできないと、それを使うということにはなれないだろうというのも我々が考えていることでありまして、今回やったやり方はこれでいいのだと全く自信を持って言えるものではない。そういう言い方になると思います。
 何か補足はありますか。
○田中委員長 こういった分野はほとんど実験が不可能だから実際に起こった地震動でいろいろ御見解が分かれるし、武村式にしろ、入倉・三宅式にしろ、島崎さん式にしろ、みんな経験式ですよね。ですから、そこにいろいろな経験が積み重なることによっていろいろ変わってくるかもしれないということは当然だと思うのです。
 いろいろなことをやってみるべきだというのは、別に私は反対しませんけれども、それを私どもに求められても、これはなかなかできることではないのです。行政がやることはないのです。
 最初にやるべきことは、そちらの専門の分野でやっていただく以外にない。それを見て、我々はどのように取り入れていくかということになると思います。
 こういう考え方は何かおかしいですか。
○島崎前委員長代理 私が前から申し上げているように、私は科学的なことを扱っていて、それを規制庁がどう判断して、どのようにお使いになるあるいはお使いにならない。それはまさに規制庁がなさることであって、私はそれに対してどうこうという立場にはないと最初から申し上げています。
 そもそも最初は、津波に関して入倉・三宅式が過小評価になっている。だけれども、同じ津波の問題が、同じ断層が大飯の地震の断層であったということから始まっていて、その結果、ひょっとしたら津波だけではなくて地震動にも影響があるかもしれないので計算したらいかがでしょうかと。これも余計なことを申し上げたのですけれども、規制庁に、本当に私は感謝申し上げておりますが、本当に感謝してもし切れないぐらいですが、きちんと対応して、しかも非常に迅速に対応していただいたので、これは本当にありがたいと思っています。
 その結果、やはり地震動にも影響があるということがわかったというのが私の結果の解釈でございます。
 先ほどいくつか提案を申し上げましたけれども、やはり不適当な入倉・三宅式はもう使わなくてもいいのではないか。ほかにも式がある。これは多分、非常に御不快だと思いますが、私が本来言うべきではないことまで申し上げているかと思うのですけれども、ただ、私が黙っていると、あいつはみんな了承してわかっているのだという誤解があるといけないので、私は文句ばかり言っていて全然建設的な提案をしていないのではないかと思われることもあるかと思ったので、余計なことを申し上げました。
 もちろんそれで規制庁の御判断によってやるべきことでありまして、私は余計なことを言ったかもしれませんが、それはそういう意味で申し上げたということです。
○田中委員長 今の島崎さんの話は、先ほど来、櫻田が話をしてきたことと大分違うのは、地震について影響がある。今回の結果が信頼できて、私はだんだんいろいろなことを聞いていると、どうもやってはいけないようなことをやったという、先ほどそういう説明もあったかと思いますが、そういう結果だと。
 だから、それに基づいてあるとかないとかいう判断をすべきではないというのが、今、正直思っています。
○島崎前委員長代理 それはどうかと思います。私の見解と違う。
○田中委員長 それから、地震と津波です。これはやはり起こってくることがそもそもどういう現象かは、私は全く違うと思うのです。基準地震動を決めることと違いますよね。
 津波でそうだから、地震動で津波のことを申し上げるつもりはありませんけれども、そこはそうだということにはまずならないだろうということです
 それからもう一点申し上げると、いろいろ御提案いただいたことも、それは一つの見解だと思いますけれども、これは公知の知見として、いろいろな評価もいただいて、もう使えるようになっているのでしょうか。
○島崎前委員長代理 どういう意味でしょうか。
○田中委員長 今、先生が後ろの方でこういうほかのレシピを使うべきだとか、ほかの方法を使うべきだと言っていた。
○島崎前委員長代理 入倉・三宅式だけは使わない。実際に強震動の評価の手法はたくさんあって、審査でもいろいろな手法が使われているわけです。入倉・三宅式を使わないと審査ができないということではないので、実際に発電所によってはほかの手法を使ったり、たまたまかもしれないけれども、ほかの手法でやった方が基準地震動は大きくなる。さまざまな事例がありますけれども、入倉・三宅式が特に問題なのは、おそらくこの大飯ぐらいであって、全体がどうこうなるという問題では多分ないだろうと思います。
