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社説:原発と火山災害 巨大噴火を侮るなかれ


 原発に影響を及ぼす巨大噴火に備えた「基本的な考え方」の案を原子力規制委員会が示した。前兆の可能性がある異常を検知したら、「空振りも覚悟の上」で原子炉の停止や燃料の運び出しを電力会社に求める。そのための判断基準についても、有識者を集め、検討を進めるという。
規制委が新規制基準に適合していると判断した九州電力川内1、2号機鹿児島県は、巨大噴火に襲われる危険性が全国の原発の中で最も高い、というのが専門家の一致した見方だ。本来なら原発の安全審査の前に、こうした検討を進めておくべきだった。日本は世界有数の火山国であり、規制委や電力会社は、噴火の脅威を侮ってはならない。
 川内原発周辺には、阿蘇や鹿児島湾など、マグマの大量噴出で土地が陥没したカルデラ地形が複数ある。日本ではカルデラ式の巨大噴火が1万年に1回程度起きている。
 昨年施行された原発の新規制基準は、原発から160キロ圏の火山の影響調査を電力会社に義務付けた。運用期間中に噴火が起き、火砕流や溶岩流が到達する恐れがあれば、立地不適格で原発は稼働できない。
 九電は、川内原発の運用期間中にそうした噴火が起きる「可能性は十分低い」と評価し、桜島の噴火で火山灰が15センチ積もる場合を想定すれば足りるとした。巨大噴火が起きるとしても、数十年前からマグマの蓄積が生じるので、地殻変動などを監視すれば事前に察知できるという。
 規制委は安全審査で、九電の考え方を基本的に了承した。
 しかし、その後開かれた規制委の有識者検討会では「巨大噴火の時期や規模の予知は困難」との指摘が相次いだ。原発に影響する火山活動の監視では「電力会社任せにせず、国レベルの体制を作るべきだ」との意見も出された。噴火の影響を受ける恐れのある原子力関連施設は日本各地にある。川内原発は、それらの施設の火山対策の試金石となる。
 規制委の島崎邦彦委員長代理は、巨大噴火に関する判断基準の策定について「どこまでできるか分からない」と述べた。だが、安全サイドに立った基準をあらかじめ作成しておかなければ、異常が検知された時の対応に混乱が生じかねない。
 そもそも、巨大噴火が起きれば日本という国の存亡にかかわる。
 内閣府の検討会は昨年5月、東日本大震災をきっかけに火山活動が活発化する恐れがあるとし、監視体制の強化や避難計画の早期策定を提言した。巨大噴火に関する研究の遅れも指摘している。「想定外」を避けるためにも、規制委による判断基準の検討を、巨大噴火に関する研究や対策を促進する契機としたい。

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