 大飯に関しても、入倉・三宅式を使わなくてはならないということはないので、ほかにも震源を特定した地震の強震動予測手法が提案されていますけれども、ここにも入倉・三宅式が入っていなくて、単に震源面積から地震モーメントを求めるという形で入っているだけですので、より適正な式を用いることは可能だと思います。
○田中委員長 いろいろ定性的におっしゃるのですが、結局、私の理解ですけれども、入倉・三宅式については、原子力発電所の地震動の評価にずっと使ってきて、そこでいろいろまずい面があって、そういうのをいわゆる不確かさということで、いろいろな工夫をしてきていると思うのですね。そういう経験ですよね。
 だから、先ほど中越沖地震のところがあれで1.5倍にしたと言っていますけれども、これは地震モーメントだと言い切れるわけではないですよね。地盤の問題もあると。
○島崎前委員長代理 いや、これは震源です。
○田中委員長 それは震源で間違いなのですか。
○島崎前委員長代理 間違いないです。
○田中委員長 そうですか。それと、ここに断層が傾いているとか、こういうこともおっしゃっていますけれども、先ほど大飯だけだろう、垂直がまずいのだと言ったことと、ちょっとよくわからない。
○島崎前委員長代理 では、もう一回御説明します。中越沖地震の反省といいましょうか、中越沖地震のときに震源について短周期レベルを1.5倍した方がいいという結果になったわけです。要するに、その部分が実際足りなかったわけです。
 ですから、中越沖地震が起きた結果、中越沖地震だけではなくて、全国の地震に関して短周期レベルを1.5倍にするということが提案されて、それが実際に受け入れられて今使われているわけです。
 しかし、そのもととなった中越沖地震は断層が傾いていて、今、私が問題にしている入倉・三宅式の問題とは別の問題です。むしろ、そこで入倉・三宅式を使うことは全然問題にならない。入倉・三宅式を使っても地震モーメントは過小評価にならないので、今問題になっていることは入倉・三宅式とは別の全国の地震動を推定する場合に、震源として場合によっては1.5倍にしないといけないケースがあるので、それをするというだけの話です。
 ですから、入倉・三宅式の問題は、今、私が指摘しているものではない。別の問題です。
○田中委員長 言いかえると、地震モーメントからSsを出すときのレシピに問題があるということですか。
○島崎前委員長代理 レシピ全体ではなくて、地震モーメントが過小評価されている。その結果、地震動にも影響がある。
○田中委員長 今おっしゃったのは、影響があるけれども、その途中のプロセスで影響があるということなのではないですか。
○島崎前委員長代理 プロセスというのは、どのプロセスですか。
○田中委員長 そのレシピのプロセスで違うのですか。
○小林総括官 小林です。
 多分、島崎先生が言われているのは、今回の試計算の中でいわゆる中越沖地震の知見を踏まえた短周期レベル1.5倍を重ねないのはおかしいのではないかというようなことだと思うのです。
 それについて私なりに回答しますと、入倉・三宅式を基礎としているSsを用いている現行の審査の中では、短周期レベル1.5倍に余裕を見ているという話でございます。
 武村式ではこの余裕がどの程度なのかというのがわからないわけですよ。実際に地震動評価をしているわけではないし、中越沖地震の検証をしているわけではないので、わからないから今回はそれは除いて武村式で単純にというか、基本式を用いて評価したということでございますので、そういうことで今回1.5倍しての重ね合わせはしなかったということでございます。あくまでも武村式での余裕がわからないということでございますので、それだけは御理解いただきたい。
○島崎前委員長代理 それは理解したつもりですけれども、問題は先ほど余り詳しい御説明をしなかったのですが、結局、どうやって不確かさを持っていくかという問題になるわけです。
 結局、そのもとは論理ツリーになるわけで、論理ツリーとしてはどの式を使うかという論理がまず来るわけですね。順番はどうでもいいのですけれども。
 もともとこれは確率論的な地震動予測に使われるものであって、その条件はこれらを並べたものの間の関係は背反的である。一つの式をとったら、ほかの式は使えない。そういう関係でなければいけないということと、それぞれの可能性、確率を足し算すると1になる、その2つでこの論理の枝を作っていかないといけないわけです。
 今の場合は、余り地震動が大きくならないような場合には、確率が低いような場合は特に考えなくてもいいということで抜かしていって、それで現状では入倉・三宅式で場合によっては1.5倍して破壊開始点はどうこうという、こういう一つのパスを選んで、それを計算している。それはなぜかと言うと、比較的大きな地震動になるのではないかということと、可能性としては高いというふうにしてチョイスをしているわけです。
 ところが、入倉・三宅式と武村式を比較すると、武村式の方が実際には近いわけですから、この2つのパスを比較すると、今や入倉・三宅式よりも武村式を通るパスを選んだ方が可能性が大きくなるわけですから、これを選ぶということになります。というわけで、決して1.5倍と武村式とのバーターだとか、そういうことはあり得ない。
○櫻田規制部長 規制部長の櫻田ですが、今、お示しいただいたのは、これはSsの設定の話ではなくて、超過確率の計算のツリーの作り方ですよね。
○島崎前委員長代理 Ssを設定するときの基礎としてこれが頭に入っているということです。
○櫻田規制部長 多分そうではなくて、先ほどから私は何度も申し上げているのですけれども、武村式でM0を計算したところから地震動を持ってくるというやり方が、入倉・三宅式でモーメントを作ったものから地震動を持ってくるやり方に比べて実績もないし、Ssで審査した経験もないし、したがって不確かさをどの程度考慮すればよろしいかというところの積み重ねもないので、1.5倍というものをそのまま使っていいのかどうかが今判断できないでしょうということを言っているのです。
○島崎前委員長代理 そうですか。わかりました。
○櫻田規制部長 したがって、先ほど委員長もちょっとお話ししかけられましたけれども、武村式を使って地震モーメントを出した上で地震動を評価するというやり方について、さまざまな今までの観測記録とか、経験式とか、そういうデータを緻密に分析をして、こういうやり方でやったら、今、存在するレシピと同じように、誰がやっても同じような地震動評価ができますよというものが組み上げられたら、それはお話しされていることもあるのかもしれませんが、それで設定してきたものを基準地震動にセットして、我々はそのまま受け入れるかというと、多分そこに何か不確かさを重ねなさいという話をするのだと思います。そのときに求める不確かさは今のものと全く違うものかもしれないのですよね。そこはわからないというのが現実問題だと思うので、今、我々がプラクティスでやっている不確かさを今回の試算値にそのまま重ね合わせることが科学的に合理的だというような保証はどこにもないと私は思います。
○島崎前委員長代理 わかりました。要するに、何を考えているか、よくわかりましたけれども、皆さんは大飯のことばかり考えられていらっしゃる。私はそうではなくて。
○櫻田規制部長 違います。そんなことは言っていません。
○島崎前委員長代理 まさにそのように聞こえるのです。あるいは、審査そのものだけを考えている、このように思います。
○櫻田規制部長 私どもがやるのは基準地震動の妥当性ですから、それに対して先生が提言されているので、そこに対して我々としてはそうは考えないということを申し上げています。
○島崎前委員長代理 ですから、結局、こういった考え方でやるときに、今おっしゃっているのは、武村式を使った場合には、1.5倍のパスの方がよろしいかもしれない、ここはわからないのだという御意見ですね。
○櫻田規制部長 論理ツリーのことについては何も言っているつもりはありません。武村式を使って地震動を評価するときに、どういう不確かさを重ね合わせることが妥当なのかということについて、どこにも見解がない。
○島崎前委員長代理 ですから、それは本当に審査のときに、もしこれが審査をするとしたら、武村式を使った場合に、その審査ではどういったものを不確かさとして扱うかはわからないから、それは加えなかったのだと、そういう御意見ですね。
○櫻田規制部長 そういうことですし、先生がそういうことをすべきだと主張されているように思われるので。
○島崎前委員長代理 いや、私は、すべきではなくて、比較のためには同じ条件で比較をしないといけないから、比較をしたら非常に大きな値が出てくる。
○櫻田規制部長 比較をするということは、それを使って何をするということになるかというと、私どもの感覚で言えば、比較をしてそれを審査に反映させるということを先生は求められているようにしか聞こえないのです。そうではないのですか。
○島崎前委員長代理 私は比較をして、影響があるから入倉・三宅式は使わない方がいいと申し上げたのです。
○田中委員長 御自身で比較されたのですか。
○島崎前委員長代理 いやいや、このようにちゃんと結果を出していただけたので。
○田中委員長 これはだめだと言っているのですよ。
○島崎前委員長代理 そうなのですか。
○田中委員長 だから、私はそこの点はある意味では、謝らなければいけないけれども、今回は無理をし過ぎて、やってはいけないことをやったなと、やらせてしまったなということはあるのですけれども。
○島崎前委員長代理 わかりました。規制委員会ではそういう御議論はなくて、私が言い出しっぺになったのですけれども、言い出しっぺがいいと言ったのだからそれでいいのだろうという形で、影響はないというふうに結論されたと思うのですけれども、そもそもそれでは計算自体がおかしかったという、そういう御議論ですか。
○田中委員長 その後もいろいろ島崎さんの御意見があったりして、一体これはどうなのだということを私なりにも勉強して聞いていくと、先ほど櫻田の方から冒頭話があったように、アスペリティの設定の仕方にしても、応力降下量とか、いろいろなことがどうも武村式に当てはめてやるのは無理がある。どうもできないことをやってしまったということを無理にやったということなのですね。
 そうすると、これはもう一回、我々の判断についてはそういうことを前提にして考えなければいけないということになろうかと思いますが、まず1点、そこはそういうふうに私は認識しています。これは私の認識で、今、石渡さんもいらっしゃるから御意見を聞いてもいいのですけれども、ほかの委員ともちょっとそこは議論しなければいけないと思いますし、皆さん、後ろの人たちとも話をしなければいけないと思います。ただ、認識としてはどうもそうだなと。だから、それをベースにして、島崎さんがいろいろなことをおっしゃっているけれども、どうもそれほどのしっかりした評価ではないなというのが私の率直な印象です。
○島崎前委員長代理 わかりました。要するにスタート地点が違っているというわけですね。私はスタート地点が櫻田さんが言われる、櫻田さんは非常に無理をして、本来やるべきではないことをやったとおっしゃっている。私はやってほしいということをまさにやっていただいたという認識でいて、そこがまるっきり違っていますので、それから先の結論も当然違ってくる。それはそのとおりです。わかりました。わかりましたというのは、了承したということではなくて、違いがよくわかりましたと、そういう意味です。
○田中委員長 いろいろ議論があって、どうせこれを積み重ねてもわかりましたということにはならないとおっしゃっているとおりだと思います。ただ、私の立場から言うと、我々は新しい知見を取り入れるということについては何ら逡巡するつもりはありません。ただし、取り入れるに当たっては、それなりに非常に影響の大きいものですから、しっかりしたベースがないとだめなのです。だから、島崎さんの御指摘は1つなのでしょうけれども、ほかの方も含めて、やはりその分野でしっかりとそこのところが固められてこないと、科学の問題ですから、そういうことがいずれできてくるのだろうと思いますけれども、そこのあたりがまだ今の段階でいろいろ御提案いただきましたけれども、これを乗りかえなければいけないという感じは、今の私たちのやり方がだめだという判断はなかなかできないなと思っているのですけれども、石渡さん、どうですか。
○石渡委員 これは、今回の御要望に従ってこちらで計算をさせていただいた。ただ、これは1つだけの計算で、非常に無理がある。先ほど櫻田の方から申し上げましたが、そういう計算であったわけです。ただ、多分、計算のプロセスそのものはしっかりやっていただいて間違いはないのだろうとは思うのですが、ただ、木に竹を接いだといいますか、そもそも入り口のところでかなりつまずいてしまったような計算になってしまっていますので、出てきた結果をもとにして判断をするというものには余り適しないのではないかというふうに思います。これについては我々の判断としては、今回の1例の計算結果だけではなくて、今まで審査を積み重ねてきた中での判断というものをやはり重視せざるを得ないのではないかというふうには思っております。それは先生もずっと2年間の在任中、一生懸命やってこられたわけですし、先ほどの話で、その後になって武村式の方がいいのではないかというふうに思われたということですけれども、ただ、今の議論の中で武村式というものが原子力関係の審査の中で、津波以外では余り実績が、特に地震動についてですね。余り今まで使われてこなかったということで、今すぐにこれを規制に取り入れて判断をするというのはなかなか無理があるのではないかというふうに思うのです。それが私の正直な今の時点での感想です。
○島崎前委員長代理 やはり計算をどう評価するかというところで違っておりますので、そこのところが、私は非常にいい計算をしてこられたと思って、結局そこですね。そこが違うので、あとはやはり御意見が違ってくる。
○田中委員長 だから、繰り返しになりますけれども、今回、できるだけ、島崎さんが大飯の審査をやられたということも踏まえて、私の方から無理なお願いをしてしまったという反省が私はあります。できないことを言ったものだから、事務局は無理にやったのだなということなので、本当にできるような状況にあればやるべきだと思いますけれども、どうもできないことをベースに議論をしていてもしようがないなという感じが若干しているのです。私の今の率直な印象ですけれども、それを前の委員会でこれでいいのだろうということを申し上げましたけれども、どうもそこも含めて少し議論はする必要があるかなと思っています。
○島崎前委員長代理 繰り返してもしようがないので、これ以上言いません。
○田中委員長 島崎さんが納得したなどということは私は一言も申し上げていません。お礼を受けたというのと、安心したという、そういう表現がありましたという報告を受けたので、記者の皆さんから聞かれたときにそう申し上げただけで、別に島崎さんが岩波に書かれたようなことがどうこうということを申し上げているわけでも何でもありませんし、我々の取組について何か評価をされた。ただ、一言申し上げれば、もし疑問があったらどうして率直に直接言っていただけなかったのかなと。そういう気はしますけれどもね。
○島崎前委員長代理 これはやはり公開でいろいろなことをやらないといけないということで、それが1つの問題点だろうと思いますけれども。
○田中委員長 公開でやるのはいいですけれども、直接、記者さんに言うのではなくて、少なくとも私たちに言うべきだと。
○島崎前委員長代理 それは、この会が火曜日になってしまったのですけれども、私としては、むしろ世間の人一般があいつが言い出したのに、あいつがいいと言ったのだから、これはもうこれでおしまいだというふうにとられかねないので、その誤解を解くために、そうではありませんということを申し上げたということです。
○田中委員長 わかりました。それは島崎さんの人生観だから、私はそれ以上申し上げるつもりはありません。ほかに。
○小林総括官 総括官の小林でございます。
 1点だけ御理解いただきたいところは、今まで地震動評価全体について議論させていただいたのですけれども、地震モーメントの話になりまして、先ほどの熊本地震の件、これはいまだ解明されていない部分も多々あるのですけれども、島崎先生が言われた30キロの部分と57キロの隠れた部分ですね。その評価の仕方なのですけれども、少なくとも私どもは、島崎先生がおられたときに、できるだけ長くとると。まさにこの地震モーメントのインプット条件の大事なところでございますので、活断層の長さについてはできるだけ長くとるということをしてきたつもりです。今でも島崎先生が推本の長期評価部会長でおられたときに作られた、暫定版の活断層評価書、こういったものを頭に置きながら、できるだけ長く活断層を評価するということは、今、取り組んでおりますので、そこは御理解いただきたいと思っています。
○島崎前委員長代理 実際、自分で言うのも変ですけれども、どういう評価をしたかは余り細かくまで覚えていなかったのですけれども、この間、かつての評価についていろいろ詳しく教えていただいて、自分で言うのは非常に気が引けますけれども、よかったと、これで安心したと、十分やってきたと。ただ、残念なことには入倉・三宅の問題には気がつかなかったと、そういうことなのです。
○櫻田規制部長 規制部長の櫻田です。今日はすみませんでした。かなり失礼な物言いをしてしまって申し訳なかったと思っています。
○島崎前委員長代理 いえいえ、とんでもない。
○櫻田規制部長 島崎先生が御在任中からずっと御指導をいただいていまして、御退任後も、先生だったらどのようにお考えになるかなということを念頭に置いて、事業者の設定してきている地震動が本当にそれで十分かという、そういう目で見てきているつもりですし、今後もそういう姿勢で取り組んでまいりたいと思っています。ありがとうございました。
○田中委員長 ほかに。小林さん、どうぞ。
○小林企画官 先ほどちょっと、安全研究の件でお話がありましたけれども、我々も熊本地震に関しまして、インバージョン解析をしたりとか、最近、地殻内地震が多くなってきていますので、そういったものに対する地震と評価についてどうあるべきか、不確実さの見方とか、そういうことは研究を進めていますので、今後、公表していきたいと考えております。
○島崎前委員長代理 ちょっと一言よろしいですか。
 とても大事なことをなさっていらっしゃるので、是非インバージョンの結果が出たら、その結果から地殻変動が説明できるかどうかというチェックを必ずかけてください。地震動だけではなくて、地殻変動。要するに、GNSSで各点が動いていますけれども、それが強震動のモデルで説明できるかどうか。そのチェックを忘れずにやっていただきたいと思います。お願いします。
○小林企画官 わかりました。
○田中委員長 よろしいですか。
 では、多分、島崎さんの主張は入倉・三宅式はやめなさいというのが結論だと思うのですが、すぐには残念ながらやめるというほどの手だてを我々は持っておりませんので、そこはきちんと島崎さんの分野の世界ではっきりとした結論ができるだけ早く出るというか、そういうことを期待したいと思うのですが、そういう努力はしていただけるのでしょうか
○島崎前委員長代理 やはり強震動の専門家の意見をいろいろ伺うということが大変重要だと思っています。もちろん規制庁の方々はいろいろ努力されているかと思いますけれども、これまで原発の審査にかかわっている専門家とか、たくさんの方がいろいろな御意見を言われていますので、そういったもの、もちろん審査されている方は物すごくお忙しいから、そんなところまで行かないけれども、規制庁にはほかの方もいらして、そういうものに対して前向きにというか、当然のことですけれども、検討していただいて、いいものは採用していくということを、是非やっていただけたらと。これは私の勝手なお願いですけれども、お願いいたします。
○田中委員長 いえ、我々は、そういうことはやる余裕はないし、やるべき立場にもないので、そういったいろいろな意見があるとおっしゃっているのですが、いろいろな意見を、できるだけ一つにまとめて、これがスタンダードだというものを、是非出していただきたいとお願いしているのです。
○島崎前委員長代理 わかりました。
○田中委員長 そうしないと、行政庁がそういう勝手なことをやるわけにはいかないのです。御存じかもしれませんけれども。
○島崎前委員長代理 学会というものは、統一したものが出せれば、もちろんいいですけれども、それこそ先生も御存じのように、学問というのはいろいろな意見のものが当然あるわけで、それを、どこまで行ったらどう判断するかというのは、必ずしも明確ではないわけですから。
○田中委員長 私が申し上げているのは、これは一原子力プラントだけの問題ではなくて、世の中にあるいろいろな建造物も、多かれ少なかれ、この入倉・三宅だけではないですよという、先ほどありましたけれども、そういうものを使っているものもいっぱいありますよね。
○島崎前委員長代理 あるかもしれません。
○田中委員長 そうすると、そういうところにもかかわってくるわけですよね、橋桁とか、高層類とか。
○島崎前委員長代理 もちろんそういうことです。
○田中委員長 そういうことを踏まえると、非常に社会的なインパクトが大きいわけですよね。
 ですから、そういうことを踏まえて、やはりきちんとした責任を持って、その分野の方は、こういうものがスタンダードだと。間違っているかもしれませんよ、それは科学ですから。でも、間違うことはあり得るかもしれないけれども、そのときの最善のレシピを是非出していただきたいというのが私からのお願いです。最後にお願いしたいと思います。
○島崎前委員長代理 よくわかりました。
○田中委員長 それでは、いいですかね。では、いろいろ、かなり率直に意見を交わさせていただきました。何かありましたら、また引き続き、こういう場を設けることもやぶさかではありませんので、是非そういうふうに来ていただきたいと。どうもありがとうございました。
○島崎前委員長代理 今日は呼んでいただいて、お時間をとらせて申し訳ございません。大変ありがとうございました。
○田中委員長 どうもありがとうございました。


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